第31話
「じゃあ、そちらはシステムを巧妙に不正利用されたというわけか」
「はい、それでセキュリティーの見直しと転移システム自体を個別に分け担当者以外がアクセスできないように改善するそうです」
「そうか」
「ですので、その間システムは使えません」
「じゃあ、タチバナはその間クエストはやれねぇってことだな?」
「いえ、逆です」
「はぁ?」
「その間、むこうの仕事をお休みしこちらに滞在していただくつもりです」
「おいおい、いいのかよ」
「今のタチバナ様に必要なのはご自身の身をまもる術と経験です」
「ああ、まぁそうだな」
「今は
「下僕?まいいか、とりあえず無理はさせるなよ?」
「当然です」
「あいつは戦闘には元々むいてねぇから苦労するとは思うぜ?」
「ガルド様は本当のタチバナ様をご理解なさっておりません」
「ああ?どういう意味だ?」
「日ごろのタチバナ様は生来のお優しさから無意識にあらゆる力に制限をかけておいでです」
「はぁ?ほんとうかよ」
「私が傷をつけられた際、それが少し外れたのですが」
「おう」
「私が辛うじて目で追えるだけで反応できない速度で敵に詰め寄っておいででした」
「はぁ!?」
「そして私を片腕で抱きかかえガントレットをお付けになられているとはいえレンガ造りの1m以上は厚さのある壁を殴りこわして一直線に外にでたのです」
「お、おいおい…にわかに信じられん話だ…」
「残念ながら事実です」
事実を伝えただけですが、やはりにわかには信じられない話だと思います。
「まてまて、お前なんで右手で剣をもってんだよ」
「え?そう習ったからですけど」
「はぁ?お前に剣をおしえたやつはボンクラか?」
「いや、豪快で強い人ですよ」
「いいから左で持って振れよ」
「わ、わかりました…あれ?振りやすい気がするなぁ」
「当り前だろ!おめぇの体の動きからしてどうみても左利きじゃねぇか!」
「え!?お箸もペンも右なのに!?」
「んなもんと一緒にすんじゃねぇよ!あとは適正なんだった?」
「弓ですが」
「もしかして狙ってる場所よりいつも少し内側にはいらねぇか?」
「そうなんですよ!」
「馬鹿か!構えが逆なんだよ!!」
「えぇ!?」
車いすにのったザイードさんの指導の元…左での武器の使用を練習した…。
「というわけでよ、こういう感じの武器と防具をさがしてくんねぇか?」
「わかりました、早急に準備いたします」
「あはははは!さすがタチバナね!持ち手が逆なんて!!!あはははははは!!」
「ふぐっ…」
「下手な癖がつく前の早い段階でお気づきになられてよかったですね」
「ありがとう…2人とも…2人とテトだけが日々の癒しだよ…うぅぅ」
モネちゃんとルイちゃんが優しく微笑んで慰めてくれると泣けてくるぜ…。
「はいはい、そういうのはいいから。とりあえず明日からタチバナは午前は依頼をうけて午後からはザイードと訓練よ」
「は、はい!」
有無を言わせず明日からの予定が決まってしまった…。
「アリスはもうしばらく安静ですよ?」
「わかっています」
翌日から予定通り朝のクエストと昼からの訓練が始まった。
「おう!ダイスケあがってくれ!」
「はい!」
「急で悪かったな!助かったぜ!」
「いえいえ!またいつでも声をかけてください!」
「おう!そんときゃまたよろしく頼むぜ!ほら!これ依頼書だ」
「ありがとうございます!」
すでに顔見知りになっている問屋のギリーさんから依頼書にサインしてもらって家に戻った。
「アリスさん、これ依頼書です」
「はい、たしかに」
毒は中和されたけど一応1週間安静を言い渡されたアリスさんが心なしか満足げに依頼書を受け取ってくれた。
「んー…なんかおめぇ違うんだよなぁ…」
「はぁはぁはぁ、え?なにがですか?」
「太刀筋もわるくねぇ、弓もそれなりに扱えるようになったけどよ?どっかしっくりきてねぇ、雰囲気がわりぃんだよ」
「そ、そんなことを言われても…」
「おめぇの適性ってどうやって調べたんだ?」
「ガルドさんがギルドにある武器を片っ端から試させてくれてそれをみてもらってです」
「はぁ!?んな決め方してんのかよ」
「え?」
「ちょっとアリスに報告してぇ、いくぞ」
昼からの訓練をみてもらっていたザイードさんが驚いた後、車いすを物凄い速さで操作しながらアリスさんの元に向かった。
「なぁ?こいつから聞いたんだがよ」
「何をですか?」
「武器を片っ端から持たせてそれをみて適性をきめてんのか?」
「ギルドとこの国ではそれが習わしのようで適性をみれる資格がある方がやっているようです」
「はぁ~…そうなのか…」
「それがなにか?」
「ああ、俺の国とは違うからよ」
「そうなのですか」
「ああ、んでわりぃんだけどよ?俺の国、俺が居た部隊でやってた方法でもう1回調べてさせてもらってもいいか?」
「はい、構いません」
「わかった、おい」
「…はい」
「これくらいのたらいに水をいれてくれるか?」
「モネ、たのみます」
「かしこまりました」
「…かぁ~…こえぇなぁ」
