第21話 数字

 その自動販売機は、同じ数字が4つ合わさるともう一本もらえるというよくあるものだった。最近ではあまり見なくなったが、里中の住んでいる地域では、まだこのような自動販売機がある。


 仕事が終わり、駐車場近くの自動販売機でコーヒーを買おうとした時だった。里中は、小銭を入れブラックコーヒーの缶の下にあるボタンを押す。ボタンを押すと、電子音が鳴り、小銭投入口の隣にある小さいモニターに赤い4つの数字が高速で移り変わる。


 一番目の数字が7になった。続いて二番目の数字も7になり、三番目の数字も同じく7になった。


(四番目も同じ数字になる……か……?いや、大抵こういうのは当たらないの普通だ。)


 次第に、電子音の鳴る間隔が長くなっていき、四番目の数字が4、5、6とゆっくり変わっていく。


(お、7になるか?)


 四番目の数字が7になると、7777となった四つの数字が点滅する。大当たりだった。


「いよっしゃあああああ!」


 思わず里中は、声を挙げてしまった。ハッと気づいて、辺りを見回すが、誰もいなかったので、里中はホッと安堵する。


(最近ゾロ目、特に7ばかりの数字をよく目にするけど、これいいことなんだよなあ。)


 里中は、エンジェルナンバーというものがあることを最近知ったのだが、最も好きな数字が7だった。他の数字にも良い意味を持つ数字はあるにある。しかし、里中はどうも7以外の数字は、あまり興味がなかった。


「もう一本買ってみるか。」


 既に缶コーヒー二本を鞄の中に入れたというのに、里中は小銭入れを取り出しもう一度投入口に入れた。またゾロ目になるとは限らないのに。


 里中は、先ほど押したものとと同じボタンを7回ほど押し、数字が揃うのを待った。電子音がまた鳴り始めた。


 モニターに映る一番目の数字がまた7になった。


(お、これはもしかすると、もしかするかもしれ……、あれ?)


 一番目の数字をよく見ると、先ほど大当たりになった7の数字よりも縦に細長いことに気づいた。


(気のせいかな?)


 しかし、四番目の数字が7になった時、明らかにその右側にまだ数字が並ぶぐらいのスペースがあることが分かった。


(故障かな?)


 そんな考えを打ち砕くかのように五番目の数字が表示され、7になった。続いて六番目の数字が表示され、それも7になった。


(う、うそ~ん。まさか七番目の数字が来るのか?来るのか?)


 予想通り七番目の数字も表示された。そして、七番目の数字が7になった。


「いよっしゃあああああ!」


「やったな!あんた!」「私びっくりしちゃった!」気づくと、彼の周りに老若男女の人だかりができていた。


「いやあ、それほどでも。」里中ははにかんで頭を掻いた。


 しかし、電子音は鳴りやまなかった。八番目の数字が表示されていたのだ。


「え?なんで?」


 八番目の数字が7になると、自動販売機の取り出し口から大量の缶コーヒーが波のようにあふれ出し、彼を含んだ大量の人だかりが缶コーヒーの波に飲まれた。


 阿鼻叫喚の地獄絵図が見られたが、次の日には皆命に別状はなかった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

バピカーン 枝林 志忠(えだばやし しただ) @Thimimoryo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