キャラクター人生

「なあ、ショウ。死んだらどうなると思う?」

「何だよ、急に」

「急でもないだろ。ばあちゃんが死にそうで、ついでにボクも死にそうなんだから」


 人が死んだらどうなるのか。

 それは人類最大の謎と言ってもいいのではないだろうか。


 輪廻転生。

 三途の川。

 閻魔大王に死者の国。

 はたまた天国と地獄に神の世界。

 

 どれが真実で、どれが虚実なのか。

 辿り着いたら最後、戻ることは許されない未知の世界。


 しかし目の前には、そんな世界から帰還を果たした人間がいる。


「ショウは一回死ね神に殺されただろ? 死んだ後のこと何かわからないのか?」

「んー……?」


 顎に手を当て、以下にも考えていますというポーズで首を捻る抄。

 未知の世界を解明してくれることはなさそうだ。


「んー……記憶にないな。死ね神に殺されたっぽいことはわかるが、気付いたらこの体だったし」

「三途の川が見えたとか、天国か地獄かの沙汰を下されたとか、何もわからないのか?」

「わからないな!」


 腰に手を当てながら、なんとも清々しく堂々と、抄は言い放った。

 

 転生という常人にはできない体験をしたというのに、得たものは美少女の体だけだったようだ。

 抄にとってはそれだけでも価値はあるのかもしれないが。


「そう言うタクはどう思ってるんだ? はたして、人が死んだらどうなるのか」

「……例えばなんだけどさ」

「うんうん」

「ボク達がゲームのキャラクターだとするだろ?」

「……うんうん?」


 途端に抄の視線が怪訝なものに変わる。

 それを無視して、ボクは話を続けた。


「ボクはボクの意思で人生を歩んでいるつもりだけど、実は外から別の存在がボクを操作しているだけなのかもしれない。世界の外から精神だけをこの体に繋いでるとか、神様みたいな上位存在が命令を送ってるとか、方法はなんでもよくて。とにかく、ボクが死んでも、ボクを操作しているプレイヤーは死なない。キャラクターの生死とプレイヤーの生死は全くの別物だからな」

「それは……そうだな」

「だから、ボクが死んでもそれは終着じゃない。プレイヤーは変わらず存在していて、そしてまたプレイヤーの意思一つで新たなボクがこの世界か、はたまた全くの別世界に誕生するなんてことも……」

「んーーーー?」


 抄の視線が怪訝から奇異の目へと変わっていく。


「べ、別に、本気でそんなことを考えてるわけじゃないからな! ただ……昔にちょっと思いついたことがあったから言ってみただけというか……」

「むしろ、なんでそんな奇怪なことを思いつけるんだよ……」

「輪廻転生ってあるだろ? あれがちょっとゲームっぽいなって思ったことがあって……。輪廻転生の概念だってさっきの思い付きとそう大差ないだろ?」

「んー?」


 輪廻転生とは、死んだら別の存在に生まれ変わるということ。

 つまり、輪廻転生においては魂という物が存在し、死ぬ度に魂は新しい体に定着するということだ。

 専門家に言わせればこの論は正確ではないかもしれないが、大筋は間違っていないはずだ。

 

 そして魂をプレイヤーに、体をキャラクターとして置き換えたのがボクの論だ。

 ボクが死ねば、その意識はプレイヤーの元へと戻る。

 そしてプレイヤーが再びゲームを始めれば、キャラクターとして再びボクが生まれる。

 ボクが死んだら別の存在としてのボクが生まれるという点では、輪廻転生とそう変わらない。


 ボクはそのことを抄に説明してみた。

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