第十六章:Payback Time/10

 レナードが殿しんがりを務める中、バンッと観音開きの扉を開けて部屋に飛び込んだレイラは社長室の手前、面会受付のある広間へと足を踏み入れていた。

「――――よう、遅かったな姉さん」

「ミリア……!」

 すると、そこで彼女を待ち構えていたのは――――他でもない彼女、ミリア・ウェインライトだった。

 彼女に向かって油断なくベネリM4を構えるレイラ。すると彼女はそんなレイラに対し「おお、怖い怖い。愛しの妹に銃を向けるのかい?」とわざとらしく肩を揺らしてうそぶいた後、

「――――あの時も、アンタはそうだった」

 と、突然神妙な色に表情を塗り替えながら、ドスの効いた低い声でレイラに凄む。

「あの時……?」

「そうだ、あの時だ。アンタはあの日、必ず帰って来るってアタシに言った。それなのに……アンタは、帰って来なかった」

 戸惑うレイラに、ミリアは低くした声で静かにそう言う。

 彼女の言う『あの日』というのは――――きっと、レイラがペイルライダーの施設を出た最後の日のこと。秋月恭弥の暗殺任務を帯びて施設を発ち、そしてそのまま帰らなかった……あの日のことだ。

「アタシはさ、アンタのことが好きだった。大好きだったんだ。独りぼっちだったアタシの姉さんになってくれた。アタシは嬉しかった。アンタの為なら、アタシは何だって出来たんだ。

 ……なぁレイラ、アンタはずっと一緒に居てくれるって、そう約束したよな? なのに……なのに、なのにアンタはアタシを捨てた!」

 腹の底からの雄叫びを上げ、ミリアはバッと懐に突っ込んだ右手で愛銃、キンバー・カスタムTLEⅡの自動拳銃を抜く。

 抜いた拳銃の銃口を眼前のレイラへと、自らの姉へと突き付けながら、ミリアは叫んだ。心の底から滲み出る怒りと悲しみと、そしてどうしようもないほどの深い愛を織り交ぜた……ドス黒い感情を剥き出しにした、魂の叫びを。

「アタシを捨てたアンタを倒して……今日こそ、アンタを超えてみせる!」

「っ……!」

「勝負だ、レイラ・フェアフィールド! いいや……セカンド! このアタシ、トゥエルヴが相手だッ!!」

 ――――戦いは、避けられないのか。

 何がどうボタンの掛け違いが起こってこうなってしまったのか、今となっては知るよしもない。レイラ・フェアフィールドとミリア・ウェインライト、セカンドとトゥエルヴ。二人を繋いでいた運命の歯車はいつしか狂い始め、そして……こんな結末へと至ってしまった。

 もう、姉妹の戦いは避けられない。宿命という重い枷に縛られた姉妹の戦いは、ペイルライダーの名を持つ姉妹の戦いは、どう足掻いても避けられやしない。

 だから、レイラはそっとベネリの引鉄に指を掛けた。

 撃ちたくない、それでも撃たなければならない。彼女が憐の、最愛の彼の妨げになるのだとしたら……例え妹であっても、撃ち抜いてやる。

 レイラはそんな悲痛な覚悟を胸に、そしてミリアは姉を超えて、自分を捨てた姉に復讐するというドス黒く、そして何処までもむなしい思いを胸に――――宿命の姉妹の決闘が、今始まろうとしていた。





(第十六章『Payback Time』了)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る