第17話 ウブドへ

蚊が出てイラついたけど、久々のシングルはとても快適だ。

気持ちよく寝れた。


バリのホテルは、朝食付きなのも魅力。フルーツ沢山の朝食を食べて、昨日古本屋で買った地球の歩き方を見ながら、今後の予定を考える。


クタにこのままいるか、ウブドに行くか…


インドネシアの観光ビザの有効期限は1ヶ月。


この期間中に出国しなければいけない。

今後の移動を考えると、バリ島では大体2週間ほどの滞在を予定していた。


それをクタにするか、ウブドにするか迷っているのである。


前回訪れた時、ウブドにはツアーで少し立ち寄ったが、その時の風景、素朴な雰囲気の街がとても印象的だったのだ。


しかし、このクタの騒々しさも悪くない。


物乞いや客引きなど、うっとおしさはあるが、

色々と物も揃っていて、行動しやすいのは魅力的だ。


あれこれ迷ってはいたが、とりあえずクタを散策しながら考え歩く。


ふと、前回泊まったホテルにまでたどり着いた。


私の中では良き出会いに恵まれ、さまざまな思い出のあるホテルである。


少し覗いてみて、良ければこっちに移動してみようかと考え、部屋を見せてもらうも、…ん?


なんか、雰囲気ちゃうなぁ…と感じてしまった。


なんか暗い感じもする。思い出は美化されているのか。


ここにはなんか泊まりたくない気がした。


そして、クタビーチへ向かい、しばらく歩くがやはりウザい。いい奴もおるけど、ひつこいからめんどくさい。客引き、物乞い。


賑やかなクタビーチの物売りを冷やかしながら歩く。ここの雰囲気は昔と変わらない気がした。欲望、熱量、色んなものが渦巻きながらも素朴な感じもあり、夕暮れ時は全てが一瞬リセットされるような。


とりあえず宿に帰ると、今日来たばかりのコータ君と知り合う。


アジアを数カ国旅してるらしく、色々と話を聞くことができた。


これから行くことになるであろう、タイや、マレーシアの情報など聞けたのは有意義だったが、理屈っぽくて自分の話が長い。


気の合う人なら、このまましばらくクタの選択肢もありだったが…

決めた。明日ウブドに行こう。


朝、チェックアウトの時には10人近い日本のサーファー達が群れだってチェックインを始めていた。

否定する気はないけど、一緒にいたくないと思った。ウブドに決めて正解。


シャトルバスのチケットを買い、ウブドへ。


日本の教習所の送迎バスぐらいの大きさ。


車内はギュウギュウで、暑い。

道もかなり混んでいて、砂埃が舞い、クラクションが鳴らされる。


こんな移動になぜか1人興奮している。

すごく楽しくてワクワクする。

窓から流れる風景を眺めながら、旅の雰囲気を味わいながら。


ウブドへはそこまで遠くない。

到着したターミナルでは、いつものように客引きもいたけれど、クタとは違ってとても穏やかな雰囲気だ。

目星をつけていたホテルへ、適当に交渉してバイクで送ってもらう。


ホテルは中庭があり、南国の雰囲気満点のキレイで清潔感溢れるホテル。

従業員も優しく、これで一泊1000円もしなかったと記憶している。

部屋は天蓋がベッドについてるような、豪華なシングルで、即決した。


そして、すぐに泊まっている、トマさん、リンさんと知り合う。

少し遅れて、ジュン君というのも現れた。


どうやら、トマさん、リンさんはカップルで、ジュンくんは学生の旅行中。

たまたま日本人がこのように巡り会ったわけだが、もちろん全て偶然の出会いだ。


楽しそうな予感もする。

しかも、このトマさんとは10年経った後も会うことになるのだった…。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る