第48話 師匠と弟子登場

「やあホムラ、久しぶりだね〜。身長伸びたんじゃない?」


 ソファでダラダラと横になっている神ことミルレイヌ神が言ってくる。そちらは全く変わってないようで……


「どうもどうも、お!美味しそうなの食べてんじゃん」


 皿にこれでもかと盛られているポテチを取り頬張る。ここ何年もの付き合いで慣れてきたものだ。


「おい、それは私のお菓子だ!勝手に食うんじゃない!」


「いくらでも食べれるだろ!少しは、怠惰をやめて運動したほうが良いんじゃないですか?」


 なぜ太らないのか?ここ数年の疑問ではあるが、相手は神。自分の常識など全く通じない存在だ。


「あそこのジュースとって」


「自分で取れよ……」


 自堕落な神にホムラは、ため息をつくのだった。




「へ〜、この街を出て修行。頑張れ」


「軽いな。なんかこう、これから気をつけた方が良いとかこう、予言的なのない?」


 どこどこで何か起きるだろう〜的なのに期待してしまう。


「知らない。私が気になるのは、次のおやつだけ」


 聞く相手を間違えたようだ。流石にこの神に期待するのは間違いだった。


「おやつしか気にしてないのは、神としてダメだろ。お前も地上に落とされてしまえ」


「む、随分な言い草だ。そういえば、神器はいくつか集まったんでしょ?」


「まあ、何個かな」


 神器を持ってきてくれる人、というか元神がいるため松明に吸収している。


「順調に恩を売られてる。その内あの女にパクッと喰われるかも」


「やめてくれよ、本当にやってくるかもしれないじゃないか」


 現在は協力者みたいな感じだが、あの元神は危険人物だ。変態的な意味で。時々、セクハラを行ってくるため余り会いたくはない人物である。


「あいつを倒せるくらい強くなれば良い」


「まあ、そうだな……」


 どうやってなるねんって感じだが、今後の自分に期待することにしよう。



 特に話すこともないので、帰ることにする。当分は会えないかもしれないが、また来ることにしよう。


「じゃあな、元気でってのも変だが」


「うん、じゃあね。あ、でも他の街の教会とかでお祈りすれば会えると思う」


 意外とまたすぐに会えるかもしれない。



「あ、そういえば他の神が転移者を送ったってよ。後、神器を集めてる変な集団もいるみたい。んじゃ」


「おい!大切な情報をさらっと言うんじゃない!」


 ホムラが声を上げた直後、意識が戻り教会でお祈りしていた。最後の最後で気になる情報を出して来やがった。何も教えてくれないよりはマシかもしれないがこちらにも質問とかさせて欲しいものだとホムラはため息をつく。


 シスターにお礼を言って、教会を後にする。シスターといえばハーヴェリアも元気でやっているらしい。よく自分宛に手紙が届く。


「新たに送られた転移者に、神器を集める集団。うん、関わりたくない」


 良くない匂いがするなと、顔を顰めるホムラ。こういう良くない予想だけは当たるのだ。一応は、教えてくれたことに感謝しつつ帰るのだった。






 新たな師匠が来るまでの間も旅に出る準備を行いつつ、魔法の練習も欠かさない。現在の目標は、エルメティア先生のやっていた《精霊化》である。早く習得してみたいものである。


 あっという間に1週間が経過して、新たな師匠が我が家にやって来た。果たして、どの様な人物なのだろうかと楽しみに出てみると、まさかの知ってる人だった。


「よっ!王都の魔法学校で会った時ぶりだな。いや〜、背が伸びたなー。子供の成長ははやいってもんだ!」


 鍛えられた見事な身体付き。雑に切られた髪。陽気な話し方。

 王都の魔法学校で会った、父様が団長の頃の部下であり現在は冒険者をやっているスズール・フェイルだ。


「お久しぶりです、ということはもしかして?」


「ああ、彼女がホムラの師匠だ。実力に関しては本物だ。よく学ぶんだぞ?」


 実力に関してはって、他に問題があるやつだぞ。


「よろしくお願いします!」


 挨拶はしますよ。自分は、無礼なものではない。


「おうよ、もう1人の弟子と同じように強くしてやっから!」


 バンバンと背中を叩いてくる。いてぇ。


「スズール、とりあえず話したいことがあるから上がってくれ。ホムラは、荷物の準備は大丈夫か?」


「はい、父様。大丈夫です」


 荷物は全てアイテムボックスの中だ。これだけで、旅はかなり楽なものになる。 


「それなら、外に私の弟子がいるから挨拶してきな!なかなか気難しい奴だけど、まあそのうち仲良くなれるだろ」


 スズール師匠は、簡単に言ってくれるが自分はコミュニケーションにそこまでの自信がない。上手くやれるか不安になる。


 とりあえず、外に向かうことにした。


 玄関を出ると、庭には腰に剣を刺している少女がいた。


「あれ?」


 またもや知っている顔だ。一度会った時は、ドレス姿でありとてつもない美しさを放っていた。それも性格を知ると驚くものだが。

 今は、動きやすい装備をしているが、高価そうなものに見える。そう、見間違えるはずもない。


「暴力お嬢様じゃないですか!久しぶりです」


「な!なによ、その口の利き方は!私の拳でぶん殴ってやる!」


 そう、スズールのもう1人の弟子としてそこにいたのは、ホムラが初めて参加して誕生日パーティの主役だったエミーシャ・レイヴェンクルであった。

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