第12話 ヒカリへ

ヒカリへ 


こんにちは。愛美です。

今、将太さんのアパートへ向かっています。今夜、晩御飯を作ります。

後ろの座席には、ホットプレート、お肉、野菜などの食材とおむすびが入ったクーラーボックス。

そしてお泊まりセットとあの日のぬいぐるみ。

あの日から一週間後、「デ・ジャブ」で将太さんと会いました。

将太さんが先に着てて、携帯を見ていました。何かな~と思って後ろから覘くと、メールでした。

将太さんはそのメールを見せてくれました。姉さんと呼んでいる女の人からでした。


「将太君 返事が遅れてごめんね。東京に出張してて缶詰だったの。

 おめでとう。彼女出来たのね。良かったね。離さないようにね。後はもうないわよ。

 私、来月から東京本社勤務になるから丁度良かったみたい。

 何とね、来月から役員だって。恐ろしい世の中よね。経理のおばさんが監査役だって。人材不足極まれり。

 これも将太君のおかげだよ。50過ぎて女も人生も諦めかけたおばさんの勇気に、満面の笑みと全身の行動で

 答えてくれたからね。楽しかったよ。食事もあれも。気になってた事全部出来たよ。ありがとう。

 心も外見も年々若くなったしね。人からの40代かと思ったと言うお世辞もまんざらじゃないわ。

 最後に、将太君を選んでくれた彼女に伝えておいて。

 将太君は、面倒臭がりで自分の世界に直ぐ入っちゃうけど、笑顔を見せると戻ってくるからねって。

 じゃ、がんばってよ。彼女を離すんじゃないよ。大人と子どもの市松模様の将太君。


 ありがとう。さようなら。

姉さん こと 月島愛子


ジェラシーも少し、感謝も少し、ってとこでしょうか。笑顔だって、、、。小出しにしようかな。

で、その後にちゃんと食べてるって聞いたら、「今度、飯つくって」って言うから

「いつが良い?」

「土曜日、仕事だけど早く帰る。」

「わかった。」

「でも、やかんと小さい鍋しか無い。」

「わかった。持っていく。買って増やさないとね。」

「……ん、それより引っ越ししようか」

「え、どこへ?」

「う~ん、マンション。買うか、借りるか。あっ、貯金ねぇわ、俺。」

「……」

「それより、駐車場、車置く所を借りないといけねえな」

「……」

「金がいるな。残業、増やそう。ただし土曜日は無し。うん、そうしよう」

「将太さん。戻ってきて」とメモ書き。微笑みを添えて。


「そう言えば ガラスって何?」

「ガラス?」

「あん時、ガラスにはならないって」

「あ~、硝子。”聲の形”の女の子。しょうこ。」

「ん?、どういう事?」

「いずれ、教えてあげる」

「う~ん。判らん。」


将太さんは簡単な言葉は手話で、判らない時はマスクを外し声にして話し、私は手話とメモ書きで会話。

込み入った話はライントークだけど、将太さんのトークはひらがなばっかりでチョット読み辛い。

手話、読唇、ライントークとメモ書きという、ハイブリッド会話で再スタートは始まりました。


そう言えば、「デ・ジャブ」のマスターが将太さんへ怖い顔で話しかけてました。

マスクをしていたので、将太さんに後で聞いたら、

「愛美を泣かせたら、お前をシメる。覚悟しておけ」と

「披露宴はここでしろ!他の場所でしたら、お前をシメる。覚悟しておけ」

一つ目は「ちょっと嬉しいけど、将太さんが可哀そうなので、ダメ」

二つ目は「まだ、早いです。どうなるか分かんないし、、、」

とマスターに伝えてって頼んだんですが、将太さんは二つとも”承知した”と答えたそうです。

将太さんと口喧嘩出来る種が出来たと思いました。


あれから、お父さんとお母さんに「交際を申し込まれた」と伝えたら、「今度、連れておいで」と言われました。

今夜、将太さんに伝えるつもりです。でも嫌な予感がします。

「俺、スーツ一つしかねぇ、買わねえと。皮靴も要る。」と言いそうです。普段着で挨拶だけで良いと思うけど。

今朝、晩御飯を作りに行くと伝えたらお母さんが手伝ってくれました。

お母さんと台所に立ったの久しぶり。中学生の時のクッキー作り以来かも。

時々、家族の夕食を作る時もあったけど、お母さんはソファーで座っていただけだったから。

お父さんはリビングでウロウロソワソワしてました。「お泊りになると思う」と伝えたらお父さん、何か言ってました。

「嫁入り前の娘が、、、」みたいだった様ですが、しょっちゅう遊んで外泊していた娘に向かってって思ったから放っておきました。放置親父。

お母さんが「ちゃんとしなさいよ。持ってる?」って、右手を丸めて上下したのを見て恥ずかしくなり、「持ってる」と伝えかけて「買っていく」と伝えました。

わたし、乙女に戻っていました。


もう一つ嫌な予感がします。

「早く来れたら、掃除頼める?」と将太さん。

掃除は良いけど、掃除機とか雑巾とか無いかもしれないとさっき思ってしまいました。しゃ~ない、無ければ買います。


そんな将太さんですが、この先の事、楽しみにしています。

私に対し特別な事しようとせず、普通に接してくれるみたいです。将太さんなりに。

私は私で生きていく。でも隣には何時も将太さんが居る。嬉しい時も悲しい時も隣に居る。、楽しい事も辛い事も一緒に出来る。

「俺の方が邪魔になるかもしれない」と将太さんは言ったけど、絶対そんな事はありません。

きっと、無いと思います。多分、無いと思うけど。そうしないように頑張ります。


そろそろ将太さんのアパートに着きます。

では、みなさん。色々ご心配おかけしましたが、なんとかなりそうです。

また、お会いするその時まで、ごきげんよう。



あとがき


 少し前、YOU TUBE で「僕が君の耳になる」HAND SIGN のMVを良く見ていました。

足立梨花ちゃん 可愛い。は置いといて、曲が良い。スッと耳に入り、口ずさめる。

手話コンサートの後の「見たい?、私の好きな人。」でカメラ自撮り画面を向けるところでは不覚にも泣いてしまいました。

老人性涙腺過敏症です。(そんなもん、無いわい!)


で、そのYOU TUBE動画の主人公たちの様に上手く行かなかったらどうなるだろう?。

思い込み、勘違い、自分勝手、面倒臭がり。そんな人の方が多いかも?。

妄想が広がり、たいへん失礼かとは思いましたが書いてみました。


ろうあの方と健常者の新しい映画も制作され、2021年5月に上映されるそうです。

YOU TUBE MVも映画もこの小説も、同じ方向で、目標も同じだと思っています。

進む時間、ゴールの時期が違うだけで対極だとは思っていません。そうしておいてください。


そうそう、MIWAさんの「ヒカリへ」をバックグラウンドミュージックとして『 ヒカリへ 』を改めてお読みになってみてください。

疾走感とか、歌っている内容がリンクしていてお勧めです。

では、途中で滞留している作品が呼んでいますのでこの辺りで。またお会いしましょう。


やまと やじろべえでした。

ごきげんよう。

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