アツい夏②

「なぁ、小夏。」

「ん~?」

小夏の二の腕をムニムニし続けながら、俺は小夏に言った。

「俺・・・・ノースリーブ、イヤだな。」

「え~?なんで?」

小夏は理解できない、という顔で俺を見る。

まぁ。

ムニムニしながら言ったんじゃ、確かに理解できないだろうけど。

でも、イヤなものはイヤなんだ。

たとえば、そうだな・・・・

「じゃあ、さ。小夏は俺がパンイチで外出歩いたら、イヤじゃないか?」

「パンイチ?」

言ってから思った。

さすがに、ノースリーブとパンイチじゃ大違いだ。

だが。

なに言ってんの~?

と、あっさり言われると思いきや、小夏は結構真剣に悩んでいる。


ちょいと、小夏さん?

冗談だから。そんなに本気で考えなくても。

さすがに、いくら暑くても、俺だってパンイチじゃ外出歩かねえし。


「ん~・・・・ギリ、公然ワイセツ罪じゃないかなぁ。」


しばらく考えてから、小夏はやっと答えた。

ああ、そりゃそうだろうさ。

いくら暑くたって、パンイチで外なんか出歩いたら、お巡りに捕まるぞ。

つーか、俺の例えが悪すぎた。

そう言おうと思ったのだが。


「でも、短パンなら・・・・」

「えっ?」

「いいかな。」

「・・・・マジで?」


小さく頷き、小夏は笑っている。

暑すぎて、ちょっとおかしくなったのだろうか?

ハーフパンツじゃなくて、短パンOKなのか?

思わず小夏の二の腕を離した俺に、小夏はさらに言った。


「●'zの稲●さんみたいにかっこよく着こなしてくれれば。」


やっぱり、小夏は暑さにやられてしまったらしい。

バカ言うなよ、無理に決まってるだろ。

誰と比べてくれてんだ?!

俺は、そこら辺の、どこにでもいる、平々凡々な、普通の男子高校生だぞ?

男の俺から見たってカッコいいと思うような、あんなスーパースターの名前を出すんじゃないっ!


言葉にはしなかったが、呆れ顔の俺を見て、小夏は俺の考えを読んだのだろう。

そのうえで。

小夏は、言った。


「わたし、●葉さん好きだけど、爽太くんの方がもっともっと、好きだよ?」


も~・・・・

いきなり何を言い出すんだ、俺の可愛い小夏はっ!

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