悪魔が来りて

第9話 悪魔

 嫌な予感がした。

 悪夢を見ているような感覚。胸の上に重いものが乗っているような、食道に油がこびりついているような、肺に水が詰まったような不快感があった。

 ひどい吐き気と頭痛がする。疲れているのにとても眠れそうにない。

 トーマは目を開いた。

 目の前には黒ずくめの人間がいた。


「は?」


 思わず間抜けな声が出た。

 目の前にいるのはおそらく男だろう。体に張り付くような服にごてごてとしたプロテクターをつけているので正確なところは分からない。頭部にはヘルメットのようなものを着けており顔は分からない。

 トーマの声を聞いた男は素早く自分の腰に手をまわした。

 取り出したのは黒い何か。トーマは拳銃だと直感した。

 手近にあった枕を掴んで男に向かって投げつける。枕は軽くてもトーマの腕力はドラゴンと喧嘩できるレベル。枕が直撃した男は態勢を崩した。

 トーマはベッドから飛び降りた。

 こいつは危険だ。召喚初日に会った暗殺者もどきとは訳が違う。明確な脅威と恐怖を感じている。

 即座に倒すべきだが万が一にでもフィオナに銃弾が命中するリスクは犯せない。トーマはフィオナと男の間に移動し、一秒前まで自分が眠っていたベッドを掴んで男に向かって投げつけた。

 渾身の投擲。ベッドはけたたましい音を立てながら男に命中し、男ごと部屋の壁をぶち抜いた。

 トーマはフィオナの両耳を自分の手で塞ぎ、


「敵だーーーーーー!!」


 全力で叫んだ。

 伊達にすべてのステータスがAランクではない。本気を出せば声の大きさもAランクだ。耳を塞がれていたフィオナが思わず飛び起きるほどの音量だった。

 声はびりびりと街中に広がる。


「と、トーマ? いったいどうしたんですか?」

「侵入者だ。黒ずくめのやつが部屋にいた」

「なっ……まさかイバヤ暗殺教団の者ですか!?」

「あんなネタキャラとは違う。拳銃を持ってた。フィオナも警戒して」

「は、はいっ!」


 侵入者が先ほどの男一人とは限らない。トーマは周囲を警戒しつつ壁の外を見た。

 トーマが借りた部屋はアパートの二階にある。道を見下ろすと砕けたベッドが道に散乱している。男はベッドの下敷きになりもぞもぞともがいている。ベッドはそこまで重くないはずだが、命中した拍子にどこか怪我したのかもしれない。

 とはいえ、さほど時間をかけずに這い出てくるだろう。

 トーマはマギから教わった気配探知の魔術を使う。付近に怪しい気配はない。


「ここでじっとしていて」


 フィオナにそう言い残しトーマはアパート前の道路に飛び降りた。

 男がとっさに拳銃を向けようとしたので、それより早く拳銃を踏み潰した。拳銃は壊れながら石畳にめり込んだ。一緒に手を踏み潰す嫌な感触があった。

 顔をしかめそうになるがこらえる。精一杯の無表情でなるべく低い声を出す。


「お前は何者だ。目的は何だ」


 トーマは男のヘルメットを鷲掴みにした。

 この世界には様々な特徴を持った人種がいる。顔を見れば男の所属を調べる手掛かりが分かるはずだ。ヘルメットの外し方が分からないので握力任せに破壊する。

 めし、と音が鳴った直後、背後から激烈な悪寒がした。

 とっさに男から手を放して飛びのくと半秒前にトーマの頭があった場所を銃弾が通過した。

 振り返るともう一人黒ずくめがいた。こちらからも強い違和感がある。ひどく気持ち悪く、頭を金属で殴られたような頭痛がしてきた。


「やっぱり仲間がいたか」

 

