56話 お面のスキルと見かけ倒し



 自分のところに矢印がつくようになったのか。便利だな。レベルはダントツで1位。他にもいくつか1位がある。


 ……そうじゃなくてシロのことだった。うん、本当にまあまあって感じだな。ランキング入りしてるからトップ層ではあるんだが、その中ではそこそこだからな。



「とりあえずイベントを進めようか。別々で探索して何かあったら連絡する感じでどうかな?」


「ん」


「私はネアさん越しで?」


「フレンド登録してないからね」


「分かったわ」



 ……大丈夫かな?



「裏切ったらひどいことするからね」


「ひ、ひどいことって例えば?」

「……」


「さぁね、しなければいいだけだよ」



 シロは青い顔で聞いて、ネアが興味ありげに見てきたが、生憎あいにく思いついてないので適当にはぐらかす。



「なんか気になったんだけど、シロって姉妹いない ?」


「姉妹? いないけどどうしたの?」


「いや、少し顔の雰囲気が似てる人を知ってて……」


「誰!?」



 シロが興奮した様子で体を前のめりにして聞いてくる。そんなに気になるか?



「ハクっていう黒髪ポニテのボクと同い年ぐらいの子だよ。ゲーム内だから現実とは違うかもしれないけどね」


「会ってみたいわね……」



 何か考え込んでる様子だ。少し気になるが、あまり時間を浪費するのも嫌なのでスルーだ。


「じゃあ一旦解散!」


「ん」

「はい」







 二人と別れて歩き出す。朝で太陽があそこにあるから南に進んでるのかな? たぶん。



「【潜伏】」



 まだ木々で隠れやすいままだが、念の為にスキルも使っていく。木の上より地上の方が探索速度が上がるけどその分他のプレイヤーの妨害を受けやすいからな。


 それにしても全然いないな。あんだけ騒いでたら漁夫狙いでもっと集まりそうなもんだが。



「【サイドステップ】、【バックステップ】」



【歩術】のアーツでガンガン進むと森の端に近づいているようで開けた草原が見えてくる。俺の初期地点はここから東の方角だったはずなのでかなり広範囲が草原の可能性があるな。草原に出……



「皆の者! あの森に憎き吸血鬼がいる! 今こそ屈辱を晴らす時だ!」


「「「「「おぉー!」」」」」



30人はいる。吸血鬼に心当たりはないが、カルマ値悪寄りのフィールドでここまで団結してるってことは相当プレイヤーに喧嘩売っていた様だ。そして仕切ってるのはガキだ。中坊か?



「近づいているやつ、何者だ!」



【潜伏】してるのに気づかれた? 単純に向こうの索敵系スキルのレベルが上だったか?



「いやー、覗くつもりは無かったんだけどね」


「【人物鑑定】……な、何者なんだ!?」



 お面の【偽装】は抜けなかったようだ。取り巻きは既に武器を構えている。売られた喧嘩は買うのが流儀ってやつだろうし戦うか。


 折角の一対多の状況だし、まだ使ってないあのスキル使ってみるか。



「【紫狐の剃刀リコリス・スプレンゲリー】」


「ひっ」「いやっ!?」「ごめんなさい!」………………


「ある者は泣き叫び、ある者は崩れ落ち、またある者はショックで強制ログアウト。悪に染まりし者たちは皆等しく悲しい過去を抱えている……なんと哀れな……」



 俺の肩にポンと手を置きながら、男が急に現れた。



「誰だい? 君は」


「わたしの名前はパンプフッド、しがない吟遊詩人さ」



 とりあえず殺しておいた方が良さそうだ。気づかない間に殺されたら一溜ひとたまりもないしな。



「【ラビットスティンガー】」


「くっ」



 あれ? 強いのかと思ったんだが、ノーガードで受けやがった。……ポリゴンになった。強そうな登場の仕方しといてあっさり死ぬのやめてくれる?



「なんか釈然としないけど、残りも倒しちゃおうか。火よ波打て、〖ファイヤウェーブ〗火よ波打て、〖ファイヤウェーブ〗」



 人数もそこそこいたから2発打ったけど無事に殲滅できた。



「た゛て゛ひ゛こ゛さ゛ん゛〜〜」



 レベルがそこそこあるのか生き残ってるのがいた。仕切ってた中坊だ。さて、どうしようか。



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