第65話 村着

 スグリの実を一粒手に取り口に入れる。これを食べるコツは、兎に角速く噛み噛みする事だ。

 そうすれば、あの激烈な酸味を殆ど味わう事がない。


 もぐもぐもぐもぐ……うん。甘くて美味しいね。


「あっ! リーベスお姉ちゃん!」


 やばっ!? エンケリンちゃんに見つかってしまった!


「つまみぐいはだめだよ? リーベスお姉ちゃん」


 しょうがないなぁ、と言った感じのエンケリンちゃん。むむ、これは不味い。……よし!


「うん。ごめんねエンケリンちゃん。はい」


 私はそう言いながら、スグリの実を摘まんでエンケリンちゃんの口許に寄せる。


「はむ。んー……んふ~」


 迷わずぱくつくエンケリンちゃん! そして、一瞬顔を歪めてからの高速咀嚼。可愛すぎる! それに今! 私の手から直接食べましたよ! ああっ! もっと一杯食べさせたい! ……でも今は、


「内緒ね?」


「ないしょ」


 二人して唇に人差し指を立てて当てる内緒のポーズをする。これってこっちにもあるんだね。そして、これまた可愛いね。


 そんな私達をエンケリンちゃんの後ろから見ているオーパ爺と目が合った。


 何をやっとるんじゃ的な呆れた感を感じるが、まぁたいした問題ではないね。

 エンケリンちゃんさえ抱き込んでしまえば良いのだから。


 その後は特に問題なく朝食を準備して、それを美味しく頂きました。


 朝食が終われば、早速出発だ。


「今日も宜しくね」


 シュトゥーテに一言掛けて馬車に乗る。 最早定番になったエンケリンちゃん on 私の膝上スタイルだ。



 道中は今日も代わり映えのしない景色。魔物や盗賊等も出ず。実に平和だ。


 お昼休憩を一度挟んで、次の野営場所まで行って、昨日と同じ様に食料調達。兎とスグリの実、美味しく頂きました。

 そして、就寝。流石に今日は寝た。少し。


 そして、翌日も同じ様な行程を辿たどり、その日の夕方にはまだ早い位の時間に村らしきものが見えてきた。


「あれが目的の村?」


「んむ? そうじゃな」


「名前は有るの?」


「フィーアドーフじゃな」


「そうなんだ」


 名前が有るって事はちゃんと国や領主的なものに管理されてるのかな? そう言う訳でもないか。


彼処あそこには何時まで居るの?」


「明日一日おって、次の日の朝に出発じゃな」


「成程」


 どのくらいの規模の村かここからじゃ分からないけど、それなりに人が居るのかな?

 少なくとも到着してから始めて、日が暮れる迄には終わらない位は居るってことかな。



 そして、順調に何事もなく村の門迄来た。そう、テンプレたる何らかの襲撃や、危機に陥っている幼女も居なかった。

 まぁ、平和なのは良い事だよね。


 そして、門衛さんとオーパ爺とエンケリンちゃんは顔馴染みだ。入村に対する悶着もない。

 新人として紹介されただけだ。


 まぁ、良いこと何だけどね? うん。


 そして、いつも馬車を停めている場所と言う所に馬車を停めて、先ずは村長さんに挨拶に行くらしい。


 到着の挨拶と場所を借りる許可を貰う為だそう。

 邪魔にならなければ勝手にやっても良いのかも知れないが、色々面倒な事が起こらないように、こう言う事はちゃんとしておいた方が良いよね。確かに。


 と言うことで、村長宅に向かう。

 まぁ、大丈夫だとは思うけど、一応馬車とシュトゥーテの回りに結界を張って置いた。

 悪意を持って近付く者を弾き出す仕様で、子供がシュトゥーテと触れ合う位はいいんじゃないかな。

 悪戯しようとしたら弾き出されるけどね。


 そうして、そんなに歩くことなく村長宅に着く。歩いて来た中で見えていた建物の中で二番目に大きな建物だ。

 そう、一番じゃ無いんだよね。あの一番でかい建物は何だろうね?


 「オーパ商会のオーパじゃ。村長は居るか?」


 オーパ爺が村長宅の扉を叩きながら声を掛ける。


 しばしあって扉が開く。


 「おお、オーパさんようこそ。今回は少し早い到着ですね」


 そんな事を言いながら、皺くちゃのおじいちゃん……ではなく。壮年のおっちゃんが出て来た。

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