8、ウゴクヨミヒル『僕と彼女のカーニバル』
ウゴクヨミヒル『僕と彼女のカーニバル』
https://kakuyomu.jp/works/16818622170345952007
▶冒頭1万字以内に出てくるなかで一番好きな登場人物と台詞
糸城舞 「ひ・み・つ」
▶︎1万字程度としてキリの良い話数
少々オーバーしますが、<文通3> までお願いします。
▶︎具体的な想定読者
アスペルガーっぽい人 病んでる人
*
では、8人目。ウゴクヨミヒルさん。
ちょっと長いので、ヨミヒルさんとします。
小説執筆歴は15年以上のベテランさんです。
小説作品の他にも、創作論として、『小説を活用した発達障害の改善論』を書かれています。
https://kakuyomu.jp/works/16818622171786170862
自身の特性を把握したうえで、自己と向き合う契機として小説執筆があったようですね。
本作の想定読者も「アスペルガーっぽい人、病んでる人」とのことです。
それでは、本題に入っていきましょう。
まずは、言いにくいことを言うところから。
実は私、ヨミヒルさんの参加希望のコメントを目にしたときから、ちょっと警戒を抱いていたんですね。
なぜなら、コメントの冒頭が「面白そうなので参加します」のみだったからです。
他の方々のコメントを読み比べてみてください。
https://kakuyomu.jp/users/kojika_charme/news/16818622171739242358#commentSection
皆さん、「初めまして」などの挨拶、自身の名前や筆歴を記していますよね。
しかし、ヨミヒルさんのコメントは、これらがないまま、作品に関する条項が書かれ、「よろしくお願いします」の一文で結ばれています。
葛西さんと梶野さんは以前からのお付き合いなので、自己紹介がないとはいえ、
彼らふたりを含めても、ヨミヒルさんが一番短いコメントだったんですよ。
ヨミヒルさんの書き方からは、俺の作品、置いとくからよろしくね、という印象を受けました。
カクヨム作家同士の交流が目的ではなく、自作への評価を求めている。そんな印象を受ける作者さんは、往々にして、少しでも批判的な内容を述べると、キツい言葉で小鹿を非難してきたんですね。
ただの素っ気ないだけの人であれ、と願いながら、作品を読み始める前に、対象部分をコピー&ペーストしてメモに貼り付けました。
なんか長いな、と思って、カウンターにかけてみたら、約16,500字。
規定1万字に対して、60%以上も超過していました。
このオーバーに関しても、コメントでは、「少々オーバーしますが、<文通3> までお願いします」とあるのみです。
もう、本文を読む前から、警戒マックスなんですよ。
小鹿への思いやり、気遣いが述べられない。感じられない。自分の「したいこと」が先行して、規定を軽視する。
さあ、そんな作者さんに感想を書いたところで、返ってくる反応や言葉は……?
と考えると、気乗りしないのですよ。むしろ怖いわけです。
棄権しようかとも思いましたけれど、明らかな無礼やレギュレーション違反があるわけではありませんから、書くには書きます。
しかし、短めで。
以下は全て戯言だと思ってください。
気に障った時点で、ブラウザバックお願いします。
では。
▶︎文章について
地の文は、多少の冗長さを感じさせますが、慣れればクドいとまでは感じない程度です。
15年書かれてきたただけあって、ここらへんのコントロールは技術として身に付いているのでしょう。
とくに、思考や行動の推移。
これまでの感想では、キャラクターをぬるぬる動かすな、と述べてきました。
ヨミヒルさんも、どちらかと言えばぬるぬる派ですけれど、その動きの選択には無駄がありません。
また、クール系主人公に余談のような情報を書き加える手法も、話の腰を折られた気分になるからやめろと書きましたが、
本作の主人公による追加の一言は、上手い具合に付帯情報に留まっています。
いずれも、作者自身が物語を進める意志を持ったうえでの描写ですから、読み苦しさがないんですね。
主人公に対する考察が深くなされているのだと、伝わってきました。
▶︎キャラクターについて
主人公の掘り下げは十分になされていますが、妹とヒロインに関しては、いまひとつでした。
たしかにヒロインは、鴉を喰らうという登場で、ミステリアスキャラですから、掘り下げていたとしても、伝わりづらいだろう、と考えることはできます。
しかし、その理屈で擁護するためには、妹を生き生きと描いておく必要があります。
今は、ヒロインはクール系ミステリアス少女、妹は兄ラブ&小さなママ少女、と、
あくまでも、記号的な「キャラ」に留まってしまっています。
過剰な女言葉が、一層「キャラ」感を出していますね。
ヒロイン登場時の、パンツ見られたアワアワも唐突ですし。
ラブコメ的な軽やかさを意図したのかもしれませんが、今一度、この少女ふたりのキャラクター性を整理しなおした方がいいのではと思いました。
▶︎構成について
全29話。
5話分を読みましたが、導入としては悪くないと思います。
鴉を食らう少女、というインパクトがあります。
しかし、読者の注意を引くネタが鴉喰い一本では、少し物足りない感があります。
16,500字をかけて、なお「ひ・み・つ」ですからね。
地の文の装飾を削りつつ、「ひ・み・つ」は8,000字程度までに消化して、新たなネタを提示しておく、くらいのペース配分だと、集中力が保たれます。
できれば、5,000字を目指してほしいところですが。
一人暮らし、との提示もありますが、注意を引くほどではありません。
*
では、短いですが、以上で。
言葉を使う技術は高いです。
しかし、それは主人公視点=作者の脳内を書き表す技術です。
主人公が他者と絡んだとき、他者の存在感が希薄になってしまっているのは、
やはり、「キャラ」として扱ってしまっているからでしょう。
創作物で、登場人物が「キャラ」として扱われていると、作品の空気が一気に作り物に感じられます。
また、現実世界で「キャラ」として扱われると、けっこう身構えます。
ややっ、これは私、この人の世界において生身の人間として扱われていないぞ、となります。
得意不得意はありますからね。あまり不得意を潰そうとしなくてもいいんですけれど。
ただ、挨拶と思いやりの言葉が添えられていたら、私の警戒はもっとマシだっただろうなぁ、という感想です。
それでは、ご参加ありがとうございました。
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