第25話 優しい監禁?

 ソワソワ....ソワソワ


 そんな効果音がするような気がするほどシリカはあっちに行ったりこっちに行ったりとせわしない。何かを感じ取ったシリカはじっとしていられない様子だった。


「ジーニ様に何かあったのでは?」

「ん、シリカはジーニ様の心配しすぎ。ジーニ様は殺しても死なない」


 心配してうろうろしているシリカにララがつっこむ。何だかララの中のジーニの存在がとても人間ではないようになっているが。しかしシリカの心配は当たっていた。丁度その頃ジーニはローズの口づけをくらってクラクラしているのだった。


「ジーニ様の心配をするなら命の心配よりも別の事」

「別の事?」


 ララはいつも鋭く、感を働かせる。そしてその感はまるですべてを見ているように語る。


「ん、女の人」

「女の人って・・・え?女?」

「そう」


 ララの言葉にシリカは目をまん丸くする。まだ2歳前の幼児に女が付くはずがないと否定したいのだがデシウスの件もあるので口ごもった。


「ん、私の勘は当たる」


 ララは口ごもっているシリカを尻目にそう呟くのだった。そしてやはりララの感は当たる事が判明したのだった。






 そんなことがツヴァイ邸で起きているとも知らずにジーニはデシウス達と合流してシュミットで得た情報を開示するのだった。


「え!フローラが!?」


 僕の報告にソフィアが声を上げた。


 僕はシュミットから出た時すぐにソフィアさんの所に知らせに行ったんだ。護衛がいなくなった馬車はとても寂しい事になっているよ。女性3人の馬車旅何てこの世界じゃありえないんじゃないかな?。ってデシウスは悪の騎士みたいな格好してるけどね。


「フローラとは?」

「・・・ベンジャミン様の側室とのお子です・・」

「何?そんな話は聞いたことが無いぞ」


 デシウスが知らないって事は表立っていない子供って事?。あんなに可愛いのに・・・。


「ええ、あの子は・・その、加護なしで」

「ピアスはしてなかったよ」


 フローラちゃんは確かにピアスをしていなかった。ソフィアさんは僕の指摘にため息をついて話し始めた。


「そう、あの子は加護なしだったの。その為私がそのまま巫女だったんだけど」

「・・でもフローラちゃん。何か力がありそうだけど」

「え!?」

「それは本当ですか」


 御者をしていたソーアさんが声を上げた。あの位置で聞こえてたんだ。僕は頷くとソーアは感慨深く俯いた。


「ソーア・・何かあったの?」

「・・フローラ様のお母様、フェリア様がその・・・加護なしを生んだという事で追放されてしまったのです」

「え!、追放?」


 ソーアさんは僕を見て言いにくそうに話す。気にしなくていいんだけどね、まあいい人ってそういうの敏感だからしょうがない。


 でもフローラちゃんと一緒に追放ならわかるけど何でフェリアって人だけ?。


「フェリア様はとても体が弱かったのです。それで彼女を守る為ベンジャミン様の塔に監禁されているのです」

「加護なしを生んだという事で非難されることに耐えられないとベンジャミンが判断したわけだな」


 シュミットから少し離れた所に塔が立っているらしい。そしてそこにフローラちゃんのお母様のフェリアさんがいるという事か。


 加護なしってだけでそんなことになっちゃうんだね。


 僕はお母様とお父様の所で生まれられて運がよかった。シュミットでは加護なしへの当たりは強く貴族でも貧民街へと落されるらしい。フェリアさんは監禁されているが守られた形になっているね。


「でも、ピアスをしないなんて、どういう事かしら」

「・・・それだけ愛されているのね。私にはそんな事はなかったもの」


 ベンジャミンがフローラの事を可愛がっていた事を行った時ソフィアさんはとても元気がなくなり俯いていたんだけどやっぱりお父さんと仲良くしたいよね。


「大丈夫か?」

「・・うん、大丈夫だよ。でも少しだけ甘えさせて」


 デシウスの言葉にソフィアは俯いて答えた。デシウスはソフィアを抱きしめる。


 ソーアさんは横目で見ているけど・・・・・まったくもどかしいね・・。


「ちょっとちからづくでいけるかんじじゃないね」

「そうですね・・・。フローラの事もあります」

「それにしても・・・ベンジャミン様は何をしようとしているのでしょうか?」


 ソーアさんは心配している。


 これから戦争しようとしているわけなんだよね。シュミットを見に行った時は貧民街で兵士を集めていたし。


「戦争か、一番近いのはアルサレム。やっとアルサレムから戦争が無くなったというのに」

「そうだね・・・ん?」


 僕はデシウスの言葉に首を傾げた。あの男の言葉を思い出したのだ。


『他の国の人でやりますので』というフェイクの言葉だ。フェイクは確かにこう言ったのだ。アルサレムを滅ぼそうとしているフェイク、無関係とは思えないね。


「ジーニ様どうしますか?」

「アイ?」

「いや、このままベンジャミンを倒すだけでは収拾がつかないと思うのです」


 確かにベンジャミンを取り除いてもそれに代わる人が事を起こす危険があるね。


「じゃあ、ベンジャミン様に戦争を回避するように説得すれば」

「・・・しゅうきょうのだいひょうをせっとく・・・」


 僕には出来る気がしないよ・・・。自信なさげに俯くとソーアは手を叩き何かを思いついた。


「フェリア様に頼みましょう」

「え?監禁されている人?」

「そうです!」


 ソーアさんはらしくない明るい表情で御者席から馬車に入る。デシウスがすぐ御者を変わった。


 初めて機敏に動いているソーアさんに驚くソフィアさんがちょっと可愛い。


 ソーアさんは紙に何かを書き始めた。そして書き終わると僕へと手渡した。


「これをフェリア様に、分かってくれるはずです」

「・・わかりました」


 とても輝いた目でソーアさんが僕へと手紙を渡す。流石にこれは断れないよね。


 ということで僕はフェリアさんの監禁されているという塔へ向かう事と相成りました。


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