第31話 所謂商人組合と言えばこっち

「リーベスお姉ちゃん! 着いたよ!」


 ぺちぺちと手を叩かれなが言われた言葉で至福の時の終焉を告げられる。


 名残惜しいが仕方無い、とエンケリンちゃんを解放しようとした時ひらめいた!


 ほら! あの腕の上に座らせるあれ! あれで行けばいいんじゃない? そうと決まれば早速実行!


「!? リーベスお姉ちゃん!?」


 正に羽の様に軽いエンケリンちゃんを腕の上に座らせるのはとても簡単だった。


「ほら、危ないから私の首に手を回して?」


 私はそう言ってエンケリンちゃんの手を自分の首に誘導する。


「あ、あの! リーベスお姉ちゃん? わたし、もうそんなにちっちゃい子じゃないよ?」


 そう言って遠慮するエンケリンちゃん。


「いやいや、まだまだ行けるでしょ」


「あ、あぅ」


 そう言って赤くなるエンケリンちゃん。可愛い。


「おい! おい! 嬢ちゃん!? それは無茶だろう!」


 そんなでタイムを邪魔する無粋な声が目の前から聞こえる。


「何?」


 思わず、思いっきりドス威圧の効いた利いた声で応えてしまった。


 目の前の声を掛けてきたらしい厳ついおっさんがひるむ。


「う、い、いや。そうやってやりたいと思う気持ちは分からんでもないが、目の前の危険をとても黙って見てられん」


 む……。


 私の返答に怯むも、そのように言ってくる厳ついおっさん。なかなか良い人っぽい。しかしだ、


「いえ、余裕ですので」


 実際、エンケリンちゃんは超軽い。ちゃんと食べてるか心配になるくらいだ。むしろ軽すぎて放り投げてしまいそうだ。……気を付けよう。


「いや、そうは言うがどう見てもその絵面は……」


 むう。どうやらこの世界では私はとてもか弱く見える様だ。


「リ、リーベスお姉ちゃん……」


 そこで顔を真っ赤にしたエンケリンに声を掛けられる。


「……駄目?」


 こくこく、と頷くエンケリンちゃん。


 むう。そんなに恥ずかしいのか……。仕方無いか。エンケリンちゃんが喜んでくれないと意味無いからね。


 名残惜しいがエンケリンちゃんを腕から降ろす。ほっと息を付くエンケリンちゃん。可愛い。


「言われたからじゃ無いよ? あくまでエンケリンちゃんの意思を尊重したからだからね? 全く問題無かったし」


 おっさんに言われたからそうした。って感じになるのが何か悔しかったのでそう言った。


「お、おう。あの状態じゃ無くなれば何でもいいさ。もう無理すんなよ」


「だから! 無理なん……って行っちゃったし」


 くっ、言い逃げして行きやがった。何か負けた気分何だけど?


「ごめんね。リーベスお姉ちゃん」


「ん? エンケリンちゃんが謝る事なんて何も無いよ? エンケリンちゃんに聞かずに勝手にやった私が悪いし、こっちこそごめんね」


「う、ううん! 抱っこは嬉しいんだけど、見られるのは……」


「分かったよ。今度は見られ無い所でするね」


「うん!」


「それでは行くかのう」


「はーい」


「あ、うん」


 オーパ爺の存在をすっかり忘れてたよ。




 そしてやって来ました商人組合アインシュタッド支部。


 建物は恐らく石造りの三階建て。窓が三段だから多分そう。屋根裏とか地下はしらん。


 外壁も切出したまんまではなく、結構装飾が入ってて豪華な感じになってる。この辺の文化レベルは結構有るみたいだね。お金掛かってそう。


 入口の扉は、いい感じに黒光りしてる重厚そうな両開きの木の扉だ。


 そこを開けて中に入ると、正面に銀行みたいな窓口が幾つか、右側に登り階段、左側には扉が幾つかあった。


 どうやら、窓口の一つに行くらしい。


「手代の追加登録をしたいのじゃが」


 窓口の女性に向かってオーパ爺が言った。


「はい。手代の追加登録ですね。あ、オーパ会頭、おはようございます」


 受付の女性はオーパ爺を認識すると、立ち上がり綺麗な礼をしながら挨拶をした。


「おう、おはよう」


 オーパ爺がよいよいって感じで手を振りながら挨拶を返すと、受付の女性は座り直して続けた。


「手代の追加登録ですと、銀貨一枚になりますが宜しいですか?」


「お願いする。後、登録証の新規発行もお願いしたい」


「はい。新規発行ですと、銀貨三枚になりますが宜しいですか?」


「お願いする。登録するのはこの子じゃ」


 オーパ爺がそう言いながら私を示す。


「あ、宜しくお願いします」


「はい。宜しくお願いします。それではこちらに手を置いて下さい」


 そう言いながら受付の女性が謎の板を差し出す。


 これは……石、なんだろうか? 厚さ2センチ位、縦横30×20センチ位の真っ黒の板で、表面は鏡面仕上げの如くぴっかぴかだ。


「……これは?」


「はい。これは登録証を作る為に魔力を読み取る板になります。一人一人魔力が違うらしく、この板で魔力を読み取る事で、本人以外が使う事が出来ない専用の登録証を作る事が出来ます」


 成る程。これが神殿関係の……、言うなれば神器だね。


 まぁ何はともあれ、やらなきゃ始まらないか。


 余りにぴっかぴかだから指紋付けたら怒られそうで、ちょっとどきどきするね。


 そんな下らない事を考えながら板に手を置くと、板から目が潰れる位の眩しい光が……!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る