第43話

「ほう嬢ちゃんは、なるほどなるほど。孫のコレか?」


人差し指出して関節を曲げた。


「ま、まだそんなつもりはありません!」

「お嬢様……とうとうご自覚なさいましたか。」

「え、詩、何を……。」


カァーッと頬が熱くなっていく。

自分が何を話したのかを一字一句少しずつ認識していく。


「ふむ、

 患うは

 若き貴(たっと)びよ

 いつ時も

 中々良い川柳ができたかのう。」

「そこは尊(とうと)ぶでも良いのではないでしょうか。」

「字が違うぞ。

 葛西の若いの、尊いは敬いの念だ。

 儂が言ったのは高貴なる者の方。

 価値のある若さという意味じゃ。

 その違いをその目で見て見なさい。

 それが儂とお前さんの祖母との違いだと判るのだから。」


お嬢様のことを忘れ彼の戦いに目を向ける。


「我が孫は昔から怒りを押さえつける癖があってな。

 儂はそれを知りながらそのままにしておった。

 既にそれが儂と同じ境地かそれ以上の冷静さを手に入れたモノと思ってな。

 しかし、見てみろ。」


彼から見て取れるその格闘すら生温いと思える拳戟。

武器を持っている人間に対して無力化されるために生まれた江戸柔術、琉球空手、いずれも一つの時代で堅守な護身術として行われてきているがこれは明らかに武器を持っている相手を襲うための術ではないかと思えた。


武器を一切見ることなくどこかに攻撃をかすめただけで武器の軌道線がぶれる。


「刃物に対抗した術か何かだね。なら銃ならどうだ。」

「いったいどこから密輸してきたのやら。

 しかもデザートイーグルとは霊体を込める葛西の血筋とはいえ無駄な使い方よ。」

「うるさいよ狸爺い。」

「じゃあそのうるさい爺からのアドバイスだ女狐。

 そろそろ手が付けられなくなるからそろそろ終わらせるなら終わらせた方が良い。」


んなこと言われなくても分かっていると彼女は言いたかった。

実際、今敵対している存在がやっているのは車のエンジンの仕組みのように小さな筒に爆発を起こしてフル稼働させているような行動。

効率がいいと言えば効率は良いだろう。

それに耐えうる肉体を持っているのならば。

自分の見た感じでは目の前の人物はそれに耐えうる肉体を持っている形では無かった。

しかし偶に見える背中の傷がうねり肉体を頑丈にしていることを結界の受けた情報によって察知していた。


「触覚と味覚、視覚、嗅覚の合わせ技の五覚。五覚を会得していないとは第六感を持っている葛西とほぼ同等だろうに。」

「あの五覚とは何でしょうか。」

「五覚とは人間を兵器に変える方法がないか考えられた末に見いだされた技術。

 その使い方は多岐にわたりその組み合わせ、極め方次第で十人十色の技が出来上がる。

 開発者もその技の危険性に気づき封印した技の一つだ。

 あくまでもこの技は魑魅魍魎に普通の一般市民が対抗するために生まれた技。

 孫の場合は封印されていた奴が覚えていたかもしれないが覚えてしまった以上幹は儂を超える逸材なるやもしれんな。」


答えになっていない答えだが教えるわけにはいかないとも取れる発言だったのでそのまま聞き流すことにした。


「五覚はある程度の極めた一般人なら誰もが持っている才能のようなものだ。

 才無き者はその分努力をしなければならない。

 そもそも五覚と呼んでいるのは室町より前から続く術を学んだ者たちだ。

 現代はでは確か女狐曰く共(キョウ)と呼んでいると聞く。」

「共?」

「まだお嬢ちゃんは学生だろう。

 あの婆さんは精神が未熟な奴には技を覚えさせようとはしないからのう。

 あの技はどんな人間も武器に変え、怪物に変えるかもしれない術故に教えたモノを殺した事例も少なくない。」


「私もできるのでしょうか。」


明日香さんが手を挙げた。


「ふむ、結論から言うと五覚、共は誰にでも習得できる術。

 しかしその歳月は個人差がある。

 数日で会得するモノも居れば数十年、一生をかけてようやく会得できるモノも居る。」

「なら私はどのくらいで会得できるのでしょうか。」

「おぬしらのように第六感を持っている人間たちには数日で済む。」

「なら刀赤さん、幹さんも同じような血筋なんでしょうか。」

「封印術をその身宿す者は第六感ごと封印している。

 五覚に関して必要な才能も含めてな。

 よって本来ならば数十年分の努力が必要となる。」


ならどうやって会得したのだ。


「時偶流、まさか失われた技を生きているうちに見るとは思いませんでしたよ。」

「やっぱ葛西さん、私で遊んでいませんか。」

「いえいえ、これが私の共、時偶流で言うところの五覚いえ第六感を用いた六覚とでも言うべき技術なのですから。

 霊覚という霊などの超常現象を感知する感覚、

 五覚はあくまでもその五感を用いて霊の出す別の感覚を感知しているにすぎません。

 我々第六感を持つモノが五覚使えば更なる上位の能力となりうることを思い知りなさい。

 これが狸爺いへの手向けです。」


何か重圧が感じた。

まるで武器を持っているようなそんな事象のようにどうしても葛西さんの手から目が離せなかった。

五覚を用いて感知したのは刃物を持っているとしか認識できなかった。


「霊覚の共は一線を化すということを説くとその身に刻み付けなさい。」

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