#S-01 自己紹介

「どうも。紹介に預かりました。要注意人物として、捕まり、この場所に4年間幽閉され、そして、社会復帰として、3年教育された後に、なぜか、この部署の責任者を任された、元秘匿暗殺部隊所属。現要注意能力者回収班。“梅津うめつ 紫苑しおん”だ。みんなよろしく頼む。」


盛大な拍手で部屋は包まれる。どうせそんなことも思っていないだろうに。


「はい。自己紹介ありがとうございました。では、この、要注意能力者回収班所属、能力者管理部署が出来て、責任者や、人がかなり集まったことに対して…乾杯‼︎」


と、長いえんぎが始まった。


飲め飲めと、酒を注がれる。今はこの幸福な時間に飲まれてもいいかなと思ってしまう。


でも。だめ。こんなところでこの能力を解放したら、とんでもないことになる。しかも、ここは、人が多すぎる。



その後。みんなは酔い潰れて、寝てしまっている。俺は、そこから離れて、この建物の屋上に行く。


「はぁ…。どうしてこんなに、複雑な気持ちなんだろう。俺はもう幸せだとか、悲しさだとか、同情だとか。“感情エモーション”を全て消し去ったはずなのに…。」


自分の気持ちに揺らぎが出ているのか?


「なぁ…。お前はどう思ってる?」


そう、もういないに語りかける。もういないといっても、実感はないが。急にいなくなって、もう生きているのかも覚えていない。


「いいんじゃないですか?人間らしくて。」

「誰だ?」


そう言って、後ろを振り向く。


そこにいたのは、俺の歓迎会みたいなので、乾杯を言った女だった。


「…えっと、誰だっけ。」

「もー忘れちゃったんですか?美奈みなですよ。矢咫蔵やたぐら 美奈みな。」

「あぁ…ありがとう、美奈。」

「いえいえ。というか…ここで何してるんです?」

「それは…。」


言葉に詰まってしまう。あまりあれこれ言いたくないし、かと言って、嘘もつきたくない。


数十秒かけて出した回答は…。


「夜景を見ていたんだ。ここから見える星が綺麗でね。」


嘘でも本当でもないことを言った。


「あぁ、そう…ですね…。」


そこで会話は途切れてしまう。


やっぱり、人間との距離というのは難しい。



次の日。


「見回りに行ってきます。」

「おう。いってきな。…というかお前さん、あれだけ飲んだのに二日酔いじゃねぇのか。」

「あぁ。酒は得意でね。」

「いいなぁ。俺なんか、三杯ですぐベロベロになっちまう。」

「…。ほどほどにな。」


そう言って、見回りに行く。疲れる。



「おい、ここにあった、ハート型のアクセ知らないか?あれ、能力機に見せかけた、偽物なんだよ。」

「え、そうなのか?」

「そうなんだよ、どこに行ったか知らないか?」

「いや、しらねぇな。誰か持っていったんじゃないか?」

「探してみるか…。」

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