 トーマを暗殺する動機があるとすればトーマを追放したアマザ王国くらいだ。しかしアマザ王国がシャングリラに手先を送り込める気がしない。

 潜入系のチートを持った転生者ならシャングリラに侵入できるかもしれないが、そんな転生者は知らない。ピンポイントにトーマを殺そうとする転生者はいないだろう。

 おそらくトーマを含めた複数名を暗殺しようとしている。相応の人数がいるはずだ。

 もう一人の黒ずくめは静かに拳銃を構えてトーマに発砲する。


 恐ろしい。前世で発砲されたことはないが、撃たれたら死ぬと思ってしまっている。

 トーマは精神力のパラメータもAランクある。それでも呼吸が荒くなりそうになる。

 銃口を向けられた瞬間に横に動く。耐久力もAランクの体なら急所に直撃しなければ大丈夫だと自分に言い聞かせる。

 左右に体を揺らしながら道に散乱した瓦礫を掴む。振りかぶった瞬間に黒ずくめは建物の陰に逃れた。


「くそっ!」


トーマは瓦礫を投げなかった。

 違和感による吐き気と頭痛はどんどん強くなる。次第に立っていることすら苦しくなってきた。


「トーマよけてっ!」


 フィオナの声がした。

 疑いもせず前に動いた。銃弾が地面を穿つ。

 今度は頭上に強い違和感があった。違和感が増えるほどに頭痛が強く、激しくなる。

 建物の上にも黒ずくめがいた。『そこにいる』と確信して見なければ見逃しそうなほど夜に溶け込んでいる。

 焦燥感があった。フィオナは大声を上げた。黒ずくめの狙撃手もフィオナの存在に気付いただろう。フィオナを狙われたら防ぎきれない。

 幸か不幸か黒ずくめは長い銃身をトーマに向けて構えている。


「っらあ!」


 迎撃のために瓦礫を投げる。

 嘔吐感と頭痛に苛まれる体を無理やり動かしたせいで余計な力が入った。握った瓦礫は粉々になり、黒ずくめに命中しても大したダメージにならなかった。

 わずかに銃口が逸れるもすぐに修正し、黒ずくめが引き金に指をかけた。


「そこまでだ!」


 引き金が引かれるより早く黒ずくめの首が胴体から離れた。

 大剣で黒ずくめの男の首を斬ったのもまた黒ずくめの男だった。

 しかし姿は明確に違う。トーマを襲った黒ずくめはライダースーツにプロテクターとヘルメットを着けたような格好であるのに対し、トーマを助けた男は漆黒の鎧に赤い布をマフラーのように身に着けている。


