第9話 登録証
いや、拘束魔法じゃないし!
でも、私が解除するまで位置固定とか拘束してるよね……。
はっ、いつまでも黙っていてはオーパ爺にあらぬ疑いを掛けられてしまう!
「特に時間は設定してなかったし、持続時間とか試して無いから、私が解除するまで掛かってるかも。でも、自分で解除出来た方が便利かもね。改良するよ」
そう早口で言ってオーパ爺の拘束魔法を解除、自分で解除出来るようにした馬車快適魔法を掛け直す。
「降りたい降りたい降りたいって三回思えば解除されるようにしたよ。試してみて」
「そうなのか。どれどれ……おおっ解除されたの」
よし、成功だ。改めてオーパ爺に馬車快適魔法を駆け直して、今度はエンケリンちゃんの拘束魔法を解除する。
「わっ。……もどされない。すごい! すごいよ! リーベスお姉ちゃん!」
そう言って私に飛び付いてくるエンケリンちゃん……へ? へ!?
一人あわあわしていると、
「全然お尻痛くなかった! それにそれに! なんかふわふわしてた!」
満面の笑みでそう話すエンケリンちゃん。それを間近で見せられて、私のエンケリンちゃんへの愛おしさが天元突破しそうです! これはもうぎゅってしてもいいやつですよね! だってあっちからくっついてきてるんだし! そうされてももんだいないってことですよね! それじゃぁ——
「こりゃエンケリン。あまり迷惑を掛けでないぞ」
——そんな事を
「は~い」
そう答えて私から離れるエンケリンちゃん………………
はっ!? 私は何を考えて……まだその時では——いやいや何考えてんだ私。
落ち着け、それは最終手段だぞ私。
改めてエンケリンちゃんに馬車快適魔法を掛けてから今後の話をする。
「私、街に行くのって初めてなんだけど、入るのに何か必要だったりするの?」
そう言った私にオーパ爺が答える。
「そうなのか。まぁお前さんの年の頃なら珍しくも無いかの。街に入るには身分によって一定金額を払う必要があるのう」
やっぱりお金が必要か……身分で違うのか、
「儂らの場合は商人と
「え!? 丁稚!? お孫さんじゃ……」
オーパ爺の衝撃発言に思わず声を上げる。
「ん?
そ、そうなんだ……。デアからはそう言う所は全然聞けなかったからなぁ。
「リーベスお姉ちゃん、リーベスお姉ちゃん、にししっ」
そう言って嬉しそうに首から下げた、キャッシュカードを横に半分にした様なサイズの茶色い金属板? を見せてくる。
ん? 何か文字が書いてあるね。なになに——
——エンケリン
オーパ商会 丁稚
アインシュタッド——
と、三行で書いてあった。片仮名と漢字で……異世界文字じゃないの!? え? 日本語!?
っと、落ち着け私。多分これは何かある、恐らく特典の
「リーベスお姉ちゃん?」
「はっ、こ、これが商人組合の?」
考え事をしていた私は、どもりながらも何とか声を出す。
「そう、登録証じゃ」
へぇ、登録証って言うんだ。見た感じ全く歪みが見えない完璧な長方形だ。それに薄い、1mmくらいしかなんじゃ……。金属板をここまで精巧に加工する技術がこっちにあるんだ、もっと遅れてるのかと思ってた。
「……凄いね」
思わず感嘆を
「えへへへ」
嬉しそうに笑うエンケリンちゃん。……
「リーベスお姉ちゃん?」
度々固まる私に心配げに声を掛けてくれるエンケリンちゃん。
いかん! また心配させてしまっているぞ!
「触ってもいいかな?」
エンケリンちゃんにじゃないよ? 登録証にだよ? 本当だよ?
「うん。いいよ」
いいって! 触っていいって! ……登録証にですよ。
「ありがとう」
そう言って登録証をエンケリンちゃんから受け取る。
その瞬間、登録証から文字が消えた……へ?
へ? 消えた? え? また私やらかした? え? これってやばいんじゃ……。
嫌な汗をだらだらかきながら正直に言う。
「文字消えちゃったんだけど……」
何とか取り返しのきく失敗で、再発行とかいくらかかるのかな。
「?」
エンケリンちゃんに見せると、何言ってるのって感じで小首を傾げられる……いやとっても可愛いんだけどね? 今はそれどころじゃ無くてね? オーパ爺を見る。
「ん? ああ、本人が触っとらんと文字は出んのじゃよ」
さらっとそんな事を言うオーパ爺。んな馬鹿な……。
登録証をエンケリンちゃんに返す。文字出て来る。
また私借りる。文字消える。……まじか!? 超技術じゃん!? え? なにこれ!?
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