あいぼう
八坂卯野 (旧鈴ノ木 鈴ノ子)
あいぼう
五月雨の上がった夜でした。
私はお店の帰り際に、あなたを見つけたのでございます。
汚れた衣服に痩けた頬、痩せ細った両手足に心を痛めたものでした。
私は自宅へ連れ帰り、あなたを育てることにしたのです。
最初は嫌がってばかりでしたね。
最初は逃げてばかりでしたね。
しばらくすると私に慣れて、あなたは可愛らしくなりました。
部屋中を走り回ったり、隅でじっとしていましたね。
あなたは私が辛い時、そっと近くにいてくれて、
あなたは私が悲しい時、そっと近くにいてくれる
愛らしい顔と声をして、私を助けてくれました。
あなたは日に日に立派になって、大人になって行きました。
ふらりと外へ出かけたり、ふらりと部屋で姿を隠し、私を心配させたりもしましたね。
私が動けなくなってしまっても、あなたは良く来てくれました。
お互いに歳をとりました。
あなたに病気が見つかって、手遅れだったと聞いたとき、私はとっても泣きました。
私も最後をお迎えし、石の下へと入りました。
迎えを待つ私の前にあなたは不意に現れて、
着いてこいと背中で語り、
私を連れ出してくれました。
今は2人で静かな暮らし、幸せ溢れる素敵な暮らし。
桃源郷の片隅でいつも暮らしをしています。
あいぼう 八坂卯野 (旧鈴ノ木 鈴ノ子) @suzunokisuzunoki
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