第69話

「ゲリア君、ゲリア君!」


 ゲリアが気が付いたとき、側にはヒューイとシルメがいた。二人とも慌てた様子であり、その表情をみてゲリアはなにがあったのかを思い出した。


「ゲリア君、ユーファ君はどこにいったんですか!」


 ヒューイの質問に、ゲリアは青くなる。


「ブーアンちゃんの孫がリアちゃんに誘拐されて、それを助けるためにユーファちゃんが……」


 慌てるゲリアの返答は、滅茶苦茶であった。ヒューイとシルメは、顔を見合わせる。おそらく、ゲリアが何を言いたいかを察したのだろう。


「……人質を取られたんだね。うん、ユーファならば助けにいってしまうね」


 シルメは、納得したようだった。


 ヒューイは、愕然としていた。


「どうして……私たちに何も言わずに行ったんですか!」


 落ち込むヒューイの肩をシルメは叩く。


「俺たちが知れば止められると思ったんだろう。うん、確実に止めるね」


 シルメは、ユーファが寝ていたベットに手を置く。温もりは、もう失われていた。これはユーファがいなくなってから時間がたっているということである。


「ユーファがいなくなってから、結構時間が立っているね。ブーアンも姿が見えないし……これではユーファの跡を追えないね」


 シルメは困ったように呟いた。


「そうとは限りませんよ。この町は、森に囲まれています。森ならば、人が歩いた形跡が残ります。私が探ってきます」


 ヒューイの言葉に、ゲリアは顔を上げる。


 そうであった。


 ヒューイは、森のなかから手がかりを見つける天才であった。ヒューイならば、ユーファの足取りを掴むこともできるかもしれない。


「ヒューイ、頼むよ。うん、お願いだ」


 シルメの言葉に、ヒューイは頷く。


 ゲリアは、迷った。


 自分もついていくべきか、と迷ったのだ。ゲリアは、戦う手段を持っていない。それでも自分が付いていたのにユーファがいなくなってしまった、という罪悪感があった。


「……俺も行くよ」


 考えて、ゲリアはそう言った。


 よく考えての決断だった。何もできないと思ったが、罪悪感が勝ったのだ。


 シルメは、少し考えた。


「……じゃあ、ブーアンの孫を保護できたときに一緒に町に帰ってくる役目を頼むよ。うん、君にしかできないことかもしれない」


 シルメの判断に、ヒューイは不満げだった。


 だが、ヒューイは文句を言わなかった。


 それよりも、ユーファの捜索を優先したかったのかもしれない。


「俺も行くぜ」


 斧を背負ったユアも声を上げた。


「あなたは、町を守る仕事があるでしょう」


 さすがに、ヒューイは声を上げる。


 ユアは、微笑を膨らます。自分の役割も忘れているらしいが、そんなことはヒューイは許さなかった。


「ヒューイ、落ち着いたら戻ってきたらいいよ。慕ってくれる人がいるのは嬉しいでしょう?」


 シルメは、ヒューイの顔を覗き込む。


 ヒューイは、ぷいとそっぽを向いた。


「それよりも、早く行きましょう」


 ヒューイの足は、すでに森に向いていた。


 シルメとゲリアは、その後に続いた。


 森を歩くヒューイの足取りはよどみない。たびたび足を止めて、ヒューイは周囲を確認する。どうやら、ユーファたちが歩いた後を探しているらしい。


「ヒューイ、追いつけそうかい?」


 シルメは、ヒューイを尋ねる。


 ヒューイは、難しい顔をしていた。


「足跡の残りにくい道を選んでいますね。ユーファも思ったより体力が回復しているようです。足跡に休んだあとが少ない。少し、厄介そうです」


 シルメは、ふぅとため息をついた。


「どうやら、山の歩き方を知っているようだね。うん、これは少し厄介だね」


 ゲリアは、不安になった。


 山歩きを知っている相手に追いつけるかどうか、と。


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