第22話

 大人になったユーファの裸が、ヒューイの目に焼き付いて離れなかった。師匠との修行中にも焼き付いて離れない。先輩に相談すると、遊女を紹介された。


 非現実的なほどに豪奢な服を着た、女だった。


 その遊女と一晩遊べば、ユーファのことなど忘れると言われた。


先輩の言葉通りに一晩買った女は、子供の頃に見た仲間たちが襲っていた女によく似ているような気がした。獣のように鳴く、女。


成熟した脂肪が乗った、女の体。少なくともそれは、日の光の下で見たユーファの体とは全然違うもののような気がした。


 娼婦を抱いても、ユーファのことをヒューイは忘れられなかった。


 それどころか、娼婦と違うところを探して益々ユーファのことを忘れられなくなった。


 ヒューイは、どうして自分がそうなってしまったのかが分からなかった。


 それは、ヒューイの中に生まれた初めての感情だった。


 山のなかで父や仲間たちと暮らしていたときも、修行をしていたときも、生まれなかった感情であった。


 この感情をヒューイは、ローウェイに相談してみた。


 ローウェイは、一番若い弟子にそのような相談をされたことに驚いていた。


「そうか。ヒューイもそういう歳なんだな」


「そういう歳とは、どういう歳なんですか?」


 からかわれたような気がしたが、ローウェイはちゃんとヒューイの状態を説明してくれた。だが、その時のローウェイの顔は笑っていた。


「それは、恋ってやつだよ」


 恋と言われても、ヒューイには上手く理解できなかった。それは、今まで誰も教えてくれなかった感情だった。


 野盗の仲間たちも、父も、師匠であるローウェイも、シルメも、誰も教えてくれなかった。なのに、今のヒューイの中心にあるのは恋だ。


 理不尽だ。


 ヒューイは、そんなものに振り回されている。


 一方でユーファは、ヒューイのそんな様子など気が付いていなかった。シルメも、気が付いていなかった。二人は、ヒューイがいてもいなくてもいつも通りに過ごしていた。


 ヒューイだけが、自分の心に振り回されていた。


 その心は、槍を鈍らせるような気がした。


 ヒューイにとって、ユーファは恋する相手だった。だが、それ以上に優秀な魔法使いであり、よく手合わせするような相手であった。恋をしていれば、槍は鈍る。


 それは、ヒューイにとっては耐え切れないことだった。


 ヒューイは、自らの心を封印することにした。


 ヒューイにとっては、恋よりも槍のほうが大切だった。なぜならば、小さい頃からヒューイを守ってくれたのは槍の腕だった。今更、槍よりも何かを優先することなんてできなかったのだ。


 そうすれば、ユーファとも戦うことができた。


 ヒューイは、幸せだった。

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