第34話 他人の恋バナは・・・ 番外編

 他人の恋バナは正直面倒くさい、自分の恋愛でさえ大変なのに。

私、東雲亜里沙は考える。

「前回の相田君の恋愛相談。最初は面白半分で相談に乗ってみたものの最後はややこしい展開に展開になって本当に疲れたわ。でも、話としては面白い題材になりそうだから簡単にプロット起こして紙ベースで残しておこう」

 私はひとしきり考えている内容を言葉にすると、時計に目をやる。

「AM7:30・・・。もうこんな時間っ⁉」

 私は時計の時刻を見て驚き、飛び起きる。後、15分で支度して出ないと学校に遅刻しちゃう。まだ着替えもしてなければ、食事もしていない。

 いつもは、6時位に起きるのに。私は焦る。

 私はベットから起き上がろうとしたしたその時だった。急に眩暈がしてその場で意識を失った。

 

 意識が戻った私は目を開けるといつもの自分の部屋にベットで横たわっていた。そして、目の前にはお母さんが忙しそうに何かを準備していた。

「あれ、お母さんどうしたの?」

「もう、どうしたの?じゃないわよ。あなたは寝てなさい」

「あっ。うん」

「時間になっても起きてこないから様子見にきたの。そうしたら、亜里沙が倒れてたからびっくりしたのよ。熱を測ったら38℃近くもあるじゃない」

 お母さんからそう言われると今日は妙に体が重く感じた。自分の手を額に当て温度を図ると確かに熱っぽく感じる。

「後、学校には連絡しといたから今日はゆっくり休みなさい」

 お母さんは寝ている私の頭に濡らした布巾置くと「後であなたが食べれる消化の良いもの、持ってくるから。しっかり休みなさい」と捨て台詞を吐いて部屋から出て行ってしまった。

「知らない天井ね。・・・そんなわけないか。知ってる天井ね」

 我ながら無いを言っているのだろう。やっぱり今おかしいんだわと結論付ける。私は寝ながら天井を見上げていた。

 私はお母さんが部屋から出て行ったのを確認するととりあえずまた寝る事に。重い瞼があっさり落ちていくのが分かった。


 私は目を開く。朝よりは目覚めが良かった。そして、枕元に置いてあったスマホを眺めた。

「午後12:30か。学校だと昼食の時間か」

 時間を確認した私は、あるSNSのアイコンが新着連絡多くついていることに気付く。

 そこには芳賀君、相田君、凛花さんからのメッセージが私のスマホに届いていた。

芳賀君のメッセージが異様に多くてびっくりしてしまう。

『芳賀君:どうしたんですか?東雲さん』

『相田君:今日はお休みでござるか?』

『凛花さん;今日は休みなの?私寂しいよ』

『芳賀君:何で学校に来てないんですか?』

『芳賀君:僕が何かしたんですか?』

『芳賀君:反応してください』

『芳賀君:反応してください』

『芳賀君:反応してください』

 etc.

