信愛なる君へ、私の死を捧げたい

「言っておくけど、タクが俺の幸せの為に死んだら自殺してやるからな」

「な、なんでだよ! どうしてそこまで嫌がるんだよ」

「そんなの寝覚めが悪いからに決まってるだろ。例え幸せになれたとしても、その為にタクが死ぬのなら、そんなの俺が殺したようなもんだ」

「それは違う。ボクが勝手に願ったことだ。ボクが勝手に願って、勝手に死んで、その結果ショウが幸せになるだけだよ」

「うっさい。そんな簡単に割り切れるわけないだろ。いいからそういう願いのことはもう考えるなって」

「でも、ボクはどうせ死ぬんだぞ。明日になったら、死ね神に殺される。だったら、例えばショウがその体でもまともな生活ができるように願うとかしたほうが……」


 自分の為に誰かが死ぬのは嫌だ。

 それはボクも抄に対して思ったことで、きっと人類共通の感情だ。


 だから抄の言いたいことはわかる。

 しかし、ボクの置かれている状況にそれが当てはまるとは思えない。

 ボクの余命は一日しかないのだから、誰かの為に命を使うのが理想ではないだろうか。


「おいおい、昨日までの威勢はどうしたんだよ。大丈夫、タクは死なないって」


 ボクの肩を叩きながら、抄は優しい声音で励ましてくれた。


「……そういえば、さっきも死ね神に対して絶対に殺されないって強調してたよな。何か対策を見つけたのか?」

「いや? 特に何も思いついてないぜ」


 特に根拠もなく、死ね神相手に啖呵を切っていたらしい。

 今思い返しても恐ろしい状況だ。


「言い続ければ現実になるって言うだろ? それにほら、タクは俺のことを養い続けるって誓ったじゃないか。誓いを果たすために頑張って生きようぜ」


 そんな誓いを立てた覚えはない。


「……ボクの考えが甘かったんだ。死ね神は本当にボクを殺す気だ。抜けているところはあるかもしれないけど、ボクを殺すことに関してだけは死ね神は本気なんだ。それが、わかったんだよ……」


 死ね神のボクを殺すという意思だけで、ボクは何もできなくなった。

 ボクが死ね神に殺されるのは自然な事なのだと、納得させられてしまった。

 死ね神によって殺されることが運命なのだと、今では思ってしまっている。


「その割には、俺がちょっと凄んだだけで死ね神は帰ったじゃないか。大丈夫だよ、任せとけって」


 何を任せろというのか。

 抄は腕をブンブンと振り回してシャドーボクシングをしているが、それは冗談だと言って欲しい。


 しかし、抄が出てきたことによって死ね神が引いたのは事実だ。


 死ね神は、なぜここで殺すという言葉を取り消したのか。

 これも、死ね神が頑なに明かさないボクを殺す理由に関係があるのだろうか。


「とりあえず部屋に戻ろうぜ。コーヒーを淹れてあるから、それでも飲んでのんびりしよう」

「……そうだな、部屋に戻ろう」

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