写真をきっかけにはじまるSFチックで穏やかな物語です。
前半を読んでいると直観的に夢の中のような感じがして、元々夢の話ということですごくうまいなと感じました。夢を夢みたいに、しかも人の夢をそれらしく書くことって難しいです。
読んでいる時に少し物足りなく感じたことはもっと情景を知りたかったように思います。太田さんの書く当時の風景をもっと精密に見てみたいなというのが正直な感想です。ただこの物語は子供の視点なので精密に描写するとキャラクターとの齟齬が出るし、なによりあとがきの物語の種を知るとこの柔らかな描写がベストなのだと感じました。
届くことはなかった友人への書き残しとして、当時の感覚をそのままにしたような書き味は疑いようもなくベストでした。
おすすめです。