十七、武蔵日菜
「僕は、生きていくことにしたんです」
尚也さんは、さっきそう言っていた。
自分の人生を、何もかもが間違いだった人生、そう表現していた。
苦しみというのは、抱える本人にしかわかり得ないところがある。
「きっと、この先いい事がありますよ」なんて、無責任なことも言えない。
それでも、彼の心が、少しでも救われることを祈らずにはいられなかった。
「会」では、焚き火を消し、各々がテントに入って就寝の準備をしていた。れおさんだけが、テントの外で、焚き火の後処理をしている。
時刻は、午後十時を過ぎていた。
男性用のテントの中では、太郎くんが、尚也さんの着替えを手伝ったり、顔を拭いたりしているだろう。
こちらの女性用のテントでは、上からランプを吊るし、もう二人して寝袋に包まっていた。
いざ横になると、自分が想像以上に疲弊していることに気づいた。今日は、すぐに寝入ることができそうだ。
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