第51話 元気になったジュジュ
「いや、本当に元気なんだが……」
むしろ体を動かしたい気分である。
昨日、久しぶりに本気で剣を振ったこともあり、今日も剣を振りたい。
そんな俺の思考を読んだかのようにオンディーヌが言う。
「剣の練習なんてもってのほか。買い物も私に任せて」
「グレンさまも、我と一緒にのんびりするといいのである!」
「……じゃあ、そうするか」
そういうと、シェイドは本当に嬉しそうに尻尾を振った。
朝ごはんを食べ終わると、オンディーヌは帰って行く。
そして、俺はジュジュを抱っこしたまま、シェイドと一緒にベッドで横になった。
「二度寝するのだな。グレンさま」
「まあ、たまには、こういう日もあっていい」
窓から差し込む朝の光が暖かい。
お腹の上にはジュジュが乗り、隣にはシェイドが横にいる。
ジュジュもシェイドも温かい。
「……じゅぴぃ」
ジュジュの寝息を聞いている間に、俺も眠りについたのだった。
………………
…………
……
「ぎゅっぷい! じゅじゅじゅ!」
「ぁぅぁぅ!」
小屋の中の騒がしさに俺は目を覚ました。
いつものように、ジュジュが俺の上に乗っていなかった。
「お腹が空いたのか?」
そう言いながら体を起こす。
ジュジュはベッドの端にいるのだと思ったのだが、居なかった。
「ジュジュ?」
「じゅじゅじゅ!」
小屋の端の方にいたジュジュがよたよたと歩いて、こっちに来た。
さほど素早くないが、ジュジュは自分の手足で歩いている。
「ジュジュ……歩けるようになったのか」
「じゅぅ!」
感動で目頭が熱くなる。
歩けなかったジュジュが、自分の手足で元気に歩いているのだ。
「呪いが解けて良かったな」
「じゅ!」
「ジュジュさまが歩きたいようだったので付き合っていたのだ!」
ジュジュのすぐ後ろにはシェイドが付き添っている。
さきほど「ぁぅぁぅ」と鳴いていたのはシェイドだったらしい。
赤ちゃんが勝手に歩き回ると、色々と危険がある。
シェイドのような大人が付き添ってくれると非常に心強い。
「シェイド、ジュジュを見ていてくれてありがとうな」
「お安いご用なのである! 我は感覚が鋭敏であるから、ジュジュさまが起きたらすぐ起きるのである」
「そ、そうか。凄いな」
朝は、ジュジュが起きても、ジュジュの尻尾を咥えて、お腹を天井に向けて爆睡していた。
きっと、あれは、特殊な状況だったのだろう。
それほど、シェイドも疲れていたということに違いない。
「ジュジュ、手足は痛くないか?」
俺はベッドまで移動してきたジュジュを抱き上げる。
「じゅー」
本当に嬉しそうに、元気に尻尾を振っていた。
ジュジュは今まで歩けなかった。
だからこそ、歩けるのが凄く嬉しく、楽しいのだろう。
「じゅっじゅ!」
「お腹が空いたのか?」
「じゅ~」
「朝あれだけ食べたのに、もうお腹が空いたかー」
「じゅ!」
沢山食べることができるのは良いことである。
俺はジュジュを抱っこしたまま、台所に向かう。
「そういえば、ジュジュ。トイレはいいのか?」
「じゅ!」
「トイレならさっきしていたのだぞ?」
「俺が寝ている間に?」
「うむ。我がトイレに行こうとしたらジュジュさまが教えてくれたのだ」
昨夜、シェイドにはトイレの場所を簡単に教えてある。
だが、ジュジュはシェイドが知らないと思ったのだろう。
シェイドが、初日の自分のように、ベッドの上でしようとしていると考えた可能性もある。
赤ちゃんなのに、シェイドにトイレの場所を教えてあげるとは、面倒見がとても良い。
「我に教えてくれるついでに、ジュジュさまは自分でトイレをしていたのだ」
「すごいな。ジュジュは偉いなぁ」
「天才なのである!」
「じゅ!」
手足が動くようになって、すぐに自分で出来るようになるとは。
賢いにもほどがある。
目一杯、ジュジュのことを撫でてやった。
「そういえば、精霊のトイレ回数は少ないのか?」
「む? どうしてそう思ったんだ?」
「シェイドがトイレしたのって、昨日から数えて一回だけだろ?」
「我、というか精霊は効率が良いからなぁ」
「効率? 消化効率的な?」
「食べ物を魔力に変換する効率が非常に高いのだ。肉の体で顕現してはいるが、あくまでも精神的な、魔力的な存在であるしな」
「そんなもんか」
その割には、ジュジュはひどい下痢をしていた。
そのことを尋ねると、
「呪われていたせいで、変換効率が著しく低下していたのだろうな。本当にお辛かったであろう」
「じゅ!」
だからこそ、呪いの解けた今、食べるご飯が美味しいのかも知れない。
そんなジュジュとシェイドのためにお昼ご飯を用意していると、玄関の扉がノックされた。
「開いてるぞ」
「おじゃまするよ」
そういって、入ってきたのはヴィリだった。
その後ろにはオンディーヌも付いてきている。
「おお、丁度良い。昼ご飯でも食べていくといい。果物とゆで卵しかないがな」
「そんなことだろうと思って、お昼ご飯は用意してきたよ」
そういって、ヴィリは大きめのバスケットを掲げて見せてきた。
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