21 journey
protagonist: architect - sentinel - scripter:
僕はただひとりだけの旅客機から、星を繋ぐ旅を始めた。
雲の上を飛ぶ客室に一人だけの飛行機の中で、僕はナカモトと黒沢さんとで話していたときを思い出した。
黒沢さんは言った。
黒沢「君はこれから、各国を巡る。現地諜報機関、つまりほとんどの場合は国と連携の上で、この金融諜報機関システムをさらに拡張するための任務を続行する。第一目標は、今このシステムを最も必要とする、分断されかけ、犯罪の温床となりかけているアメリカ。そして、法規制を厳しくし続けてなお、格差の広まるEU諸国。最後に、数々の非対称性による弾圧が進む独裁政権。君は世界から罵倒に近い評価をされながらも、民主主義の行動を阻害する全ての世界に融け合い、
主人公「ええ、わかっています。そのために僕はあなたがた
黒沢さんは肩をすくめた。
黒沢「本当にいいのかい?」
僕は頷いた。
主人公「僕が、世界を書き換えました。だから全てを返すために、真の富に、星に仕えるべきなんです」
黒沢さんは、遠くで笑い合う彼らを見つめる。
黒沢「それが、たとえ君の先生や先輩たちを悲しませるとしても?人類史上最強にして、最悪の
僕は頷いた。
主人公「通貨システムを持っていたとしても、僕は結局、神ではありません。きっと暗号通貨の時のように、全てを救えず、間違ってしまう。だから、この星の
そんな強がりを言ってはじめにたどり着いたアメリカでは、オバマが本で書いていたような分断が、さらに加速しつつあった。
特に、日本で僕が押し付けた答えが、ありとあらゆる名前で呼ばれ、自国やテクノロジー企業を含めて糾弾されていた。シビュラシステム。テレスクリーン。バッド・ソナーシステム。
僕がしたことは、実はアメリカ司法当局が、金融諜報機関以外にもずっと昔からしてきた解法と違いはない。ある時は国内テロを防ぎ、ある時はパキスタンにいるビンラディンを見つけるために、正当化されてきた。あるいは、巨大IT企業が僕らの生活そのものを推測するためのあらゆるデータセットをつくりあげ、民主主義の行動を矮小な世界に押し込もうと、広告主たちの資本を吸って画策を続けてきた。
この時の日本とアメリカが違ったのは、日本が支援策の供給のために未冷のマイクロファイナンス事業を承認したこと、そこで入手した必要以上のデータを利用することを遅ばせながら承認をするべく選挙まで実行でき、国会でも法として可決された一方、アメリカはまだその準備どころか、福利厚生がほとんど整っていなかったことにある。
日本の場合は、未冷や黒沢さんたちががんばってくれたのも大きかったが、アメリカの場合、その承認を得るということは、これまでのすべての行動に対して、市民は決着をつけねばならないことを意味していた。彼らにとって、信じられない重荷だった。福利厚生の概念が金権と化したアメリカという国においては。
しかし
数ヶ月が経過したころには、先生たち議員本人が、僕の語る解答にあたる立法における説明を各所ではじめてくれた。企業、つまり市民とのつなぎも、僕が各々の企業を回ることで、僕はその国の金融機関とかけあって金融諜報機関のシステムを再構築する手法を提供したり……とにかくできることはなんでもやったつもりだ。
はじめは僕だけしかそんな答えを必要としてると思ってない、とまで先生に言われたけど、結局は爆発の回避に至った。僕の手を介在せずとも、この国の事業全体が回り始めたのを、そしてアメリカという国が自分たちの助けを求める声を、未冷先生の継承してきたマイクロファイナンスとITシステムが拾ってくれるという可能性を、理解しはじめてくれた。そうして最後に未冷先生や財前さんたちがアメリカの支部でしていた個人に対するマイクロファイナンス事業とつなぎ合わせ、失業保険の実質的な上乗せによる救済策とすることで、現実的なものとなった。その姿を見たアメリカ政府においてもその活動が認められ、自由を侵害すると思われたそのシステムは、自由を守るために導入され、より厳密に僕たちを束縛する、厳しい法律として成立した。この選択ができたのは、アメリカでは、大規模な戦争から世界金融危機まで、危険についても第一線に立ってきたからこそからだった。
かくして僕は、この金融という影の世界で星を経済的に繋ぎ直すに至り、破滅を回避した。だからこそ答えを押し付けた僕は日本で行った
僕は、先生だった彼女たちから逃げ続けていたのだ。
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