「このジークフリートの縄張りで暴れるとは良い度胸をしている、覚悟はできているんだろうな。ハァっ!」


 掛け声を共に鎧の男ジークフリートが動く。

 黒ずくめたちが銃を向けて応戦するより早く切り捨てていく。たまに銃弾が命中しても冗談のような頑丈さで弾き飛ばしている。


「お前の縄張りじゃなくて俺たちの街だぞジーク」


 星明りのみだった視界が急に明るくなった。

 空には煌々といくつもの光点が瞬いている。

 そのうち一際大きい光点がグレンだった。

 ジークフリートと違い寝巻のような服装であるにも関わらず、悪魔に銃撃されても気にした様子がない。


「あいつなら心配いらないよ。銃弾なんか届く前に蒸発するから」

「マギ……」

「フィオナも大丈夫。ボクが手ずから最強の結界を張って来たから核爆弾食らっても平気だ」


 気付けば横にマギが立っていた。こちらは寝巻にローブをかぶっだだけの姿である。


「よくもボクの弟子兼研究仲間に手を出してくれたね」


 周囲にいる黒ずくめたちはいずれも動かない。よく見ると手足を石に覆われていた。グレンたちに気を取られていたのに銃撃されなかったのはマギのおかげらしい。

発砲してくる黒ずくめもいるが、銃弾は空中でぴたりと動きを止め、発砲した相手に向かって飛んでいく。そして着弾した直後に石になる。

 圧倒的だった。グレンの炎は黒ずくめをピンポイントで燃やし、ジークフリートは銃弾を無視して斬り伏せる。他の転生者も戦っているらしく街のあちこちから大きな音がした。


「こんなもんか」


 グレンが地上に降り立ち肩を回す。

 五分もしないうちに周辺の黒ずくめは撃退された。マギに捕まえられた黒ずくめがいるので頭痛はするが、ずいぶん楽になった。

 トーマのもとに転生者たちが集まってくる。


「ありがとうございました」

「気にするな。むしろ声をかけてくれて助かった」

「体調が悪そうだけど大丈夫かい? あいつら、毒でも使ったのかな」


 グレンはポンと肩を叩きマギは体調を慮る。

 最後にやって来たのはジークフリートと名乗る黒い鎧の男である。トーマにとっては初対面の転生者だ。口元しか見えない鎧をかぶっており表情は分からない。


「ジークフリートさんもありがとうございます。助かりま――」


 頭を下げようとすると横っ面を殴られた。トーマでも脳震盪になりそうな強さの一撃だった。


「ジーク! 何をするんだ!」

「なぜ隠れた悪魔に石を投げなかった」


 マギの抗議を気にした様子もなくジークフリートはふらついたトーマを見下ろした。

 兜から覗く目はトーマを蔑んでいることが良く分かった。


「何を黙っている。さっさと答えろ」

「……建物の陰に隠れたからだよ。障害物に向けて投げても仕方ないだろ」

「嘘をつくな。お前の力なら建物くらい貫いて悪魔を殺せたはずだ」


 反論できなかった。

 トーマの腕力は極めて強い。そのへんの石ころだろうが投げれば大砲のような威力になる。レンガ造りの建物なんか障害物にもならない。


「当たったら殺しちゃうかもしれないだろうが。あんたは景気よく首を落としてたけど、殺したら相手の目的も分からない」

「……フン、俺にはお前が殺しに怯えて動けなくなったように見えたがな。そういうことにしておいてやろう」


 ジークリートは鼻を鳴らしてその場からトーマに背を向けて跳躍し、その場から消えた。


「トーマ! 大丈夫ですか!」


 入れ替わるようにフィオナが駆け寄って来た。敵の制圧が完了したと判断したマギが結界を解いていた。

 フィオナはトーマに駆け寄るとすぐに回復魔法を使う。目に見える傷以外にも怪我がないか調べている。


「今の人はなんなんですか! トーマを助けてくれたのはいいですけど、いきなり殴ったうえにあんな失礼なことまで言って!」

「あー、悪い。ジークフリートは言いたいことだけ言ってすぐいなくなる癖があってだな。悪いやつじゃないんだ」

「勝手なヤツだけどね」


 グレンがフォローするもマギが切り捨てた。

 確かにトーマを助けてくれた。悪人ではないのだろう。でもトーマはあいつ嫌いだなと思った。

 相手の都合や考えをろくに聞かず暴力を振るい、言いたいことだけ言い捨ててその場を離れる。ぜったい友達いないよアイツと心の中で毒づいた。


「それよりこいつらはなんなんですか。ジークフリートは悪魔とか言ってましたけど」


 トーマはマギによって固められた黒ずくめを指差す。最初にベッドの下敷きになったやつも這い出していたが、即座にマギによって捕らえられた。

 その装備はファンタジーというよりSF的で異彩を放っている。人数が減っても違和感が強いし、目の前にいると消し飛ばしたくなる衝動に駆られる。


「ジークが言った通り、俺たちはこいつらを悪魔と呼んでいる。正体は分からない。以前からたまに現れては街の中で暴れる迷惑なやつらだ」

「街中で銃乱射とか暴れるってレベルですか」

「これほどの人数で動いたのも、銃器を使ったのも今回が初めてだ。今までは暴れても大した被害を出さなかったんだよ。だから警戒していなかった。……どうやって忍び込んだのか調べる必要がある。他にも侵入していないか気になるところだ」

