57話 イロモノとイベント内の村

 

 中坊が体操座りしながら頭を抱えている。殺してもいいけど話ぐらい聞いてみるか。吸血鬼とやらも気になるし。


「君、名前はなんだい?」


「グスッ、†漆黒の翼†」



 おいおい、ランキングでも見た中二病のやつじゃねえか。見た目は両目が隠れるくらい伸ばした茶色の前髪が特徴だし眼帯つけてたら役満だったな。



「これは助言なんだけど、あんまりそういう名前は後から後悔するからやめた方がいいと思うよ」


「これでも35歳なんだけど。グスッ」



 ???? いやいや、え?



「ちなみになんで泣いてるのか聞いてもいいかい?」


「夫の葬式を思い出したからよ」


「一応聞きたいんだけど、性別は?」


「女よ」



 ………………なるほどね。


 整理すると中二病丸出しの中性的な未亡人か。濃い、ものすごく濃い。俺の周りにはなぜか個性豊かなやつしかいないけど、メロスと同じくらい濃い。


 これ以上イロモノが集まるのも嫌なのでここは殺しておこう。そこまで強いわけでもないし。


 サクッとキャシーちゃんのナイフで喉元を掻っ切り、ポリゴンとなるのを見届ける。レベルは上がらないな。そろそろ上がってもいいと思うんだけど。







「片付いたし、お次へGO〜【サイドステップ】【バックステップ】」



 草原を真っ直ぐ南に進んでいく。他のプレイヤーはさっきの集まりにいたのか、またはその集まりにやられたんだろう。人っ子一人居ない。



「お?」



 村のようなものが見えてきた。シナリオとかを考えると村をフィールドの中心に置くはずだし……いや、推測で話を進めても意味は無いか。


 とりあえずフィールドの配置はスルーでいいとして、イベントを進めるには村人に話しかけるのがRPGの定石だしやってみよう。今まで問答無用でってた節もあるし、ここら辺で初心に帰るのもありだ。



 {村発見、情報が入り次第連絡する}


 {ん}



 報連相は大事。ネアとの協力イベントとして行動した方が効率もいいし。









 村に近づいてみたが、村の中には人もいるから廃村というオチじゃなくて安心だ。情報も少しはあるだろう。早速話しかけてみるかー。



「おはようございます、いい天気ですねー」


「あら、おはようございます。今日はいつものあの日だからかしらね。」



 適当におばさんに話しかけたが当たりのようだ。


「実は旅人なんですが、今日は何の日なんですか?」


「旅人はみんな変な格好なのかしら? 」




 あ、外套もお面もつけっぱなしだった。怪し過ぎるかな? まぁ、なんか外すのも負けた気分になるからつけたままいこう。



「いいえ、そんなことは無いと思いますよ」


「そう、今日は守護獣様感謝の日よ」



 守護獣様感謝の日か……全く概要がつかめないな。普通に聞いた方が早いかもな。



「どんなことを行うんですか?」


「祭りよー、祭り」



 あれ? 意外とのんびりしたイベントだった?



「そうなんですね、ありがとうございました」



 ……いや、そんなのんびりしたイベントを態々わざわざ2日間も行わないだろ、たぶん。自分で探った方が早いか。


 家の大きい所はお偉いさんが住んでるはずだし、そこに忍び込めばハッキリとどんなイベントか掴めるだろう。


「【潜伏】」



 1番大きな家は……あれかな。村自体は広くないから助かるわー。




 着いたけどどうやって入ろうか。入口は1つで窓も少ない。今までの豪邸やお城ほどルートは侵入は多くない。……人のいない所の窓しか無いかな。


「【忍び足】」


 足音を消した上で窓をそっと開けて侵入。


 リビングのような場所に人がそこそこ居るのでドア越しに聞き耳を立てる。




「ふん、純潔な乙女しか生贄にならないというのが腹が立つな。あんな美人を捧げるなどもったいない。俺の妻にしたかったんだがな……」


「村長、それはみんな同じですので我慢を」


「分かっとる」




 中年の男たちが数人集まっての密談って感じだ。話の内容的には生贄が捧げられて、生贄は処女で美人ってことぐらいしか分からなかった。


 いや、結構分かったのでは? 生贄ってことは守護獣とやらは生贄ありきのクソ仕様ってことになる。生贄の人を探して話を聞いてみるか。死に際のやつが情報を隠すとも思えないしな。





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