第11話 就職内定

「え? いいの? 自分で言うのも何だけど、相当怪しい魔法使いだよ?」


「まぁ、そうじゃのう。じゃが馬と話をする人間に悪い人間はいないと思うんじゃ」


「う゛え゛っ、見てたの!?」


「あんなに熱心に何を話していたかは分からんがの」


 恥っずかしいー、うう。でも、ほんとに会話してたとは思われて無さそうだね。


「それこそ危ない人だと思うんだけど……」


 私なら近付かないよ。


「ほほっ、そうじゃの。じゃがシュトゥーテが警戒していないのは確かじゃ」


 まぁ確かに仲良くはなった。


「それにエンケリンも随分懐いているようじゃしな。お前さんはあの子にとって良くない事はせんじゃろう?」


 んん? これって私の性癖ばれてます? いやいや、結構仲良くなってたからでしょ。うんうん。


「愚問だね」


「ほほっ、そうじゃろうのう。で、どうじゃ?」


 私にとっては不利益は無いかな。他と比べて稼ぎがどうか位かな? 登録証といくらかの収入。こっちの世界に慣れる時間も必要だしね。それに何よりエンケリンちゃんと一緒に居られる!


「そっちに問題が無いのなら、こっちがお願いしたいくらいだよ」


「それでは決まりじゃな。よろしく頼むぞお前さん」


「お前さんじゃ無くてリーベスって呼んでよ。これから雇って貰うんだから」


「そうか? そうじゃな。では改めて宜しく頼むぞリーベス」


「お任せ下さい会頭」


 びしっと決める私。


「お前さんに会頭と呼ばれるのは変な感じじゃな」


「リーベス」


「おお、すまんなリーベス。こちらも、前のように呼んでくれんか?」


「う~ん。じゃあ、仕事関係者が居ない所では元の感じで」


「そうしとくれ」


 そんな感じで就職内定を頂きました。





「そうだ。私の待遇って、やっぱり一番下っ端から?」


「そうさのう。リーベスは何の職歴も無いんじゃろ?」


 頷く私。前世はノーカンだからね。


「それなら普通は丁稚からじゃが、リーベス程の魔法使いが丁稚と言うのものう」


 丁稚とは衣食住を保証し、更に教育もすることを条件に無給で働く契約だそうだ。主に未成年用の契約になる。


 貴重な魔法使いがそんな契約することなんて、まず無いよね。


「じゃから、手代での契約になるじゃろうな」


 手代ってのはこっちの世界の一般従業員的なものだと。住居の保証をされている事が多いらしい。ちゃんと給金は貰える。


「そうなんだ」


「商売の仕事はまだ出来んじゃろうから、取り敢えずは専属護衛としての契約を考えておる」


 成る程、確かにこちらの商慣習とか全く知らないしね。妥当な所かな。


「それで問題無いよ。それだと具体的な金額はどのくらいになるの?」


「そうさのう。月金貨5枚と言った所かのう」


 金貨5枚……妹の読んでたラノベとかだと金貨って結構な大金だった様な気がするけど……こっちの世界での価値が分からない。


「……それって多いの?」


「んむ? リーベスの様な魔法使いへの対価としては激安じゃな」


 馬鹿正直に聞いてしまった所に、オーパ爺も負けずに返して来た。


「安いんだ」


「安いも安い、激安も激安じゃ。リーベスの様な魔法使いを雇おうと思えば、最低でも100倍の金貨500枚以上は必要じゃろう」


 私物凄い買い叩かれてますけど?


「それって私に言って良かったの?」


「ここで黙って契約しても、恨みと不信を買うだけじゃ。ならば最初から話しておいた方がよいじゃろう?」


 まぁ、それはそうだけど……


「私がじゃあ他に行くって言ったら?」


「そうなったら儂としては、エンケリンに泣き落としを頼むしかないのう」


「な!?」


 え!? やっぱりばれてんじゃないのこれ!?


「まぁそれは一割くらい冗談じゃが、そうなったら仕方ないわい、残念じゃがな」


 ふぅ冗談か……って一割ってほぼ本気じゃん! 逃がす気無いよオーパ爺。

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