第79話

「落ち着きましたか?」

「そうですね、そろそろ動きます。カリン先生ありがとうございました」

「ダイスケさん、無理はなさらずに」

「はい、ありがとうございます」


タチバナ様が多少すっきりなさったお顔で立ち上がり部屋をでたので私も後に続くことにしました。


「ダイスケもういいの?」

「ええ、おかげさまでなんとなくすっきりしました」

「……そう」


フィーネは気まずそうにうなずくことしかできないようです。


「さてと、カミューさん」

「はい?あ、タチバナ様もう大丈夫なのですか?」

「ええ、それでちょっと手伝ってほしいんですけど」

「はい!なんでもおっしゃってください!」

「ありがとう、じゃあ、早速…この操作盤のここ外せないかな?」

「え?少々おまちください……これでいいですか?」

「お?さすがですねぇ、ありがとうございます」

「いえ!」

「じゃあ、次に……この線がどこにいっているのか追いたいんですが」

「床下に!」

「ええ」

「もしかして……さらに地下があるかもしれませんね!」

「そう思ってます」

「さがします!」

「いや、探さなくても大丈夫だと思います」

「え?」


おどろくカミューを置き去りに壁画へとむかっていきます……なにかが起きるのがわかるので動悸がとまりません。


「よく見ると絵がかみ合っていないところがあるんですよ」

「そ、そうですか」

「たぶんこれがこうなれば…ほら」


絵画の一部を動かすと微妙に動くとカチという音とともに絵画の一部が開き中をのぞくと階段がありました。


「フィーネさん、カミューさんいきましょうか」

「え、ええ」

「は……い」


あまりにも自然にあっさりなさっていて2人もあっけにとられながらタチバナ様の後に続きました。


「………………」

「す、すごい……」

「これがエネルギー室ですね、ほかに大事なものを納めていたんだと思います」

「そ、そうね…」

「この中にこの装置の詳細を記載したものがあるとおもうんですよね」

「!!!!!!」


タチバナ様の一言でふたりは一気に書物へとむかい手あたり次第しらべはじめました。


「タチバナ様このあとは…」

「んー、そうですねぇ…色々装置をみたいとおもいます」

「さようにございますか…」


動き出すとこれです…やはりこの方は心のありようで実力が大きく変わってしまう危うさがあります。


「ふむ……」

「なにかおわかりになられましたか?」

「そうですね、この装置を動かすエネルギーがなんなのかはなんとなく予想がつきましたね」

「!?」

「ダイスケわかったの!?」

「タチバナさん!おしえてください!」

「うぉ!ちょ!」

「二人とも離れてください、話すこともままなりません」


2人が申し訳なさそうに離れるとタチバナ様は装置から伸びている太いロープのようなものの場所にいきました。


「たぶん、太陽の光と地熱か水でエネルギーを賄っていたんだと思います、それとそれを吸収するための装置の起動だけはフィーネさんとかが持っている人の力が必要なんだと思います」

