第5話 キミに決めた☆
1年2組学級委員最初のお仕事は、挨拶と委員会決めとなった。
「なあなあ、自分。先にいく?」
「あ、うん」
「こういうんはレディファーストやんな」
「……」
もうどうでもいい――微妙な笑顔のまま、はなえは黒板の前で挨拶をする。
「橋本はなえです。学級委員は初めてですが、頑張ります。よろしくお願いします」
はなえが姿勢よく挨拶し、ペコッと軽く一礼すると、クラスは再び温かい拍手を送ってくれた。はなえは、内心ホッとしながら誠人を見た。
すると誠人は、それをはなえからの合図と受け取ったのか息を大きく吸う。
「長谷川誠人、一曲歌いますー!」
「は?」
教室中がポカンとする中、誠人はいつの間に用意していたのかスマートフォンを出して教卓に置いた。爆音で流れるのは中学の時から流行っているアニメソング。モンスターがポケットにインするアニメのアップテンポなイントロに教室が盛り上がる。
誠人がノリノリで歌い出す。
「ねえ、まだまだま――!」
「やめんかい」
担任が軽く誠人の頭をはたく。ドッと沸くクラスメイトたち。誠人は「ちぇー」と言いながら、スマートフォンから流れる音楽を止める。
「ということで長谷川誠人です! よろしゅー」
クラスメイトが口々に「どういうことやねん」「アンコール!」「信じられへん」と騒ぐ。誠人は笑いながらクラスメイトに向かって両手を出す。
「はいはい、拍手ー」
パチパチパチ。
「もっともっと!」
パチパチパチパチ!
はなえも思わず拍手する。すると、誠人は両手を広げて煽る。
「はい、ワン、ツー!」
――パン、パパ、パンッ!
誠人の身振りと言葉に合わせてクラスメイトの拍手がリズムを打つ。はなえは、両手を重ねたまま固まっているが、クラスメイトたちは盛り上がっている。誠人は、真面目な顔で言う。
「おーい、自由時間ちゃうぞー」
突然の担任のモノマネに生徒たちはもちろん、担任すら笑っている。誠人は、こほんっと軽く咳払いをしてから生徒たちに向かって言う。
「続きましてー委員会決めまーす。早い者勝ちやでー!」
図書! 体育! と誠人が委員会名を読み上げるたびに、多数の立候補者が手を挙げ、1年2組の委員会決めは、おそらく学内最速で終わった。
はなえは、黒板に立候補者の名前をチョークで書きながら呟いた。
「なんなの、このクラス……」
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