 ちょっと、芳賀君の怖い一面を垣間見た気がする。てか、メンヘラみたいなメッセージで怖いよ。

『私:今日は体調不良で休んでるの、みんなごめん』

 と私はとりあえず、直ぐにみんなにメッセージを送った。とりあえずみんなの既読状態を確認すると直ぐに返事が返ってくる。

『相田君:それは大変でござる。ゆっくりしてくださいでござる』

『凛花さん:お大事に・・・マイハニー』

『芳賀君:くぁwせdrftgyふじこlp』

 相田君、凛花さんについては通常運転ね。芳賀君に関しては焦り過ぎでしょ。私はスマホ画面にツッコミを入れる。一通り確認して、私はもうひと眠りすることにした。

 そして、もうひと眠りして少し経った時の事だった。私、頭の奥からお母さんの声が聞こえてきた。私はその声で目を覚ます。

「ちょっと、亜里沙。起きなさい」

「えっ・・・何?」

「あなたの友達がお見舞いに来てるのよ」

「何で」

「家に上げるわよ」

「ダメよ。風邪うつっちゃうじゃん」

「あなたはマスクをつけてれば大丈夫でしょ。折角来てくれてるんだから」

 お母さんは私の意見を無視して、お見舞いに来てくれたメンバーを迎えに行った。   

 私は慌てて、お母さんが持ってきてくれたマスクをつけて、寝転ぶ。

 足音がたくさん私の部屋に向かってくるのが聞こえた。そして、私の部屋の前で足音は止まった。

 トントンッ‼

「亜里沙入っていい?みんな連れていたわよ」

 私の部屋のドアをノックし、お母さんが声をかけてきた。私は「いいよ」と答えるとドアが開いた。

「大丈夫、亜里沙ちゃん」

 ドアの前には芳賀君、凛花さん、相田君、植田さんが立っていた。凛花さんは私の寝ている姿に即座に近づき自分のおでこと私のおでこを引っ付けてきた。

「ちょっ!何やってるんですか」

「まだ、少し熱いわね。私の身体で温めてあげる」

「辞めて下さい。そういう問題じゃないです」

「止めるでござる。凛花殿」

 私は必死に凛花さんを剥がす。相田君にお願いをし、私との距離置いてもらった。

「大丈夫ですか?東雲さん」

 植田さんが心配してくれている。

「これを」

 植田さんがそう言うとねぎを私に渡してきた。

「心配してくれてありがとう。これは何?」

「風邪にはネギが良いとネットに書いてあったのでお見舞いに持ってきました」

「で、私はどうすればいいの?」

「えっとネットにはネギをお尻の穴に入れる風邪が治りますと書いてありました」

「出来るか―――⁉ごほ、ごほ」

 私は植田さんにツッコミを入れる。病人に何てことさせるのよ。

「これは民間療法なので信評性が無いでござるよ」

 相田君が凛花さんを抑え込みながら、植田さんの意見に冷静に分析していた。

「あらあら、楽しそうね。亜里沙が友達を連れてくるなんて初めてだから嬉しいわ」

 そこへ私のお母さんが部屋にジュースとお菓子をオボンで持ってきてくれていた。オボンを床に置くとお母さんは私の部屋をそそくさと出て行く。お母さんは嬉しそうだった。それもそうだ。私は今の今まで友達やクラスメイトを家に上げたことが無い。友達にBL好きを知られたくなかったから極力作らなかったのもあるけど。

「本当に良かったです。これ学校の連絡用のプリントと今日の授業のノートです」

「あ、ありがと」

 芳賀君が私に学校の配布物と授業のノートの写し渡してくれた。そして、芳賀君がいきなり泣き出した。

「どうしたのよ、芳賀君。急に泣き出して」

「何時も来てるのに、急に学校に来なくなったから、心配で心配で死んでしまったのかと」

「死ぬわけないじゃない。只の風邪よ」

「凛花さんがバカは風邪ひかないって言ってたから」

「おいっ‼げほ、げほ」

「だ、大丈夫ですか?」

「みんな。私、病人」

 私が芳賀君に抗議すると植田さんがジュースを飲みながら、「元気そうじゃないですか」と一言。どう見ても元気じゃないでしょと思いながらも私は。

「もう。いい。また風邪がぶり返すかもしれないから、みんな帰って」

 と私は帰るように促すと芳賀君が急に私に抱き付いてきた。

「でも、軽い風邪で本当に良かったです」

「バ、バカ。離れなさい。風邪うつるわよ」

 私は、芳賀君を引きはがす。

「あら~。これはこれは」

「こんなところでいちゃつかないで下さい」

「私も抱き付きたい・・・」

 この光景を見ていた相田君と植田さんの反応はまぁ、普通の反応か。凛花さんに至ってはそこじゃないです。ってか、欲望丸出しですか。

「とりあえず、何とかしてこの状況」

 私は三人に救助を求めた。が・・・

「ここからはお二人のお楽しみ時間と言う事で。帰りますよ。凛花さん」

「二人のいちゃつくの見せつけたいなら帰ります」

「芳賀君、そこ代わって」

 三人は帰り支度を始める。

「ちょっ、変な所で空気読まないで。みんな、助けてください」

 私の懇願もむなしく、三人は帰宅してしまった。凛花さんは芳賀君と植田さんに引きずられながら帰る姿は少し可哀そうでもあった。

 だが、この状況をどうしたらいいか私は抵抗しながらも考えていた。そこに思わぬ芳賀君の声が・・・

「やっと帰りましたか」

「えっ?」

 私は芳賀君の変わりように頭がついていかなくなった。芳賀君は私に抱きつくのを止め姿勢を正す。

「どーゆう事?」

「演技です」

 芳賀君が真顔でそう言った。私はつい「おいっ‼」とツッコミを入れてしまった。そして、また咳き込む。

「計画的かっ」

「やっと二人になれましたね」

 芳賀君の言葉で私の心臓がドキリと跳ね上がる。ま、まさか。私が弱っている事をいい事に薄い本であるようなあんな事やこんな事をしよとしているの。まぁ、私の場合の薄い本はBLなんですけどね。

