第46話
「じいちゃんってさ、戦地に行ってたのは知ってたけど本当に紛争地帯だった?」
「きちんと紛争地帯では生き延びておるわい。
確かに魔術戦争みたいなことにも参加はしたがアレは戦争ではあるまい。
ただの戦争ごっこに過ぎん。」
「そんなことを言えるのはあなたぐらいのモノですよ狸爺い。」
今しがた命を取られたババアは叱るように話す。
それを虫でも掃うかのように手を振る刀赤根々。
「おぬしはいい加減大人になったらどうだ。
いつも自分の常識が世界の常識と信じて疑わないというのは偏見にも程があるぞ。」
「ふん、あなたのよりかは常識があると思いますよ。」
「常識は18までに身に着けた偏見のコレクションだという言葉を知っておろうに儂の常識もこの時代では非常識だというのは理解しておる。
そのうえで自分の常識を信ずるために生きておるのだから我が儘を言っておるのは理解しておる。
おぬしは自分の無知を知らずして常識を問うのかえ?」
「その身勝手な常識に振り回せて迷惑をかけているのはあなたでしょう。
恥ずかしくないのですか!
大の大人が他人様に迷惑をかけて!
子供に顔向けをできるわけがない!」
「子どもは親の道具じゃねえ!」
じいちゃんは胸倉掴んで射殺さんがために莫大な殺気を感じた。
一口に殺気と言っても種類は様々だ。
一般人が最も感じやすいのは怒気の中の殺気。
ついで最も感じるのは視線の中の殺気。
最後にほんの一握りでイメージの中の殺気を感じられる人も居る。
じいちゃんはその全てを行っているのが見て取れた。
何せ五覚を用いればどういった行動をしたいのかすらも手に取るように分かるのだから。
既に100は死んでいる未来が見える葛西 漱歌(そうか)という個体は恐怖を一切感じていなかった。
「そうやってキレるから子供だというのです!」
「だから子供じゃねえっつってんだろてめえはてめえの子どもを駒にしてえだけだろうが!
俺は子供じゃねえ!だから刀赤に歯向かう!その意味知らねえんなら去ね!」
この状況下で気に飲まれていたのは俺ともう一人だけだった。
「あの、どうして刀赤さんのおじいさまは怒っていらっしゃるのでしょうか?」
「私にもさっぱりですが……。」
無知とは恐ろしい。
「Δεν είναι καλό σε αυτό το ποσοστό, οπότε μπορείτε να το σπάσετε;(このままだと不味いから割って入れる?)」
「ギリシャ語で言ってるけどそれだけ切羽詰まってるか。」
「Η στρατηγική καταφέρνει να κλείσει την πνευματική δύναμη του θυμού παρακάμπτοντας τη μαγική δύναμη όπως είναι.(作戦はこのまま魔力を飛ばしてなんとか怒りの霊力を閉ざさせる。)」
「まあ死人が出るのは嫌だけどじいちゃんはそこまで狂ってないから大丈夫だよ。」
どんなに凄いことをしていてもじいちゃんはじいちゃんだった。
「じいちゃんのモットーは自衛だということを知っていればあの態度で居られると思うけどじいちゃんキレてるからね。
五体満足で居られなくなるくらいだから大丈夫だと思うよ?」
「それあのクソババアが一方的にやられるってことですか?」
「詩さんはおばあさんのことになると口が崩れるね。
まあ良いけどじいちゃんは俺がはぐれの草食動物ならじいちゃんははぐれの虎だよ。」
彼らを見れば分かるのだ。
「人生はな見たくねえもんばっかだ。
見たくねえもんを見なくちゃいけねえkら見たいもんだけの世界にしようだぁ~あ、
ふざけんな!
俺ら傭兵は何度その光景を見ていると思っていやがる。
そして刀赤の血筋もだ!
訴えても理解してくれる奴なんてほとんどいやしねえ!」
子どもの真摯な訴えはいつの時代も集団の足音にかき消されゆく運命にある。
自分が救ったという自己満足で理解した気になる彼らを許せるか。
大人になれという当たり前の言葉で納得できない偏見を押し付けられそれが常識だと教え続けるだけの道徳に救いはあるのか。
その道徳すらも守られない社会に救いを求めるのは間違っている。
「クソババアそれが解らないようなら救うな!」
そして身体に救いを求めても中途半端にしか救われなかった悲しみのこもった拳が葛西 詩を迫った。
「まだクソババアに死んでもらっては困るんです。」
「弟子の覚悟に救われたな。」
じいちゃんは拳を彼女の額の前で止めていた。
「良き弟子は良き師を育てる。
それを知らぬお主ではあるまい。
ならばその志を曲げぬ弟子に応えぬ師は師ですらないことをゆめ忘れるな!」
「ふん、あなたは良き弟子にも師にも恵まれていないようですがね。」
「儂の師はいつまで経っても儂自身じゃよ。
それに幹は弟子ではない。
こやつは時偶流。
時代そのものが師匠じゃ。
過去を師とし未来を完成形とする術に師がおっては最強に至らん。」
「五覚という言葉自体時偶流ですが本当に彼は時偶流なんですか。
あなたも時偶流から派生した流派ですが時偶流はもう廃れ担い手が存在しなくなったと聞き及んでいますが……。」
今はまだ知らなくていい。
墓場まで口を閉ざす目をしている祖父はしずかに怒りの刃を納めた。
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