プロローグ・夏の終わり、君と語った夢の続きを【3】
「この作品、3期が決まっているんでしょ?」
「そうそう! 完結も近いから話題に上がってるの!」
「OPは知ってるよ? 小石正吉が主題歌歌ってる」
ここは東京にある写真詐欺で度々ネットを騒がせる某喫茶店。春雨の降る中での喫茶店に入り、お互いの近況や最近のアニメや漫画の話しをしていた。
わたしは東京に住む一般人でありただのオタクだ。
目の前にいる彼女は高校時代からの付き合いの親友で、彼女にとある漫画作品をオススメしていたのだ。
その名も【アミュレットナイト・サーカス】という、国内売上2300万部の超人気漫画作品だ。
彼女の流行はやや遅れてやってくる。本人の仕事が忙しい、というのもあるけれど大体流行りが過ぎ去った頃に作品を一気見してハマるということが多く、いつもいつも「あぁああ! 何で私はリアルタイムを逃したんだぁクソガァァ!」とSNSで発狂していたりする。
わたしはというと、知らない作品でもいろいろ観ているため発狂することはほとんどない。……のだが、アミュレットナイト・サーカスがアニメ化すると聞いた時は狂喜乱舞の五体投地。紐無しバンジーしても生きてられる自信があったくらいには気が狂いそうになっていた。というか、なった。
原作から好きだったものがアニメ化したりすると親目線というかなんというか、好きなものを語れることが増えるから嬉しい、だけだと思っていたがそんなことはなかった。何度夢かと思ったか。新着情報はなんてないのに毎日SNSのアカウントを何度も見に行ったことか。
「ED曲さ、私が好きなエロゲで主題歌歌っている人なんだけど……」
「わたしもクレジット見た時はファッ!? ってなったよ」
「古のオタクになんて劇物ブッ込んでくるんだか…」
そんな会話をしながら再び【アミュレットナイト・サーカス】の話しへ戻った。
あらすじは━━━
主人公・アッシュは幼い頃に姉をヴァンパイアに殺され、ヴァンパイアへの復讐を誓い、成長した彼は秘かにヴァンパイアを狩る組織〈ガーディアンズ〉へ入団する。
〈ガーディアンズ〉の試験に合格し
━━━というのが、ざっくりとした導入だ。
試験会場で同期であるレーンやクレアと出会い、共に【アミュレットナイト・サーカス】に行くこととなるわけだが、3人とも仲が良くファンからは〝三原色トリオ〟と呼ばれている。
ちなみに何故『三原色トリオ』なのか、というと彼らのパーソナルカラーがアッシュが赤、レーンが青、クレアが緑或いは黄色だからだ。
「そろそろ一気見しようと思ってたし。で、おまえさんは誰が推しなの?」
「アベりゅんもいいけど、シャーロットさんもわたしはすきー!」
「ほあ~ぱいがでけぇ…。ちなみに夢女子人気はだれ?」
「ジークくんかな? ほらこの子。オラオラ系で主人公のアッシュのライバル的存在」
スマホで公式サイトを見ながらキャラクター説明をしつつ、二次創作の話しへと移って行った。
「3人トリオならこの黒髪の子がライバルじゃないの?」
「ライバルっていうとライバルではあるんだけど、レーンはどっちかっていうと同期感がある。あとガキっぽいからなぁ」
レーンは【アミュレットナイト・サーカス】所属になった歳は15歳だ。アッシュは17歳、クレアは16歳。そういう年齢的な背景も考えると末っ子感が否めないのがレーンの人気なところでもある。
「クールに見えて生意気で子供っぽいところとか。むしろアッシュの方が大人な対応するよ」
公式サイトのキャラクター一覧をスクロールしていく彼女は突然「あっ」と声を発し手を止めた。
「いやだ~~~この子可愛い! ちょ~~~~タイプ~~~~!」
あぁ~……確かにアンタが好きそうな女の子だわね……。
彼女の目に留まったのはキャラクター一覧の最後の欄にいる明るい茶髪を頭の中間くらいで結ったツインテールと空色の瞳をした少女。作中内では中の中とされているがどう見ても美少女である彼女は、
「ルミアちゃんか~…かわい~」
割と最近アニメでも死んだんだよね!
ルミア、というキャラクターは【アミュレットナイト・サーカス】主人公・アッシュの幼馴染で彼の生い立ちを知る少女。
穏やかな雰囲気とアッシュを心配しながらも温かく送り出してくれた聖女とも呼ばれている。実際村の聖教会でボランティアをしていてシスターの真似事のようなことしている。手紙のやり取りをアッシュとはお互い両想いに見えていた。
そんな中、ヴァンパイアが彼女の住む村にやってきて村は壊滅。見せしめのように聖教会の十字架に彼女の遺体は吊るされていたのを里帰りしていたアッシュ一行が発見してしまいアッシュの中にあるヴァンパイアへの復讐心に更なる油を注ぐ結果となった。
と、上記のことは彼女の悲鳴を聞きたいから言わないでおこう(愉悦)いやー…たのしみだなあ!
そうしてわたしたちはアニメやらゲームやらの話をして今日の会合は終わった。
それから4ヶ月が経ち夏真っ盛りの時期に再び会うこととなった。
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