 芳賀君の顔が私の顔に近づいてくる。

 てか、心の準備が。

「実は・・・」

 芳賀君の言葉に私ののどが「ごくり」と鳴る音が自分の中で響くの分かった。

「実は最近、BL小説書いても東雲さんはみなさんと一緒なので読んでもらう時間ないので、もやもやしていたんです」

「へっ・・・それだけ?」

「それだけって、中々2人だけでBL小説を読み合う事出来てませんし・・・」

「いや、二人だけって部室じゃ、部長や先輩後輩いるじゃん」

「そこは良いんです。同じ趣味の人たちが自分だけの空間で楽しんでいるんですから」

「あ、そうなのね」

「何か、他のこと考えてました?」

「あ・・・・う。ん。何でも無いわ」

 私は芳賀君が言った事に言葉が詰まる。図星と言いたいけど、変な勘ぐりされたくないし、知らぬ存ぜぬを付き通そう。

 私は「何でも無いわ」と壊れた音楽プレーヤーみたいに繰り返す。とりあえず、芳賀君が諦めるまで、繰り返すことにした。

「まぁ、いいです」

 私は言葉攻めされそうな難関をクリアし、胸を撫でおろす。

「で、どうしたしたいの?」

 芳賀君は学校の鞄からプリントアウトした小説を私に渡してきた。

「僕の新作を読んで見て感想して下さい。これです」

「主題は?」

「”2番目の花嫁”って言う長編で書くつもりで短く簡潔に仕上げてます。起承転結の大まかな流れで書いてあります。読んで下さい。お願いします」

「花嫁?BLじゃないんだ」

「まぁ、読んで見て下さい。結構頑張りました。誤字脱字あると思いますが」

 芳賀君は笑顔で言ってくる。私はいつものBLとは違うのだという芳賀君の目に少し期待してその小説を読み始めた。


 私は読了した。約2時間、久しぶりに読みふけってしまった。窓の外は暗くなっている。もうこんな時間になっていたのか。本を読んでいると時が過ぎるのを忘れてしまう。

 芳賀君はと言うと私のお母さんが用意したのであろう食事を食べていた。

「良いじゃない。BLじゃなくて恋愛ものなのね。私、好きよ」

「そうですか。それは良かった。それじゃ、このプロットを加筆修正をかけて、長編書きますね。そうしたらまた読んで下さい」

 芳賀君は私の感想にホッとしている。逆に私は少し不思議に思った。今まで、変なBLしか書いてるのしか知らなかったから、急にこんな恋愛もの書いてくるなんてどんな心境なのよ。しかも、BLものより面白いし。

「どうして、いつものBLじゃなくてどうして今回は恋愛ものなの?」

 私は疑問に思った。

「何でですかね。東雲さんとの彼氏彼女(仮)やってみて、男女の恋愛ものもいいかなって思って」

 私は芳賀君の言葉に胸がドキリとする。

「い、いい気変わりね。私は応援するわよ。BLもいいけど普通の恋愛ものもね」

「そうですね。頑張ります」

 芳賀君は私がそう言うと握り拳を振り上げる。何か、いつもの芳賀君の反応と違うから、ちょっと拍子抜け。大体、ここでボケてくるのに。今日はどうかしたのかと心配してしまう。でも、素直に今回の恋愛ものは完成形を読んで見たいと思った事は本当。ちょっと楽しみ。

 それに、この状況での私たち二人の空間は楽しいと思った。これが本当の彼氏彼女なのかなと少し思う。

「じゃぁ、頑張ってよ、芳賀君」

「はい」

 芳賀君はそう言うと小説を鞄にしまう。芳賀君はそれでは帰りますと言い帰ってしまった。

 私はもう少し芳賀君と小説の事で話したかった。

 そして、私は芳賀君と喋り疲れたのか、直ぐにベットで眠りに落ちた。


   翌日


 私はお母さんの看病のお陰で風邪もすっかり治すことが出来た。お母さんには感謝しかない。

 私は学校へ行くといつもの教室のいつものメンバーに挨拶をかける。そこで衝撃の事実を知る事になる。

 それは、何と芳賀君が風邪で休んだことである。昨日までは元気だったのに・・・

「あの芳賀君が風邪をひくなんて。バカは風邪をひかないは迷信だったんですね」

 植田さんは私を含めるいつものメンバーで談話する。植田さんの言い草は本当に芳賀君に好意を持っているのかと疑問したくなるような物言い。

「まぁ、バカでも風邪ひくから」

「仕方ないでござる」

 凛花さん、相田君も頷く。

「亜里沙ちゃん私たちが帰った後、芳賀君とキャッキャウフフな事してたから風うつしちゃったんじゃない?」

「し、してません」

 凛花さんは私を揶揄ってくる。

「凛花殿、東雲殿は病み上がりなのでござるから揶揄うのは止めるでござる。後でSNSにお大事にって送っておくでござる」

「へーい」

 相田君が凛花さんを窘める。前の荒井さんとの恋愛騒動から、相田君は大分変った気がする。やはり、荒井さんとの友達関係が人間を変えたのかなと私は思った。

 私たちは芳賀君にSNSでお大事にと送り、学校の授業は滞りなく進み、夕日とともに一日は終わりを告げた。

 