「そ、そう……」

「はい、この線をたどっていけば太陽の光を吸収する装置まで行けると思いますし、こっちは一度引き抜いてみるしかないかなぁ」

「………………」

「タチバナ様、フィーネが力を注げば起動できるということですか?」

「壊れていなければですね、ただ太陽の光を集める装置は屋外だから時間経過でどうなっているかわかりませんよ?木がはえていて陰になっていたりするかもしれませんしね」

「な、なるほど」

「まず光をあつめる装置を起動するためのエネルギーをここから流してやればわかりますよ、ただどれくらいの量が必要なのかはわかりませんけどね」

「わかったわ…とりあえずやってみましょう」


フィーネが装置から伸びている2本の線を左右の手で握り力を流し始めました。


「………くぅ…駄目ね…私だけじゃ力が足りないのかもしれないわ」

「量じゃなく強さが足りてなさそうですね」

「わかりました、フィーネ1本は私が」

「いいの?」

「やらなければ先へすすまないでしょう」


フィーネから1本もらいうけ二人で同時に全開で力を流し込みました。


「!!!!!!!」

「お?動きましたね……ふむ……やっぱ地面に刺さっている方は大丈夫ですけど外に伸びている方はダメそうですね」

「はぁはぁはぁ…そ、そう…じゃあ外で装置を探したほうがいいわね」

「はぁはぁはぁ…そうですね…」

「先輩、私が探してきます!」

「カミューまかせます」

「おまかせください!」

「ロキとルフを連れて行ってください」

「ありがとうございます!!」


装置が一瞬うごいたことで興奮しているカミューが全速力でかけだしていきました。


「二人は少し休んだ方がいいですよ」

「そうね…」

「あとはモネとルイにおまかせいたします」


私とフィーネはタチバナ様と一緒に工房をでてそれぞれの部屋へといき少々休むことにしました…実に7割強の力をつかってしまいました。


「モネもルイもどうしたの?」

「…明日のタチバナ様は完全休養といたします」

「え?」

「フィーネ様をはじめとしてご信頼してお任せしていたのですが」

「なにをいっているの?」

「いや、俺もわからなくて…二人が合流してからずっとこんな調子なんですよ」

「温泉宿でもここでも結局タチバナ様はお休みになられておりません」

「タチバナ様には残りの休日はごゆっくりしていただきたいのです」

「…耳と心が痛いわね」

「反論の余地もないわ」

「二人が怒るのも無理ありません!」

「お心が大事だと皆様もご理解していらっしゃるのにこのありさまです」

「もうおまかせできません」


モネとルイが冷たい目で淡々といいタチバナ様の左右から離れようとしません。

きっと私に対しても担当者失格だと思っていることでしょう。


「まぁまぁ二人とも、心配してくれるのはありがたいけど俺は大丈夫だよ」

「タチバナ様はお優しすぎるので」

「え?あははは、ありがとう。けど無理はしていないから大丈夫だよ」

「………………」

「なにかあれば二人もいてくれるし、カリン先生もいてくれる。それにナタリーさんがいるから危ないこともできないしね」

「当然です、ダイスケさんの体調管理はまかせてください」

「タチバナ様になにかあれば私は生きていけません」

「そもそもアリスさんが側にいてくれてる時点で色々事前に察してくれてるから大丈夫」

「………………そうですか」

「うん、ああ、でも明日は二人とのティータイムの時間がほしいかな、しばらくしてないからね」

「!!!!!必ず!」

「うん、悪いけどよろしくね?」

「おまかせください!」

「うん、ってそれで?カミューさんとレティーは?」

「装置を見つけたそうで整備をしているそうです」

「あらぁ…無理してなきゃいいけど」


苦笑するタチバナ様ですがフィーネだけは下を向きショックを受けているようです。


「はぁ~…私としたことが甘えすぎていたわね」

「あなた私と同じかそれ以上タチバナ様にができてるんじゃないの?」

「…今日は耳にも心にも痛いことばかりね…」

「それは私も同じです」

「まぁいいわ、それよりもフィーネはタチバナ様のケアをしてきなさいよ」

「…そうね…まぁそれも結局は私の力が補填されるんだけどね…」

「ですがどんな時もやらなければ今度は体にまで不調がでてしまいますよ」

「わかっているわ…私がやれることなんて今はそれくらいしかないもの…」


自傷気味にフィーネが笑いながらタチバナ様の元へ向かいました。


「それで今夜は誰がつくの?」

「私が体調確認したあとそのままつきますか?」

「いえ」

「じゃあモネとルイね」

「いえ、本日は私がつきます」

「はぁ!?」

「どういう風のふきまわしですか?」

「このような事態になったのは私の責任でもありますので」

「あの二人がそれを許すかしらね」

「わかりません…が私がやらなければなりません」


とりあえず部屋へ向かいました。


「フィーネどうですか?」

「ええ、今日は私もかなり力をつかったから私一人で収めたわ」

「そうですか、ではかわります」

「え?…そう…まかせたわ」

「はい」

「モネ、ルイいくわよ」

「指示に従えません」

「モネ…ルイ?」

「くっ!…」

「………………」


フィーネに見つめられ二人は苦々しい顔をし私を睨みつけながらフィーネについていきました………。


「はぁ~…なんというだらしないお顔をなさって…」

「Zzzzzzz……ふひぃぃぃ………」

「……………お風邪を…ん…」


必ずと言っていいほど布団をお直ししてさしあげようと近づいたタイミングで抱き着いてきます…何かのセンサーでもついているのでしょうか…。


「ん…いい匂いがするなぁ…」

「……はぁ~…」


グイっと引き寄せられ胸に顔をうずめてきますが…ゆるみきったお顔で幸せそうなのをみると脱力してしまいますね……。


「しかたない人ですね…」


自らお離しになられるまで逃れられないのはわかっています…しかたないのでこのまま添い寝をするしかありません。


「んんー……」

「はぁ~…やれやれですね…ゆっくりお休みください」


目にかかる髪を撫でてさしあげると幸せそうな笑顔をむけてきます…多少なりとも安らぐのであればたまにはこういうのもいいのかもしれません。


「今朝はあなたにまかせたほうがいいみたいね」

「フィーネにまかせてもいいのですが……」

「一向に離そうとしないのね?」

「そういうことです……」

「「………………」」

「二人ともどうしたの?」

「…本日はティータイム以外アリス様にお任せいたします」

「いいの?」

「タチバナ様がそれをお望みのようなので」

「アリス様は今後もう少しタチバナ様とのお時間を大事になさったほうが良いと思います」

「ふふふ、担当者として耳が痛いわね」

「私なりにタチバナ様のご負担とあなたがたの心情を加味していたのですが」

「ダイスケがそれを望んでいるっていうのなら仕方ないでしょ」

「本当にお望みならばですが…とりあえず今は引き離してほしいのですが?」


モネとルイに手伝ってもらいなんとかタチバナ様から解放されました。


「とりあえず朝は3人にお任せいたします」

「あなたはいいの?」

「ご朝食の準備とお着替えの準備をしてさしあげ、スケジュールの調整もしなければなりませんので」

「そう」


せめてお休みの間だけでも二人の時間を増やしたほうがよいということなのでしょう……しかたない方です。


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