第47話 次なる師匠は

「それではホムラくん。またどこかで会いましょう!ホムラくんのこれからの成長を楽しみにしています」


「はい、先生!いつか宿題も終わらせてみせます」


 卒業試験の次の日、エルメティア先生はホムラの屋敷を旅立つこととなった。これからまた、他の貴族などの家に行って魔法を教えることになるだろう。


「近くに来た際はぜひ寄ってください。いつでも我が家は歓迎してますので」


 ローレイラが答える。ここ数年暮らしていたのだ。ホムラにとっても他の屋敷の者にとっても家族のように感じているだろう。


「ええ、その時はぜひ」


 そう言いながら、ゆっくりと浮かび上がる先生。


「先生、さようなら」


「はい、ホムラ君。お元気で!皆様も、健やかにお過ごしください」


 風が吹き、先生が空に舞い上がって行った。その姿をホムラは見えなくなるまで眺めている。


 やはりいざ先生が帰ってしまうとなんだか寂しく感じる。


「お兄さま、泣いてる?」


「そうかも」


 5歳になった妹に言われるとどこか恥ずかしく感じる。精神年齢は高いが、こういうのにはなかなか弱いのだ。


「なに、また会えるさ。それにホムラ、お前は2年後に帝国との交流戦もあるんだ。その時は、お前の愛しの先生も見にきてくれるぞ?」


 愛しのってなんだよ!確かによく甘えてはいましたが、こちらもお尻とか触られてますからな。


「そういえば交流戦は2年後になったんでしたね。国で5人代表して出るとか」


「ああ、15歳までの子だな。エミーシャ嬢も、ギリギリ16歳になってないから出場するそうだ」


「げ!あの暴力系お嬢様か」


 そんな人もいたもんだ。もう4年も前なので記憶が飛びかけていた。


「まあまあ、そう言うな。彼女も、剣術などを鍛えているらしい」


「お兄さまとどっちが強い?」


 妹は興味津々のようだ。


「もちろん、兄様が強いぞ!」


 頭を撫でながら、ここは威厳たっぷりに答えておく。妹には格好いい兄貴でいたいものだ。


「ははは!そうだな。それはそうとしてホムラ!お前には、魔法以外の修行も受けてもらうぞ。来週にはその師匠になる人がやってくるからな!」


 またもや急だ。事前にお知らせして欲しいものだが……まあ魔法の練習するくらいだから暇と思われてるかもしれないが。


「しかし、魔法以外ってスキルとか持ってないですし……修行になりますか?」


「ああ、ホムラには少しでも多く自衛の術を身につけてもらう。もしもホムラの魔法の腕が知れれば、間違いなく帝国に狙われる。交流戦では当然ながら目立つだろな。この世には魔法を無力化する道具なんかもあるから、魔法に頼りきって捕まるなんてこともあり得る」


「魔法を無力化だなんて……、僕終わるじゃないですか」


 そんな方法もあるのか、随分と汚い。


「だから、魔法が無くても切り抜けられるような技量を身につけるんだ。新しい師匠も優秀だ。まあ性格に難があるが」


 いや、性格に難がある奴を採用するなよ。


「またエルメティア先生みたいに住み込みになるんですか?」


「いや、この領から出て他の場所で修行を行うそうだ。彼女は、もう1人弟子を連れてるらしいから、その子の修行も兼ねてらしい」


 またも師匠は、女性のようだ。これはホムラ、頑張っちゃうぞー!エルメティア先生が怒りそうな気がするが。


「弟子がいるんですか……仲良く出来るかなぁ」


 仲良くならないと気まずい空気になってしまう。





 エルメティア先生を送り、父様と話したあとは街をブラブラと歩いている。10歳ということで、街を普通に歩いても両親にも何も言われない。前は、メイドさん達を伴わないといけなかった。


 レーミング領の人達は優しいので、攫われたりなんかはない。悪い人がいてもホムラなら余裕で撃退できるが。


 来週には、この街を出発することになる。唐突だが、仕方あるまい。


「堕落神にも挨拶しに行くか」


 ミルレイヌ神のことだが……、時々は会いに行くようにしている。特に他愛ない話をするのがほとんどだが、時々お菓子とかをくれたりする。


 もしかすると、街を出るにあたりいいアドバイスをくれるかもしれない。期待はせずにホムラは教会に向かうのだった。

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