「マギが捕まえてくれた連中から何か分かればいいですけど」

「……それは望み薄だな」


 グレンが悪魔たちに視線を向ける。マギに固められた悪魔たちに動揺した様子は見られず微動だにしない。

 気味が悪かった。いくらシャングリラが民主主義といえど、これほどの騒ぎを起こしてただで済むはずがない。中世ファンタジー風の世界なら拷問くらいされるだろう。

 悪魔たちの動きは統制が取れていた。その程度が分からないほど馬鹿とは思えないのに平然としていることが不気味だった。


「少し手荒だけど思考を読ませてもらおう」


 マギは近くの悪魔に右手を伸ばした。

 トーマはピンときた。マギの能力は全属性適性のみではない。もうひとつの能力で作り出した読心魔法を使うつもりだ。

 わざわざ思考を読むと口にしたのは『知られたらまずい情報』を思い浮かべさせるため。

 グレンの顔はさえないままだ。読心魔法のことを知らないのだろうか。

 悪魔にマギの手が触れる直前のことだった。


「……は?」


 すーっと悪魔の姿が薄らいで、マギの右手は空を掴んだ。そのまま悪魔の姿は完全に消える。悪魔の動きを封じていた石が地面に落ち、ごとりと重い音を立てた。

 トーマが振り返るともう一人の悪魔も同じように姿を消した。

 見えなくなったわけではない。この場から消えてなくなったのだ。激烈な違和感が無くなりトーマの頭痛も波が引くように和らいでいく。


「やっぱりか。情報を抜こうと思ったら気絶でもさせなきゃ無理だな」

「でもこいつら電気ショックで意識を飛ばしても瞬時に立て直してくるよ。気絶しないように何か対策してるのかも」


 グレンとマギは当たり前のように会話している。グレンの表情が曇っていたのはこうなることが分かっていたからだ。マギも期待していなかった。

 置いてけぼりなのはトーマとフィオナだ。いったいどういうことなのか理解が追いつかない。


「ああ、悪いなトーマ君。悪魔たちはいつもこうやって消えるんだ」

「透明化……なワケないですよね。頭痛も収まったし。空間魔法で逃げたとか?」

「空間転移なんて無詠唱で簡単に出来るものじゃないよ。ボクだって念入りな下準備がないとできないのに、こんな簡単に使えるやつがほいほいいてたまるもんか」

「……頭痛っていうのはなんだ? 今の口ぶりだと悪魔がいると頭痛がするみたいに聞こえるんだが」

「なんかあいつらがそばにいると、吐き気と頭痛がするんですよね。ある程度離れてても気持ち悪さが伝わってくるっていうか」

「つまり、連中の気配を探れるということか!?」


 グレンがトーマに詰め寄った。マギも目を見開いている。


「言われてみればそういうことなのか。今夜も気持ち悪くて目が覚めたし」


 悪魔がそばにいるだけで頭痛と嘔吐感があるなら、近くにいる相手が悪魔かどうか見分けることができる。

 敵と対峙する時に体調不良を起こすと考えればデメリットだが、正体不明の敵の居場所を探れるならこれほど有用な能力はない。


「トーマ君、体調が悪いところ申し訳ないが悪魔探しを手伝ってくれないか」

「了解です」

「でもトーマ、無理をしないで休んだ方が良いのではないですか」

「あんなのが街中にいるかもって思ったらおちおち休んでもいられないから行ってくるよ。戦った感じ、正面からやり合うなら脅威じゃない。安心してくれ」

「はい……」


 トーマは悪魔に脅威を感じた。しかしそれは不意を狙い明確な殺意を持って狙ってくる点に対してだ。まともに戦うなら脅威足りえない。

 最初に遭遇した悪魔もトーマが雑に投擲したベッドの下敷きになって行動できなくなるくらいである。不意を突かれなければどうとでもなる。不意打ちの暗殺を予防するためにも探さないわけにはいかなかった。


