第46話 駄菓子屋の神の、キス。その神とは…、あの女性だったんだよね。

 「あっ…!あの、おばあちゃん。これは、うらやましくないことを、しているみたいだぞ」

 おばあちゃんが手にしていた物が、見えてきた。

 「あれは…、駄菓子屋のスタンプカードか何かなんじゃ、ないのか?」

 おばあちゃんは、さらに、満足そうになっていた。

 「身持ちが悪いな…」

 そしてまた、声がしてきた。

 あの男の子の声では、なかった。また怒られるのかと思えば飽き飽きとして、面倒にもその予感は的中で、そのおばあちゃんの声だった。

 当時の子たちも、今どき世代の子たちと同じように、知らない人から怒られるのは嫌だった。が、絶望まではしないものだ。

 怒られ慣れていたというのは、間違いなかった。

 駄菓子屋の経験が、生きていたのだろう。こうした、怒られ怒られ挫折して泣いちゃ

ってもはい上がれる子たちが、新しい商品な

どを考え、開発する力をもった。

これが、日本という国の発展につながって

いったのは、間違いないことだろう。

 それが、ぐちゃぐちゃに翻って、今どき世代は、どうなのか?

 今どき世代がうらやましいよと、上の世代に思われてしまうのは、生活が、便利すぎたからだ。

 この便利さを、どのように次の発展に生かすのかが、全社会にかかる新課題になるのだろう。

 便利になったことは良いことだけれども、それは、努力をしたり考えなくても良いということの裏返しだ。

 「こんな生活は、不便だ。それなら、どうすれば良いのか?こうしたら、どうか?失敗するかもしれないけれど、やってみよう!」  そういう気概にならないと、もっともっと深い意味で、かわいそうなことになっちゃうかもよ?だから、文句言っているんじゃないよ!

 「生活を便利にしてくれた恩を仇で返すとは、このことだね!かわいそうかわいそうって、言い訳を言ってるんじゃないよ!あたしゃ、怒るからね!」

 神は、全社会に、忠告を発しようとしていたのだろうか?

 地下フロアの神は、ゆるりゆるりと、うごめいていった。

 「…ほう。この子の駄菓子屋愛は、50パーセントといったところだねえ…。この子は、ずいぶんと、弱っているようじゃな。どれ、どれ…。これは、困ったもんじゃ。メンテナンスを、してあげなくっちゃねえ」

 はっきりと、聞こえていた。

 「あのばばあは、何者なんだ…?ただ者なんかじゃあ、ない。普通の駄菓子屋おばあちゃんとは、思えないぞ」

 おばあちゃんは、神のようなオーラを、放っていた。

 神々しくも、あった。

 「あの老眼鏡は、神のパワーアップアイテムだったとでも、いうのか?」

 …こ、これは!

 「駄菓子屋愛の数値、ロックオンじゃ!」

 おばあちゃんは、謎の数字を、次々に、割り出していったようだった。

 わなわなと、してきた。

 おばあちゃんがまた、倒れていた人のところに、近付いた。

 そして、首もとを狙って迫った…!

 「ぶちゅ」

 ヒビキは、がく然となっていた。

 「きったないなあ…」

 おばあちゃんは、倒れていた男らに、キスをし続けた。

 その不都合な行為が終わると、おばあちゃんは立ち上がり、こんなことを言っていた。

 「おお。この子は、今からでも間に合う」

 「この子も、良いだろう」

 「おや。この子は、駄菓子屋愛が足りないね。メンテナンスだ」

 何…?

 メンテナンスとは?

 おばあちゃんは、何を、どうしようと、思っていたのだろうか?

 「…っていうか、ばばあに勝手にキスされちゃったあの人たちの人権って、どうなっちゃうっていうんだ?」

 恐ろしく、なっていた。

 「これが…!これが、もう1つの駄菓子屋ソサエティの力なのか?」

 かわいそうに…。

 「ぶちゅ」

 おばあちゃんは、そこに倒れていた若い人の群れにズカズカ分け入って、次々に、キスをしていった。

 「…おお。この子も、メンテナンスが必要だね。我がソサエティの運営するあの駄菓子屋まで連れていってあげなければ、ならないだろうねえ。メンテナンスだねえ」

 「おっと…。この子は、もうダメだ。とりあえず、トリアージ」

 「この子も、かい。まったく、今どきの子は困ったねえ」

 「駄菓子屋愛は、大人になるにつれて、減っていくんだねえ…」

 「うちのおじいさんのように、エネルギー不足じゃ。早く、メンテナンスをしてあげなければならないね」

 「おやおや。この子は、駄菓子屋愛が、増えたり、減ったりだ。この子、駄菓子を、コンビニで買うようになっていたんだね?大人には、ありがちなことだね。仕方が、ないねえ。メンテナンスだ。我がソサエティの駄菓子屋まで連れていってあげよう。ひひひ」

 …おばあちゃんは、勝手にキスしながら、ひどいことを連呼していた。

 「この子は…?何?こ、この子は!オーバーヒートじゃと?」

 おばあちゃんは、キスを続けていった。

 「さあ。駄菓子屋愛を満たすために、エネルギーを、注入するんじゃ。駄菓子屋愛さえあれば、それで良い。そうすれば、我々のソサエティが、上手くいくんじゃ。あの駄菓子屋に、莫大な金が入るんじゃ。ますますの駄菓子屋の繁栄が、約束されるのじゃ!さあ、メンテナンスじゃ」

 おばあちゃんは、何度も立ち上がって、新たなターゲットを見つけてはキスし、若い人の人権を、奪っていくのだった。

 「ひひひ…。さあ、次は、誰かね?良いことをするのは、本当に、気分が良い。こうして駄菓子屋が見直されていくとなれば、やった甲斐があったというものじゃ」

 若い男の美しさは、無意識下で、高齢者に奪いとられていく。

 気の毒で、ならなかった。

 おばあちゃんが、立ち上がった。

 「あ!また、キスをするのか?」

 怖かった。

 「ああいう高齢者には、なりたくないよなあ」

 ヒビキは、一瞬、おばあちゃんから目をそらしてしまった。

 それが、失敗だった。

 「ハッ…!」

 目を閉じて、3秒後くらいだったか?

 ヒビキが目を戻すと、実に興味深い儀式がおこなわれはじめたのだ。

 「何かを、抜きとっているんだな?」



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