『のろい』

やましん(テンパー)

『のろい』


 『これは、ギャグ・オカルト・ファンタジーであり、すべて、フィクションであります。たぶん。』



 ある、深夜も深夜、昔なら、うしみつどき、と、呼ばれる、だいたい、午前2時から、2時半にかけての時間帯で、陰の気が強く、鬼門の方向から幽霊が現れやすいと言われた時間帯であります。


 やましんは、しかし、だいたい、まだ、起きている事が多くて、ベートーベン先生やら、シベリウス先生やら、シューベルト先生やら、まあ、なにがしかの音楽が鳴っておりまして、テレビもまだ活動中です。


 しかし、この晩は、翌日が内科や耳鼻科の診察日であったことから、少し早く睡眠導入剤を飲み、なんとか、寝かけた時間でした。


 夜中の地震や、暴風や、飛行機や、宇宙船の墜落事故や、隕石の落下とか、ミサイルの攻撃などにかんがみて、やましんは、カーテンは閉めて寝ます。


 ガラスが砕けた場合、多少は防御になるからです。


 しかし、幽霊さんというものは、テレビのオカルト番組などでは、時々、矛盾がありますが、こうした障壁は、問題にならないと思われます。


 そのばんも、とつぜん、昔の武士のような姿が、ふっと、室内に現れたのです。


 幽霊さんは、珍しそうにへやの中を見渡したあと、眠っているやましんの脇にたち、体を屈めて、その、ばかな顔をのぞき込もうとしたのです。


 すると、その瞬間、やましんが、突如、叫んだのです。


 『ぎょわあ〰️〰️〰️〰️。ぐぎぐぎがぐうう。おわ〰️〰️〰️❗ぎょわ〰️〰️〰️。たらこおまあ。』


 幽霊さんは、びっくりして、いったんたじろぎました。


 『な、な、こやつ、なにもの。なんの、呪文か。まさか、呪われたか⁉️』


 しかし、そこは、ほんらい肝の据わった幽霊さんのこと、ふたたび、再挑戦し始めました。


 幽霊さんは、やましんさんの、命を吸いとろうと、していたのです。


 しかし、こんどは、なんと、やましんの周囲を取り囲んだ、ぬいぐるみさんや、ロボットさんが、騒ぎだしました。


 『ぎあ〰️〰️。警報。警報。やまちん、危険。おきロー。警報。警報。ぎわ〰️〰️〰️〰️。』


 それから、ぬいぐるみさんたちは、幽霊さんに飛びかかりました。


 『うわ、な、なんと、怪しげな。ここは、幽霊屋敷か。はたまた、鬼の住み処か。』


 武士のような幽霊さんは、ぬいぐるみさんたちを、避けようとしますが、なかなか、うまくゆかない。


 そこで、やましんが、起き出したのです。

  

 おくすりのおかげで、ボンヤリしていて。あまり、事態がわかっていません。


 『わあ。なんだあ。侵入者かあ。LED光線砲を、どうぞ。しゅわー。あや、ベートーベン先生の第5シンフォニ―も、受けてみよ。じゃじゃじゃじゃーん。おわ、なんという、あやしの姿が。』


 『ぎわあ❗ な、なんだ。くそ。これしき。きさま、わが、のろいを受けてみよ。ぶわ〰️〰️〰️。』


 なんだか、わからない、衝撃波のような揺れが襲います。


 『わあ、地震だあ。』


 『ずびん。緊急地震速報でし。伊豆諸島付近で地震。関東、東海、中部、近畿地方のかた、強い揺れにご注意ください。』


 『あわ。じしんだ。』


 『なんの、天下分け目の戦をくぐった拙者に、じしんなど、なんのおそれるものか。』 


 『うわあ、あなた、なに?』


 『われこそは、清和源氏の流れにある一族の親類にして、石橋山の闘いにやぶれ、下総に下りしが、おりあしく、病に倒れ、誰にも見つけられることなく朽ち果てた。そなた、昨日、われが亡骸の上をふんだであろう。ゆるさん。』


 『んな、わかるわけないです。お気の毒かとは、思いますが、そういうひとは、たくさんいるでしょう。』


 『代表して、呪われてほしい。』


 『そんな、ご無理なこと。もう、千年もたつんだから。』


 『そこは、よくあることである。』


 『いや、よくあっては、困る。人は、人に呪われずに生きることは難しい。あなた、だれにも、呪われてないと、天に誓えますか。』


 『いや、まあ、多少はある。しかし、武士は偉いのだ。』


 『だから、それが、間違いです。天は人の上に人をつくらず、ひとの下に人をつくらず。』


 『いやあ、わが、怒り収まらず。ともに、地獄にまいれ。』



 パカパカパカパあ〰️〰️〰️〰️



 突如、進軍ラッパがなったのです。


 みれば、ごき大将軍が、何万、何十万と現れたのです。


 『我が家の主の危機に、助太刀いたしますごき〰️〰️〰️〰️〰️❗』


 さらに、いえネズミ軍団が、さらに、その、倍以上現れました。


 なんと、さらに、さらに、その背後には、野良猫軍団の旗記が見える。


 『な、な、な、ここは、なんと、化け物のそうくつであったかあ。あや、日ノ出だ。やむを得ず。我に、利あらず。』


 幽霊さんは、消えて行きました。

  

 やましんさんも、また、寝てしまいました。



 さて、果たせぬうらみを抱くものたちは、この世に、数限りなくいるものです。


 みな、うつうつはしながら、静かに生きているのであります。


 成功したかたは、よく、お考えくださいませ。


          合掌

 




 


 

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『のろい』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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