第67話
ユアは、それからシルメとヒューイの朝の練習を見ることを始めた。二人の戦いを見ていたのは、ユアだけではなかった。町の子供たちも興味深そうに、シルメたちの様子を見ていた。ユアは家から引っ張り出してきた剣を持って、シルメの動きを真似していた。それに気が付いたシルメは、ユアに尋ねる。。
「それ、君の剣かな?」
ユアは、答えた。
「ああ、亡くなった祖父のものだ」
「手入れが悪いね。剣の手入れの方法を教えるよ」
シルメの言葉に、ユアは眼を輝かせた。
「こういうのって、鍛冶屋に預けないといけないと思っていた」
「定期的に鍛冶屋に持っていった方がいいのはもちろんだよ。でも、預けられないときには自分で手入れをすることも重要だよ。お爺さんに習わなかったのかい?」
シルメの言葉に、ユアは眼をそらせる。
なにか、まずいことを思い出している顔であった。
「……実は練習で剣を折り過ぎて、剣の手入れの方法とかは習わなかったんだよ。使い捨ての斧を使えって」
「ああ、だから君の武器は斧だったんですね」
シルメは、納得する。
ヒューイは、自分の槍を振り回しながらもため息をつく。
「自分の武器の手入れの仕方も知らなかったんですか……」
「だって、斧は使い捨てなんだぞ。良い重さだし」
ユアは、唇を尖らせて文句をいう。
ヒューイはユアの返答が気に入らないらしく、相変わらず槍を振り回していた。どこか不機嫌そうな様子のヒューイに、シルメは遠慮なく顔を近づける。そんなシルメの様子に、ヒューイは少し驚いていた。
「ヒューイ、もしかしてユアに嫉妬してる?」
その言葉に、ヒューイは眼を丸くする。
「なっ、何を言っているんですか!? そんな女みたいなことあるわけないでしょう」
怒るヒューイの頭をシルメはなで始める。
シルメの顔は幸せそうで、まるで飼い犬の頭をなでる飼い主のようだった。
「ヒューイは末っ子だからね。お兄ちゃんを取られて悔しいんだよね」
幸せそうなシルメに反して、ヒューイは顔をしかめた。
「その馬鹿げた妄想を今すぐ撤回してください!」
ヒューイは、シルメに槍を向けた。
ヒューイからは、隠されない殺気がにじみ出ている。シルメは笑いながら、ヒューイの殺気と槍を受け止めていた。ユアは、その光景を茫然としながら見ていた。なにせヒューイの槍は、ユアの目には見えないほどのスピードだった。
「ヒューイ、ユーファが倒れたから寂しくなったんだよね」
「だから、いい加減にしてください!大体、あなたはいつも人を年下扱いして……。あなたは、私のことを何歳だと思っているんですか!!」
ヒューイの言葉に、シルメは真顔で答える。
「五歳!」
「あなたと最初に出会った時より、小さいじゃないですか……」
ヒューイは、ため息をついた。
シルメは、相変わらず笑っている。
「まさか……ユーファ君も子供のように見ているんじゃないですよね」
ヒューイは疑いながら、シルメに尋ねた。
「ユーファは、さすがに十歳ぐらいかな」
子供の年齢である。
元婚約者なのに、酷い言い草だった。
「そのこと、ユーファ君には言わないであげてください」
彼女もヒューイと同じようにあきれるかもしれない。
シルメは、何故という顔をしていた。
「シルメは、知っていると思うよ。うん、知っていると思うよ」
気楽なシルメに、ヒューイはあきれるしかない。
「だからね。ヒューイ、君は俺を頼っていいんだよ」
その言葉を聞いたヒューイは、首を振る。
まったく頼りがいがなかったからだ。
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