第4話 探し物の発見と末路

 ククダン。もといククルガのダンジョンに潜ってから一時間が経過する。グリムレッドは現在二階層と三階層に通ずる安全経路を仕様。出来るだけ雑魚とのエンカウントを避け、深層へと潜る。

 度々、安全経路で地上へと上るクエスターと遭遇する。転移石という指定された場所へ文字通り転移する魔石があるがそれは少し財布が手痛くなる代物。買える奴らは大物をそこそこ仕留められる実力者である。

 「すまない、ちょっといいか──」

 グリムレッドが上るクエスターを足止める。四人一組のパーティーを探していると足止めた理由を説明する。

 「うーん、知らないな。三階層までしか潜っていないからそれ以上は」

 「……。そうか、足止めすまなかった」

 クエスターが上っていく。グリムレッドは潜って行く。

 三階層、四階層と潜りクエスターにばったり会って、見つけたら聞いて回った。だが望む答えは帰って来なかった。二桁目の数字が三となったぐらいにだろう、有力な情報がやって来た。

 「見たと、本当か?」

 「ああ見たよ、何か安全経路を使って五階層に~とか。俺たちなら楽勝~とかほざいてたね」

 八人組の冒険者集団クエスターパーティーのリーダーからの提供だった。

 彼曰く、実力的に初心者としては上々だが、性格的に痛い目にあうだろう、との事だった。

 これには呆れた。グリムレッドがため息を漏らし「ストッパーがいないパーティーだったか」と真っ黒な末路が浮かぶ。

 「協力に感謝だ。礼としてだが、これを」

 転移石を渡す。パーティーのリーダーが何か言おうとしたが「貰っとけ」と押し付けるように渡しその場を去り深層へと早足立ちの潜航を続ける。


 *


 五階層。そこには地上の世界の『町』と言い支えないエリアがあった。五階層と四階層を繋ぐ道からすぐ、目の前に出迎える。

 無人と化したそこは、ククダン内の一、二を争う広さを誇る。中継拠点基地として利用する計画も立ち上がっていたとか何とか。今計画は何処まで進展したか誰もそれは知らない。

 今はイレギュラーが出没している。いつ鉢合うエンカウントするか分からない。

 しかし、そのイレギュラーが今闊歩していた。

 「第五階層、此処に……」

 安全路から伝い到着したグリムレッド。目に入った石の町。全て石、石、石。家屋や木やらが石で出来ている。全て迷宮ダンジョン内から切り出されたと言われ、誰が何のためにしたのか分からない。そもそも、誰が隠っていたともなり謎な現象となっている。

 その為『迷宮ダンジョンには時に町在り、時に山在り、時に海在り』と謳い文句が生まれた。石の町もその一つだ。

 「生存はしていないか?腹に収まったか?それとも隠れて仲間だった死肉をあさって生き長らえたか?否、見捨てたか?」

 ぶつぶつ呟く赤騎士。石の町を散策し行方不明の冒険集団パーティーを探す。石の家屋の陰、中、空の水なしの井戸。

 時偶に四才児位の大きさをした大鼠や大蜥蜴が襲って来たが、混紡クラブ撲殺迎撃。返り討ちにあった獲物達から皮や爪を剥ぎ取る。

 「確かに此処何だよな」

 ぶつくさとほざきながら探索続行。

 さながら地上の町をぷらぷら、ぷらぷらとほつき歩く。

 「……っお」

 ぷらぷらと歩いていたら一軒の石家屋が崩れていた。大穴のおまけも付属していた。

 「……突然穴から現れたか。偶々掘ってる合間に繋がったのか」

 穴の持ち主は件のイレギュラー竜擬と推察。倒壊された辺りを調べ始める。砕けた石屑を退かし下敷きとなった物はないかと退かす。退かしていたら出てきた、

 「折れた、剣?」

 つばと柄だけの物が出た。刃は根元から折れており行方不明。長剣ロングソードなのか短剣ショートソードなのか判別が出来ない。

 「他に埋まってたりは……」

 瓦礫の山崩しを再開しようとしたが、急に鼻を突く臭いがした。

 穴から、だ。腐敗臭と現せばいいのか。直径は横に寝そべった大人4人分か1人引いた程の大きさの穴。深さは不明だが、臭いが強くなっていく。

 「辺境伯、すまない……石の建物を減らす事かもしれん」

 この場にいない辺境伯へ謝罪の意を唱える。

 ふー、と一息つく。そして崩れた石建物と穴から距離を取る。

 「お前さんかい?新人ルーキーは美味かったか?」

 ぐるりと振り向き穴の持ち主、竜擬レッサードラゴンへ問いかける。

 外見は前脚が長い巨大蜥蜴。黄土色の鱗はドラゴンのなり損ないと称される色。脇に使えも出来ない小さすぎる飛膜。火を吐く為の気管も有していない擬種レッサーカテゴリー。無駄に多い4つの目。短く退化した尾。

 だが初心冒険者ルーキークエスターには手は余る。大蜥蜴や大鼠、果ては自身より半分位の蟲を倒し実戦を経験するしかない。擬種これを倒せる等級クラスは準銅等級の経験が蓄積された集団パーティーか銀等級の成熟した集団パーティーまたは単騎ソロ

 特に単騎ソロで挑む者は人間意外の長命種にはイージーと言われている。無論、それは赤騎士にも当てはまる。

 「お前、美味かった?美味かったよな?人間ひとの味を覚えてしまったよな?“一種小空間ザフト”」

 魔法ザフトを唱える。彼の左右にそれが現れると躊躇なく腕を突っ込む。

 「光の君よ、我に帰還の加護を──」

 右の魔法ザフトから肉厚な長剣を、

 「──我らの闘いは御方への感謝にあり」

 左の魔法ザフトから分厚いに丸盾を。

 前者の台詞は光の君による祈りを。

 後者の台詞は亡き一族が光の君へ懺悔を。

 「すーっ…………殺るか」

 竜擬レッサードラゴンが穴から這い出るや咆哮を上げる。戦いの口火が切って落とされた。

 最初に仕掛けたのは竜擬から。右の長い前脚を使って襲う。グリムレッドは盾を前に構えこれをワンステップで避ける。そしてその前脚、人体で言う手首辺りを長剣で斬る。

 「ふんっ」と、一振を横に一閃ダメージを与える。

 ガシャン、丸盾のふちから大小様々な実体刃が伸びる。左手に魔力を流すと、それが回転する。

 追撃する左の長い前脚、これもワンステップで避けて丸盾回転刃を喰らわす。

 ぶち、ぶちぶち、がががが

 肉が引き千切れる音が盾から聞こえ切断。

 竜擬レッサードラゴンの左前脚の先切断。

 「腹か?何人いるんだ?いるんだぁぁ!!」

 ヴウウウウウ

 それが竜擬レッサードラゴンの最後だった。鼻を斬られ、舌を斬られ、剣で突かれ、回転丸盾で切り刻まれ。

 そして物言わぬ肉塊と化した。


 *

 

 戦闘終了後、胃袋から解体を始めた。解体はその場で、慣れた手つきで腹を捌く。内容物のの中、溶けかけのプレートが2枚見つかる。

 「4人の2人発見か。仲良く腹ン中にいてくれればよかったんだが」

 プレートと瓦礫の山を交互に見る。

 「……孤児院の約束、守れんかもな。あと減らんかったな」

 全部見付けにゃ気がすまんとぼやきながら残りのプレート探しをした。

 残り発見をするまで1日を費やし、早朝ククルガに帰還した。

 

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