 そして、またその翌日


 今度は芳賀君の復帰して、学校にやってきた。

「おはよー」

「おはようございます、東雲さん」

「良かったわね。元気になって」

「はい。ありがとうございます」

 私は教室に入ってきた芳賀君に挨拶を交わした。いつもの芳賀君だ。私は一昨日の事を聞いてみる。

「そういえば、お見舞いに来てくれた時の小説頑張ってる?」

「何ですか。それ?」

「?」

芳賀君は私の言葉に頭に?を浮かべキョトンとしている。私もその反応に伴い「?」と芳賀君の顔を見つめながらしてしまった。

「いやいや、お見舞い来てくれた時、新作小説のプロット見せてくれたじゃない」

「そんな事、しましたっけ。僕?」

「いやいやいや、したわよ。見せてくれたじゃない。忘れたの?」

 芳賀君はしばし、考えている。記憶を絞り出そうをその場で唸った。

 ポクポクチーン‼

 芳賀君は何かを思い出したかのような表情をする。そして、自分の鞄の中を探っていた。

「あー--。この事ですね」

 芳賀君はそう言うと”2番目の花嫁”と書かれたプリントを取り出す。

「そうこれよ。”2番目の花嫁”」

「もう完成しました」

「早くない?」

「2日前の夜に完成させましたよ」

「お見舞い来てくれた日の夜ね」

「じゃあ、学校終わったら渡しますね」

 芳賀君はそう言うと帰りに「どうぞ」と渡してくれた。楽しみ。私は家に帰り読むことに。しかし、その期待は見事に裏切られる。

 その日の夜、私は自室で小説を読み終えて、叫んでしまった。私は直ぐにSNSで芳賀君に連絡を入れる。

『私:ちょっとどういう事』

『芳賀君:何がですか?』

『私:”2番目の花嫁”の内容変わってるじゃない』

『芳賀君:はい。変えました』

 意外にあっさり芳賀君は改変を認め、事の生業を書いてあった。芳賀君の言い訳はこうだった。

 最初はこの内容でいいかなと思ったが、もう少しこうしたら面白くなるんじゃないかなと思い、ちょっと変更を繰り返してこうなった次第ですと書いてあった。

 何かこの文を見ると料理をレシピ通りに作って美味しいのに自分の味にしてみようと思って味変して料理失敗する人の言い訳に見える。

 折角、いい感じの恋愛小説だったのに酷い改変されてる。

 ・・・どうしてこうなった。

 舞台も普通の学校だったのに何故か宇宙だし、恋してた女の子は男の子にキャラ変して可愛い系ならまだしも、おっさんになってるし。

 男の子キャラはみんなロボットで喋るセリフ全部片言だし、感情移入出来ない。

 普通の恋愛からゴミみたいなBLなってるし。

 芳賀君への文句は山ほどある。

 ここで私は気付いた。芳賀君は風邪をひいていたことで真逆の作品になったんだわ。芳賀君の作品は健康状態に左右するという事か・・・

「芳賀君。もう一度、体調を崩しなさい」

「は?・・・どうしてですか?」

「どうしてですか?って言われてもそれが君にとっての最善策なの。だから、ほら。  もう一度体調崩して」

「そんな無茶苦茶な」

 芳賀君も私のお願いに困り顔だ。私も無茶な事を言っていることは解っている。

「そうなることで、君の彼女(仮)から彼女に進化できるかもよ」

「それでも嫌です」

 芳賀君は私の提案に頑なに拒否。私の彼氏になりたかったんじゃないのかいと心の中で私はツッコむ。

「相田君もあの荒井さんと友達になった事で人格が変わったじゃない」

「あれはどう見ても主従関係で相田君がどう見ても下僕ですよね」

「芳賀君の目は腐ってるの?ああいった友達関係も世の中にあるのよ」

「確かに目は腐ってます」

「あぁ、そうね。ん~」

 私は適当な事言って、芳賀君の説得を試みる。だってBL小説や漫画でもこういった友達関係あるの見た事あるし。

 だが、芳賀君はそれでも正論をぶつけて私の提案を拒み続けた。こういう時には

まともな事言うのね。

 芳賀君は次から次へと私に反論し論破してくる。あんたは一休さんか。

 ただでさえ、他人の恋バナに関わるのは面倒くさいのに、自分の恋愛はもっと面倒くさいのを私は知り、遠い目をし窓の外を眺める。

「まぁ、これも彼氏彼女(仮)の日常なのよね。あぁ、面倒くさい・・・」

 私は窓に向かって溜め息をついた。

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