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テニスでもしそうな格好の彼は、ホテルのダイニングでビュッフェ後のコーヒーを飲んでいた。そこに私は飲み物と料理を持ってやってきた。
真依先輩「おはよう、ここ、いい?」
真依先輩か、どうぞ。そう促されて、私は彼の斜向かいに座ってくる。そして私の向かいの席や隣の席の、食べ終わった皿たちをみつめながら私は訊ねる。
真依先輩「未冷と衛理はもう食べ終わって戻ったの?」
主人公「ああ、ふたりとも運動するためにまず仮眠するんだってさ」
真依先輩「なるほどね」
私はマスクを外してサラダを箸で口に運んでから、ふと言った。
真依先輩「昨日は、ありがとう」
彼は驚いて、私へ視線を向ける。
主人公「今日は雪かな」
真依先輩「皮肉がらしくなってきたね」
彼はコーヒーに口をつけながら、
主人公「
真依先輩「鞭撻の覚えはあるけど、指導の覚えはない。特に、
主人公「まあね。あのナカモトからの、陽子のシンジケートなる話からの類推で、確証はなかった。けれどそこに裏が取れると教えてくれたのは、君だよ」
私は完全に手を止まってしまった。ただ、彼を呆然と見つめる。彼は微笑む。
主人公「僕のはじめてのクライアントの経歴くらいは、多少調べることができたのさ」
真依先輩「何から……私の名前も、本当のものじゃないのに……」
主人公「君がファイリングしていた情報、計画された一本の
私は怯えながら訊ねる。
真依先輩「つまり……」
主人公「あれらテロ事件のどれかが、君と関係してるんじゃないかって思ったんだ」
私は息をのむ。記憶が蘇ってくるなかで、彼は続ける。
主人公「それであの時みた事件達を片っ端から調べた。そしたら出てきた。経営企画の部門にいたデータサイエンティストだったらしいけれど……君とよく似ていた夫婦が、犠牲者になったという記事だ。それすらも、陽子のシンジケートが利益を得られる構図だった」
やがて私は彼をみつめ、微笑む。
真依先輩「同情してくれるの」
彼は固まり、やがて首を振った。
主人公「そんな資格、ないよ。僕には」
私は笑ってしまう。
真依先輩「そこは皮肉で返せないのね、後輩くん」
彼は驚いて私を見つめる。私は大きな窓の先に広がる海を眺めながら、言った。
真依先輩「私は父と母に育てられているその時から、きっとこの金融の中でしか生きられない気配を感じていた」
主人公「なぜ……」
真依先輩「金融の外はあの海みたいに、無慈悲だと思ったから」
彼は沈黙する。私は続けた。
真依先輩「両親の力を継げなければ、私はきっと産業を見失いつつあるこの世界で溺れてしまう。その恐怖が、私を動かしていた。必死に成績をよくしようとあがいて、言われたことを理解しようと必死だった。両親からは猛反対された。この世界以外にも、きっと役立つことはあるって。でもその答えを教えてもらう前に、両親は向こう側へ行ってしまった。だから、
主人公「ごめん、先輩。あのとき、よくある話だなんて」
真依先輩「そうね。みんな、あなたみたいに強くはなれないから」
主人公「僕も、強いわけじゃ……」
そんなふうにいい淀み、沈黙する彼に、私は言った。
真依先輩「ねえ、栗原さんの質問に似ているから、答えてくれないかもしれないけれど」
なに、と彼は怯えた様子だ。だが、訊ねた。
真依先輩「後輩くん。あなたは一体、何者なの?」
未だ
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