「私、朝ごはん用意して待ってますから。絶対に帰ってきてくださいね」

「ああ、楽しみにしてる」


―――


「ただいまー」

「おかえなりなさい!」


 グレン、マギとの悪魔探索は朝方に終わった。風通しが良くなった我が家に戻るとふわりと味噌汁の香りがした。


「お風呂も用意してあるので良かったらどうぞ。先にご飯にしますか?」

「風呂もらうよ。暴れるとどうしても汚れて気持ち悪いから助かるよ。ありがとう」


 トーマが風呂から上がるとちょうどフィオナが朝食をダイニングに広げたところだった。焼き魚と味噌汁、野菜の煮びたしに城ご飯と見事な和食である。


「悪魔探しはどうでしたか?」

「どこにもいなかった。街の人にも協力してもらってもいなかったし、俺も頭痛はしなかった」


 頭痛や違和感の有無だけならば、最初に感知出来たのがたまたまだったかもしれないと不安が残る。

 今回はグレン指揮のもと住民総出で悪魔探しを行い、いないと判断された。


「今後は街へ入るための審査を厳しくするのと、マギが本腰入れて対策魔法を作るってことになってお開きだった。一安心ってところかな」

「それなら安心ですね」


 マギのチート能力のひとつに、イメージを実現するための魔法を作るというものがある。

 制限があって万能とは言えないらしいがとっかかりにはなる。早晩悪魔対策の魔法が実用化されることだろう。


「それにしても風通しよくなっちまったなー」

「ですねえ。この後、修理屋さんに連絡しましょう」

「グレンさんがこの辺の修理は手配してくれてるから大丈夫。街を回った時に思ったけど転生者って本当にチートだな。このあたり以外は街への損害がまるでないんだ」


 グレンは目が覚めると同時に悪魔を燃やし尽くした。マギの部屋には多重にロックされており、トーマの叫びで目を覚ました時にはまだ部屋に侵入すらされていなかった。図書館に侵入した悪魔は失神した状態で捕らえられていたが、読心魔法を使っても情報を読み取れなかったらしい。マギは読心魔法もアップデートすると意気込んでいた。

 生産職のムラマサすら一瞬で悪魔を切り捨てたというのだから驚きである。一番バタバタしたのがトーマだったというわけだ。


「でもトーマがみんなに呼びかけたから犠牲者がゼロで済んだのは間違いないと思います。胸を張ってください」

「ん、ありがと」


 正面から満面の笑みで褒められて照れ臭かった。味噌汁を飲みながら器で顔を隠す。照れ隠しにフィオナを褒めることにする。


「それにしてもこの味噌汁うまいな。出汁が効いてて具沢山で」

「実はそれ、昨日の食事で出た余りの部分を使ってるんです。教わった時はけちくさいなって思っちゃいましたけど、作ってみたらおいしくてびっくりしました」

「切れ端といえど侮れんな」


 話が逸れたので安心しながら味噌汁をすする。

 するとフィオナが眉を八の字にしながら顔を覗き込んで来た。


「……トーマ? どうしましたか、しょっぱかったですか」

「え? そんなことないよ。どうしてそんなこと……」

「だって、トーマが泣いてますから」

「そんな馬鹿な……あれ」


 頬に手をやると確かに濡れていた。今もじんわり涙がにじみだしている。

 慌てて涙をぬぐう。心配性なフィオナにどう説明しようかと顔色を窺う。


「フィオナもじゃん」

「え……」


 フィオナもまた涙を流していた。トーマよりも明確に大粒の涙を流している。

 二人して涙と鼻水をぬぐった。

 なんだか湿っぽい雰囲気になってしまった。フィオナと一緒にいて話題が無くなることは珍しい。普段は無言でも気まずくないのだが、今ばかりはいたたまれなかった。


「それにしてもよく和食なんて知ってたな」

「はい、この街に来てから勉強しました」

「そっか。料理系のチート持ちの人とかいるのかな。今度グレンさんに聞いてみよう」

「そうですね、いろいろ教わりたいです」


 二人の朝食は和やかに終わった。

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