第51話 連続魔にも負けない声…。バルバリシアが手にしていたものとは、何だったのだろう?

 連続魔にも負けない声が、飛んだ。

 「バルバリシアと融合を果たした、ツゲ!これは、現行犯だ。次元の狭間に下りた貴様は、時空を超えて、いくつもの手術を受けた後、姿を変えた。なかなか、見つからなかったわけだ。今回の駄菓子屋教室における騒動に関して、この地下最終フロアでの貴様の動きは、気持ちが悪いほどに理不尽で、素早かったよ。そりゃあ、そうだ。駄菓子屋の神のふりをして、神になれず、この本当の駄菓子屋教室そのものを乗っ取ろうとしていたっていう、例の、裏の駄菓子屋ソサエティの一員でもあったんだから」

 「…」

 「貴様は、駄菓子を売るから、宿題をして努力しなよとか、努力しないと、小学校の先生のような人間になっちゃうよなどと、子どもたちを叱った。貴様は、子どもと取り引きをしたかった。学校の先生の同志には、したくなかったんだからな。そのときまでは、貴様も、子ども思いの良いおばあさんでありたいとの、譲れない願いが残っていたってわけだ」

 「…」

 「だが、子どもたちはあんたを裏切り、駄菓子を食い散らかして、遊びにいってしまった」

 「…」

 「宿題も、せずにな…」

 「…」

 「小学生相手では、せっかくの貴様の経済理論も、聞いてはもらえなかった。頭にも、きただろうよ」

 「…」

 「事が事だけに、公に捜査をすることもできない…。仮に、遊びほうけている子どもたちを叱ったりでもしたら、大変だ。今の社会では、それだけでも、知らない人からうちの子が虐待されましたと、通報されかねないんだからな…」

 「…」

 「親も、親だ。かわいそうかわいそうといってもらえる今どき世代の子たちも、そんな親になるのだろう」

 「…」

 「まあ、それは良い」

 「…」

 「って、良くないだろ!オレ流、1人ツッコミだ。これをラーニングするの、面倒だったなあ」

 「…」

 「こうして、駄菓子屋の試練を経験しなかった世代の子たちが社会に出れば、どうなったか?まさに、見ての、通りだよな…」

 「…うう」

 「子どもたちを、努力しない大人にはしたくない。このままだと、定年退職世代のおじさんたちになってしまうんじゃないか?駄菓子屋、そして、社会のすべてが犯されてしまう。止めないと、ならない。だが、このまま駄菓子を売り続けたい。そのうちにやってくるはずのはつらつ便りを、駄菓子を売りながら、のんびりと待っていようと思った。なのに、いつまで待っていても、はつらつ便りはやってこなかった。これは、どういうことなんだ…練りに寝られていたはずの駄菓子屋経済理論が、役立たなくなってしまうのではないか?貴様は、そう恐れたんだ…」

 「…」

 「窮地に立たされた貴様は、本当のソサエティとこの教室に、目をつけた…」

 「…ツゲ、だって?そんな者は、知らないね。このあたしに、ずいぶんと、言ってくれるじゃないかい!」

 「…」

 「高齢者は大切にしなさいって、学校の先生に、教わらなかったのかい!」

 「…ばかを、言うな。今どきの学校の先生程度に、他人の子を教育する力なんか、あるか。それも、小学校の先生に…。あれで、公務員だ。笑わせるな」

 「…く」

 「観念するんだ、バルバリシア!いや、ツゲよ!」

 「…ここではって、駄菓子のおまけに、駄菓子の新商品を作っていれば、あのソサエティにいきつく…。その上、社会人になっていく新卒身分そのものを利用できるはずじゃったのに」

 「バルバリ…ツゲよ。駄菓子にまつわるあらゆる雰囲気が、興味深かったよ」

 「…フン。しかしそれは、あたしの話じゃあ、なかったろうに」

 「…ああ、そうだったな」

 「ほら、別人話じゃあ、ないか」

 「ああ、そうだ。お前ではなく、この子の話だ。盗聴器を仕掛けておいて、正解だったよ。こんなにも面白い話が、聞けるなんてなあ。…欺瞞に満ちた駄菓子のおまけと、真実としての、ばばあ。いや、神。駄菓子屋教室を絡めたあらゆる教えが偽物だとするなら、就活、受験、あらゆる戦争もまた、所詮は偽物にすぎない…。今どき世代の子たちは、かわいそう、だって?就活の戦争に苦しめられている、だって?僕たち私たちを認めてよ!かわいそうでしょう?いいね!まだ、本気出してないだけ、だって?バカを言うんじゃ、なかポーネ!戦争を、勘違いしているんじゃないのか?今の社会は、リアルな戦争には狭すぎるんだよ!」

 「…フン。あたしに向かって、そこまで言うとはねえ。リアルな戦争、だって?就活も受験もそうかもしれないがね、駄菓子のおまけ戦争も、いつだって、非現実的なもんさ。戦争が現実的であったことなど、ただの1度も、ありゃしないよ」

 「…」

 「あたしゃあ、腰が、痛いわい」

 「俺さあ、何を言っていたのか、俺自身でわからなくなってきたよ」

 「あたしもだよ」

 戦いは、終わりに近付いていた。裏駄菓子屋ソサエティの神バルバリシア、いや、ツゲ先生は、がっくりと、膝を突いた。

 あの男の子が、ヒビキの肩に手を伸ばそうとした。

 が、背の高さの違いから届くはずもなく、代わりに、背中をさすった。

 「ふー。危ないところだった」

 「危ない、ところ?」

 「こんなことだからヒビキ君たちは、困るんだよ。就職氷河期にも負けずに生きて、素直で正義感の強い人たちだと、こうだ。なまじ、こうなっちゃうんだよ」

 「ほう…」

 「あ!ヒビキ君!君は、何を、手にしているんだ!」

 男の子による注意も、はじまった。

 「これか?」

 「そうだ。ヒビキ君?それも、駄菓子の欠片なのかい?」

 「じゃなくってこれは、入れ歯」

 「きったないなあ…」

 男の子が、詰め寄ってきた。

 「こら!何を、するんだ!」

 男の子は、ヒビキから、入れ歯を奪いとった。

 「こ…これは…」

 男の子の目が、険しくなった。

 「どうしたんだ?」

 「これは…」

 男の子の声を、待った。

 「ヒビキ君?これは、入れ歯に見せかけたクリスタルキャラメルリングだよ!」

 「何?そうだったとは!」






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