第15話 何となく変えてくれると思っていた
荒廃した。
私はその景色を歩きながら、戦争は終わったのだと思った。
だけど、このようになった背景を私は知っている。
ある政治家が、国家に危機が訪れており、その危機を乗り越えるには敵を排除せよ、と言う。
その言葉は勇敢な言葉なのであったろう、若者の一部が熱狂的に支持をする。
私は知っている。
これは、多数に見せるようにしているだけだ。
この国の人の危機は、その政治家らによって意図的に創られたものである。
だけど、私には彼らを倒すだけの力はなかった。
ただ、拷問されないように、捕まらないように、怯えるだけの日々だった。
私は歩く。
「あの人なら、何となく今の状況を変えてくれる」、と言っていた若者はどうしているのだろうか?
この光景を見て、自分が間違っていたと、気づいてくれているだろうか?
もし、気づき、傷つくのであれば、その過去を反省し、本当の意味で向き合って欲しい。
その中で、大きな悩みもあり、苦痛もあるだろう。
そして、乗り越えた時の喜びも。
だけど、そのことに目を向けることができなければ………………………。
悲劇は繰り返されるだけであろう。
私は歩く。
声を聞く。
「私は間違っていない!!! 間違っているのはあいつらだ!!!」
いつかの若者の顔に似ている。
少し年をとったのであろうか、だいぶ老けているように感じる。
顔が若干ではあるが、醜く感じる。
あの時の若者は、綺麗で純粋な顔をしていて、まるで、未来に対して、希望を抱いているようであった。
だけど、その面影はない。
妄信する者と化している。
いや、希望に
この若者だった者は、もう乗り越えられないのだろうか?
私は歩く。
若者だった者の声から離れるとともに、若者を囲っていた者達は、彼に酷いことをしているだろう。
ある政治家は戦争の終わりに命を絶ったが、そうであったとしても、その傷跡は命で償えないほどに重く、長く、刻まれるだろう。
ある政治家に問えるのなら、問いたい。
お前の今の状態や理想が、本当の意味での強さなのか、と。
私にはそうは思えなかった。
弱い自分を隠すだけの愚か者であり、臆病者でしかない。
その仮面の下の怯える顔、強さに憧れるだけのただのひ弱な存在であることを隠す意味がどこにあるのだろうか?
私は強さに憧れない。
弱さを受け入れない強さに価値はない。
私は歩くのを少し止める。
この景色を作った者達に、問いたい。
この景色に正義はあるのか?
だけど、誰も本当の答えを言ってはくれないだろう。
私は振り返る。
その若者だった者は、人々によって、帰らぬ者となっていた。
その若者もまた、自分の幸せを願ったのだろう。
何を間違えたのか?
自分は間違えていないと思っているのだろうか?
分からない。
だけど、自分を強く見せたとしても、幸せにはなれないことだけは分かる。
私は思いを馳せる。
こんな馬鹿な戦争を起こす人の愚かさに。
国の愚かさに。
社会の愚かさに。
だからこそ、私は心の中で思う。
希望に縋るな、誰かが国を変えてくれると思うな、理想は抱けど現実を見ろ、そして、人は失敗から逃れることができないのだから苦悩してでも失敗と向き合え。
未来はバラ色ではない。
だけど、その地面についている足で、景色を見ながら、しっかりと一歩ずつ景色にあるものを無視しないように、歩くしかない。
私たちにできることは、それなのだから。
私はまた、再度振り返りを戻し、一歩、歩きだす。
青い空を見て[詩を書いてみた] 秋月良羽 @1192133816031871202102
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