第75話

「新年あけましておめでとうございます!」

『おめでとうございます』


露天風呂に入り、食事をとりながら日をまたぐとタチバナ様が姿勢をただして挨拶をしてくれました。


「昨年は色々ありすぎて正直ついていけてませんが今年もよろしくお願いします」

「あはははは!ダイスケだけじゃないわ!」

「そうですね」

「来年はザイードさんとアンリさんナダン君も一緒に新年を迎えれるようにしたいですね」

「そうね」


昨年を振り返るとまだ肌寒い中、タチバナ様の担当になり怒涛の日々をすごしてまいりました…冷静に考えるとタチバナ様は1年に満たない間にLVは100を超え、王家をすくい、お仕事は独立なさり……そしてこちらの世界に適応までなさりました…。


「随分感慨深げにしているわね」

「昨年を振り返り新年早々どっと疲れがでただけです」

「ふぐっ!……昨年は色々ご迷惑をおかけして……」

「タチバナ様のいい方では今年は迷惑をかけないといっておられるようですが?」

「………………本年も宜しくお願い致します」

「はぁ~心得ております」


従魔を撫でながら楽しそうに食事をし談笑してらっしゃいますが……そろそろ…。


「Zzzzzzz」

「あら、あれだけ初日の出というものを見ると意気込んでいたのに」

「はぁ~…モネ、ルイ…布団の準備を」

「はい」

「それと日の出すこし前におこして差し上げてください」

「おまかせください」

「ついでにカリンの布団もひいてあげて」

「………かしこまりました」


タチバナ様を気にしていたので放置していましたがカリンはスカートがめくりあがり大股を開いて眠ってしまっています。


「ではお開きですね」

「レティー、カミューも部屋に戻っていいわよ」

「えぇ!?」

「こちらにいてもいいのでは」

「ダメよ、タチバナ様の眠りを邪魔することは絶対ゆるさないわ」


ナタリーが殺気をはなつと二人は真っ青な顔で部屋に戻っていきました。


「今日はどうするの?」

「二人はいけるのですか?」

「大丈夫です」

「いえ、無理ね」

「「フィーネ様!」」

「容量オーバーよ」

「そうですか、では今日はこのままで?」

「それも駄目ね、よほどのことがない限りこれからは日に最低2度は出させないと力が滞って体内バランスが崩れるわ」

「そうですか、排出させるだけでもいいのですか?」

「んーできれば吸い取れるのがベストだけど最悪出させるだけでもいいわ」

「なるほど、では最初はフィーネが最後にナタリーかカミューに頼むのがベストですね」

「それでもいいけど、あなた担当なのに皆に押し付けるだけでいいの?」

「押し付けているつもりはありませんが……逆に尋ねますが、本当に私も本格的になさってもいいのですか?」

「え?あははは!珍しく自信満々なのが癪にさわるけど、たしかに分が悪いわね!」

「ではフィーネはいつもどおりタチバナ様のご負担にならない程度に」

「わかったわ」

「それでも収まらなければ今日はナタリーお願いします」

「ええ、任せて頂戴」

「ナタリー」

「なによ」

「くれぐれもやりすぎないように」

「わ、わかってるわよ!」

「では私は明日の準備をいたしますのでこれで」


近場の地図を見てタチバナ様が明日いってみたいといっていた場所…なにか気になるので色々準備をしていたほうがいいでしょう。


「ふふふ、あなたたちも大変ね」

「なんのことでしょう」

「ずっと力を放出しつづけているじゃない」

「おっしゃってる意味がわかりません」

「あはははは!アドバイスをするとそのままのペースだと朝までに消費しきれないわよ?」

「「 !!!!!!!! 」」

「どうせダイスケに見られたんでしょ?」

「なにをでしょう」

「本来の姿よ」

「!!!!!!!」

「ダイスケは気にしなかったでしょ?」

「はい」

「かっこいいとおっしゃってくださいました」

「あはははは!さすがダイスケね!だったら鬼人化して放出しちゃいなさい?」

「は、はい……」

「大丈夫よ、あなたたちの力があがろうがダイスケは起きないわ」

「そうでしょうか」

「ええ、現にあなた達の力があがってるのに目が覚めないじゃない、安心しているのよ」

「なるほど……」

「けど日の出までに回復してるのかしら」

「フィーネ様、こちらをご覧ください」

「あら、ナタリーじゃ足りなかったのかしら」

「多分ですが……やはり吸い取らなければならないのかと」

「ナタリー様がおやりになっているときには力が含まれていないようでした」

「そうだったの?」

「はい」

「じゃあ、大丈夫ね」

「はい」


そろそろ日の出が近いのでタチバナ様の部屋へもどってみましょう。


「……ひどい有様ですね」

「力が濃すぎて2人とも酔ってるみたいなものよ」

「……も、もうしわけありません」


事情をききました…これではナタリーとレティーは役に立ちません…アンリはどうなのでしょうか……。


「タチバナ様、日の出がちかいですよ」

「んあ?あ……起こしてくれてありがとうございます」

「どちらに?」

「どうせなら外の景色のいいところで見てこようかと思って」

「じゃあ、私とアリスが一緒に行くわ」

「こちらにお着換えを」

「ありがとうございます」


コートをきたタチバナ様とテト達とともに小高い丘へと向かいました。


「おぉ~!綺麗だなぁ」

「おつなものね」

「ええ」

「晴れててよかった…やっぱこっちの世界は空気と空が本当に綺麗だからひとしおですね」

「そうですね」


山肌から徐々にあふれ出す光が徐々に太陽の形を成していくような感覚ですごく美しいと思いました、タチバナ様が見たいと言っていた意味がわかりました、さすがのフィーネもみいっています。


