第5話 レインコートの死神
この世は無秩序で破壊的で固く脆い。
残酷で混沌とした、それでも残酷性中の美しさを謳う。
それで、まるで自分が神のように鉄槌を下す。
夕陽が闇を連れて暮れていく。
遮った夕陽。
オレンジ色に染まった。
男。国籍は多分、日本。
黒のレインコートを着て、深くフードをかぶる。
滴れ落ちるのは誰かの血。
左手に銃を持っていた。
男の身体は満身創痍だった。
足取りは重い。まるで大きなモノを背負ったかのようにズルズルとそれを引きずって歩いていた。
これは俺が殺してきた奴らの魂の重さ。血まみれの上に男はたっている。
自分が何処からきて何処に向かうのか解からない。
錆びれたカーブミラーに映った自分の姿。
とても滑稽に見えた。
死にぞこなった痩せた野良犬のようだ。
だが違うと男は言う。
その痩せた野良犬は立派な傷跡が残っている。
生に固執し争って生きる野良犬。
俺にはそれはない。いつ死んでもいい。
そうして独り、死に場を探していた。
ポケットからうなる電話。
画面には愛しい人の名前が浮かんでいた。
「夕映」
ゆえ。
電話にでた。
「・・・・・?・・・・・。」
雑音が交じり上手く聞き取れない。
「・・・・愛している。」
「・・・・今から帰るよ。」
男は電話を切った。
ズドン。背後を取られた。弾は貫通した。
「この死神」
男は銃口を走り去る男めがけてトリガーを引く。
ばちん
弾は男の頭を貫通し、倒れた。
黒のレインコートから溢れる血。
男は携帯を取り出し、メッセージを送る。
(雨が止むまで待ってて)
送信した。血を垂れ流しながら、歩く。
「そろそろか、」
路地裏に身を隠し、銃を頭に突ける。
カチ。
弾切れだ。
「でも、もういいか、」
携帯がうなる。
(雨なんて降ってないよ)
(今やんだ。今から帰るから)
(我愛称・・・・。)
男は送信して手から携帯を落とす。
瞳孔は暗く、光を失った。
携帯がうなる。
(我愛称。)
返信はなかった。
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