男子校に入学したはずなのに、一大イベントの体育祭を半分見逃した件
俺が保健室のベッドで目を覚ましたときに告げられたのは、俺のクラスとカオリのクラスの反則負けだった。
「私は無罪ですわぁ!」
レイナが連行されていくが、恐らくユウリはお説教が嫌で体育倉庫だろう。誰よりも長生き……生きてるのか?しているのに、こういうところは子供っぽいよな。
「それで?なにがあったんだ?」
俺が目を覚ました時、めちゃくちゃ近くで俺のことを覗き込んでいた親友二人に尋ねた。
「い、いや、何もしていないぞ!ただユウキが顔を近づけていたから、私は見張っていただけで……。」
「違うわ!先に顔を近づけたのはアオイが先よ!」
どうやら俺は知らないところで貞操の危機に合っていたらしい。……危機だけだよな?
その時々に避けられない理由があったとはいえ、もう二人とは……。いや、これ以上考えるのはよそう。
「そうじゃなくてだな。あのあと、騎馬戦でクラス丸ごと失格になった理由を聞きたいんだ。」
「うちも知りたいんだが……。」
俺が言うと、同じく隣のベッドで寝ていたらしいカオリが、シャッとカーテンを開いて話に入ってきた。
「まず、うちらのクラスだが、ユウリが『世界最強の141センチ』をやっつけるのに使った包丁がまずかったらしい。」
よくそこまであからさまな殺人未遂で失格で済んだな。ていうか、「まずかったらしい」って、らしいとか抜きでまずいってわかるだろ。
「うちらのクラスは何も反則とかしていないぞ!」
「それがしていたらしいのよ。」
無罪を主張するカオリに、ユウキが告げた。
「それについては、私が。」
最近出番が少ないからか、やたら不機嫌なユミコが出てきた。
「この学校の騎馬戦の歴史は長く、故にルールも複雑化している。」
ユミコがドンッと音を立てて俺の上に置いた広辞苑のような本には、「常楚高校公式騎馬戦ルール」とある。
「特に、おととしの三年生の代にひどいのがいたため、細分化した。」
と、最初の数ページをめくり、そこには「ここから先平成○○年度追加分」と書いてあった。歴史関係なくほとんどその「ひどいの」のせいじゃん。犯人は何となくわかるけどさ。
「そのうちの一つに、こういうのがある。『騎手は馬から体が完全に離れてはいけない。』」
おそらくシオリさんが今年のカオリと同じことをしたのだろう。カオリを素手でボコせるあの人なら十分やりそうだ。
「罰則も必然的に重くなった。」
本を借りてぺらぺらめくると、「発明品第37564を使用した場合、使用者を絞首刑にする」などという物騒なものが出てきた。これ本当に高校の体育祭のルールブック?
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。」
カオリが頭を抱えてうずくまっている。というか、君は自分の馬をやっていた女の子の心配とかしないのかね。
「その子は無傷。」
俺の心を読んだユミコが教えてくれた。よかった、あんなかわいい子にけがをさせたら一生後悔する。
「旦那様、私は?」
こういうところが面倒くさくて嫌いです。
そう念じると、ユミコがむすっと怒った顔をした後に、少し微笑む。
「そんなこと言いながら心の底からは嫌ってこない旦那様が好き。」
そこまで読むなよ……。
って、痛い痛い。病み上がりの俺になぜかアオイとユウキが肘鉄を入れてきた。やめろっての。
「ちなみに、他のみんなはどうなったんだ?」
俺は、無事に見れていた三人に、話題を変えるためにも話を振った。
「レイナは先にパン食い競争のパンを試合開始前に食べきって優勝してた。」
それで優勝でいいのかよ。
「来年はなくなるだろうな、この競技。」
「そりゃそうだ。それで?ユミコとかヒカル先輩とかは?」
「別に。」
自分のことも聞かれると思ってもいなかったのか、ユミコが顔を赤く染める。
「それが、お師匠様ったら、全部のボールを超能力でかごに入れたまではよかったんだけど、そのあと暇になって、相手選手をかごに入れたら、失格になっちゃって。」
ころころ笑いながらユウキが話すと、ユミコは、
「ユウキ、今日の習字の課題は、漢字の『一』を一万回。ただし、美しくないのはノーカン。」
という大人げない仕返しに出た。
「ピカピカはダンス、めちゃくちゃ楽しんでたよ。」
ヒカル先輩とは俺より前から面識のあるアオイが教えてくれる。
「ていうか、あのダンスのクオリティ、チア部に迫るものがあったんだけど、クラスでどれだけ練習したんだろう?」
ここではあまり出てこないが、チア部の練習は決して甘くない。というか、慣れてきた今でも平気でゲロ吐きそうなほどハードだ。それと同じクオリティーって……。
「私の友人は、三回はケチャップを吐いたって言ってた。」
そういえばユミコも三年か。今回は最初からコンプラに配慮しているらしい……って、そうじゃなくて!
「そこまでやって、あの人、クラスの人からいじめられたりとか……。」
「あんなにピュアな子をいじめるとか、いじめる方が心が痛むからないない。」
なるほど、動物の赤ちゃんが敵に襲われないようにかわいいのと同じだね。違うと思うけど。
「そんなこんなで、無事……でもないけど、もう体育祭は終わったぜ。」
そうだったか……。
「ちなみに、勝ったのは東軍だ。」
待って何その区切り。クラス対抗じゃなかったの。
「なにいってるの?我ら西軍、絶対に秀吉様の遺志を継ごうって話したじゃない。」
ユウキが俺を心配するように言ってくる。そして俺はそんな話はしていない。
「そうだぞカヅキ。クソ、小早川の裏切りさえなければ……。」
関ヶ原じゃねーのよって突っ込めばいいのだろうか?
「はっはっはっ、やはり家康様についていくのが正しかったのだ!」
カオリまでおかしなことを言い始める……。
もしかしてパラレルワールドにでも来てしまったのだろうか……。
俺は気が遠くなっていくのを感じた。
「ヘアッ!」
気合で跳ね起きる。
……。
「なんだ、夢か。」
作者よ、夢落ちは一番嫌われるというセオリーを知らなかったようだな。
「……って、アレ?」
おでこに痛みがあり、ベッドの俺の上にアオイとユウキが頭を押さえてうずくまっている。
そのあと、まったく同じ会話が繰り返された。タイムループでもなく、本当に東軍、西軍に分かれていたらしい。いつの間に……。
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