「しかたありませんね」
「はっ!まぁな!」
氷のような冷たい目線でザイードさんをみていたモネさんがたらいを用意してくれた。
「これどうしたら?」
「両手で真っすぐ持ってくれ」
「は、はい」
「次に右足を前に一歩出して半身になってくれ」
「こ、こうですか」
「ああ、次はそのまましゃがんでくれ」
「はい」
そのあといくつかの動きをザイードさんの指示に従ってやった。
「オーケーだ、アリスのとこにもどんぞ」
「はい」
なにか、うんうん頷いて納得した顔をしたザイードさんと一緒にアリス産の元に戻った。
「どうでしたか?」
「ああ、わかったぜ」
「それで?」
「剣と弓は適正が多少ある」
「多少ですか」
「ああ、だからあながち間違っちゃいねぇが」
「他にもあったと?」
「ああ、っていうかむしろそっちが本命だった」
「それは?」
「無手と投擲だ」
「無手…ですか」
「ああ、こいつは素手での格闘、それと投擲の適性が高い」
「わかりました」
「剣と弓もやらせるが、次からは格闘術と投擲をメインでやらせてもらうぜ?」
「はい」
「それでよ?こいつの装備も見直さなきゃならねぇ」
「はい」
「こいつにはまず俺の国の格闘術をたたきこむ、その間に俺が必要そうだという武器と装備を見繕うから用意してくれ」
「かしこまりました」
アリスさんとザイードが話し合い、その後は格闘技の技を色々教わった。
「あはははははは!そんなことがあるのね!!!さすがだわタチバナ!!」
夕飯の時に今日の訓練の話をしたらフィーネさんが俺を指さしながら爆笑した。
「おおかた、そこにあった武器の中から選んだだけなんだろうよ」
「はぁはぁはぁ…だって!武器の適性を調べに行ったのよ?無手って!!!あはははは!!!」
「そ、そんなに笑わなくたって…」
「はぁはぁはぁ…ごめんなさい?ぷふっ!」
「もういいですよ…それよりタライをもっただけでそんなのもわかるなんて思いませんでしたよ」
「あぁ?俺の国じゃ7歳で適性を調べんだよ、だから体に負担がすくねぇ方法で調べるんだ」
「え!?じゃ、じゃあ今日、俺がやったのって」
「ああ、うちの国じゃぁ7歳児がやってる方法だ」
「ぶふぉ!あーっはっはっはっは!!タチバナ最高!!!」
ドンドンとテーブルを叩きながら涙を流して笑うフィーネさんと複雑な表情をしているカリン先生をみてため息がでた。
「左は手首がフリーになるようにグローブ型で右はこのままガントレット型でよさそうだな」
「そうですね」
「あとは脛もガードできるブーツがあればいい」
「わかりました」
2日後、アリスさんが持ってきた装備品をみたザイードさんが改良点をいいアリスさんが戻っていった。
「呼吸と力みでタイミングを読まれるな」
「はい」
「よし、今日はこの辺でやめておこう」
いつもより短い時間で訓練が終わった。
「なぁ、1つ頼みがあるんだが」
「なんですか?」
「俺なんかよりすごい格闘のスペシャリストがいるんだが、講師として呼んでいいか?」
「え?そんなすごい人…高いんじゃ…」
「いや、そこは俺が口をきいて格安にしてやる、どうだ?」
「ど、どうします?」
「タチバナ様がお決めになられるのがいいのでは?」
「そ、そうですね、タチバナさんが決めたらいいと思います」
「んー、タチバナ受けなさい」
「え?」
「いいから、ザイードたのむわ」
「ああ、わかった」
夕飯時に急に言われても…クエストと仕事の量を増やすか…ってかザイードさんよりってどんな怖いごっつい人なんだろ…。
「たのもー」
「はい、なにか御用でしょうか」
「ここはタチバナ宅で間違いないかしら?」
「はい、間違いございません」
「兄から言われてきたんだけど」
「兄、でございますか?」
「そう、ザイードっていう廃人」
「少々おまちくださいませ」
「はい」
「よぉ~、アンリ急にすまねぇな」
「それはいいけど、ほんとに車いす生活なのね」
「まぁな、ああ、紹介するぜ。俺を一瞬でこれにした男タチバナだ」
「え?」
「なんていう紹介してるんですか…タチバナです」
「え?あ、ああ…アンリと申します」
ザイードさんの妹さんはどこかオリエンタルな美人でスタイルも抜群だった。
「こいつはこんな感じだけどよ、格闘術のスペシャリストでな、無手とナイフを使うんだ」
「そうなんですね!」
「アンリ、こいつにおまえの格闘術を教えてやってくんねぇか?」
「え?なんでザイードを倒した相手におしえなきゃならないの?」
「訳がある…こいつには生きる目標をもらった借りもある…」
「意味わかんない!」
「とりあえず説明する…すまねぇがこいつの身元は俺が命にかけて保証する…だから説明させてくれ」
「わかりました、どうぞこちらへ」
アリスさんに連れられ2階の応接室にとおした。
「ここでご自由にお話しください」
「すまねぇな」
俺たちはザイードさん兄妹を二人にしてあげた。
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