「いいものが見れたわ」

「そうですね、みんなも来れたらよかったんですけどね」

「来年のおたのしみね」

「そうですね!」

「ふふふ、今日も元気そうでなによりね」

「いやぁ~、最近はすごく調子がいいんですよね!今日もいつのまにか眠ってしまったんですけど目覚めばっちりですよ!」


わずかな睡眠時間でもすっきりなさったかおをしておりますが少々肌寒そうになさっているので宿に戻ることにしました。


「あ゛ぁ~…い、生き返るぅ~」

「新年早々なんという声をおあげになられているのですか」

「爺臭いわよ?」

「ぐっ!熱さにたえきって気持ちよかったんで……」


部屋に戻りレイを温泉入りの風呂桶に入れ私はテト、タチバナ様がロキをお抱きになられながら部屋湯へとつかり浴槽のへりに立っているルフも気持ちよさそうにフィーネと堪能しているようです。


「モネちゃんもルイちゃんも疲れちゃったのかな」

「ええ、たぶんあと1時間もしたら元気になるわ」

「そうですか、ナタリーさんたちは……」

「部屋で泥のように眠っております」

「OH~」

「カリンはいわずもかなね」

「あは…あははは…」


布団を抱きしめながらよだれを盛大にたらして眠るカリンをみながらさすがのタチバナ様も苦笑なさっております……。


「まぁ、今はゆっくりしてまた頑張りなさい」

「はい、そうですね!」


3人で朝日をみながらゆっくり湯船につかるのは目に見える景色すべてを独占しているようで…かつ、美しい絵画を前にしたような感覚にも似た感動を味わえました。


「やっぱり…」

「タチバナ様、なにがですか?」

「ん?ああ、この岩の中っていうのかな?なんかすごい水が流れている音ががするんだよ」

「え?」

「ここも触ってみると微妙に振動してるから間違いないよ」

「ロキ聞こえる?」

「……ワン!」


全員で出かけ宿の裏にある岩山でロキはタチバナ様が指さした場所で耳を傾け音を拾うような動きをすると嬉しそうに一鳴きしました。


「どこから流れてきてるのかしりたくて」

「いってみましょう」

「うん、そうだね!新年1発目の探検はじめだ!」

「はい」


嬉しそうにモネとルイを伴って意気揚々と進んでいきます、2人も心なしかワクワクした様子で嬉しそうにタチバナ様の後に続いています。


「元気ねぇ」

「ええ」

「そうですね」


3人で部屋湯に入ったことを知りナタリーとカリンはものすごく不機嫌です。


「今日はカリン先生も一緒だから気になる植物があっても安心だね!」

「!!!!!ダイスケさん!わからないことがあれば何でもおっしゃってくださいね!」

「おぉ!ありがとうございます!」

「いえいえ!むふふふふ」

「……単純ね」

「ええ…カリンですから」


タチバナ様から名前を突然呼ばれ嬉しそうにかけて行き腕を絡めたカリンの機嫌はあっさり直ってしまったようです。


「どうなさいますか?」

「崖かぁ…」

「ホォ」

「ん?ルフどうしたの?……あれ?」

「????」


地面の中をながれる水の音にそって歩いていると目の前にはほぼ垂直にそびえたつ崖がみえ引き返そうとしたタチバナ様にルフが一鳴きすると止まっていた場所に何かを発見なさった様子です……嫌な予感がします。


「ここ抜けそうだね」

「そうですか、やってみますか?」

「せっかくだし試すだけためそうかな」

「わかりました」

「おぉまかせくださいっ!」


タチバナ様が岩を砕きたいとおっしゃられたのでいつもの道具をわたそうとするとモネが意味深な視線を飛ばした後、カミューにも目線をおくるとカミューは察したのかいくつもの道具をタチバナ様にお渡しになられました。


「え?こんなにもってきてくれてたんですか?」

「まだまだありますので!必要な際はいつでもお声がけしてください!」

「カミューさんっていつも色々なものいい物をすぐ用意してくれてすごい」

「!!!タチバナ様のためなら何でもご用意いたしますので!」

「ありがとうございます、けど無理はしないでくださいね?」

「はい♡」

「くっ!」


メロメロで有頂天になるカミューとそれをみて悔しそうに膝をつくレティーのやり取りももはや風物詩になりかけています。


「ふぅ~…なんか最近めっちゃ体の調子がいいから試しにおもいっきりやってみようかな」

「み、みなさんお下がりください!」


今までのくさびよりも太く長い丈夫そうなものを突き刺したタチバナ様の雰囲気が今まで以上に強大になっておいでで全員が安全な距離を取りました。



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