第10話 3月11日 エピローグ
今日、僕は渚と共に、この学校を卒業した。
あの日、1月10日以降、暦は問題なく進んでいった。
彼女との関係は、もちろん今でも続いている。
彼女はやはり、僕に色々気づきを与えてくれた。
いつも何気に帰っていた帰り道。
たまに少し前を歩く彼女。
最近になってやっと気がついた。
彼女は歩くのが少し早い。
僕が彼女を無視して帰った1月10日、皮肉にも、僕と帰らなかったおかげで彼女は生きていたのだ。
「拓海!ほら、こっち向いて!」
スマートフォンの内側のカメラを向けて僕の肩を寄せる彼女。
「ハイ!卒業おめでとうー!」
僕らは満面の笑みを写真に残した。
卒業式が終わり、いつもの帰路に着く。
「高校、同じとこ受かって良かったな」
「それ私の台詞だからね!拓海の方が成績悪かったんだから。ヒヤヒヤしたよ。ほんと」
呆れつつも、彼女は笑顔を欠かさない。
「ちょっと変な話してもいい?」
急に雰囲気を変えた彼女。
「え?うん。いいけど」
少し自信が無さそうに彼女は話す。
「あのさ、私の誕生日、告白してくれたじゃん。」
「うん、そうだね」
「私、あの日の夜、、、変な夢を見たんだよね」
「、、、夢?」
「うん。おかしな話だって思うかもしれないけど、私が事故で死んじゃって。でもそれを助けてくれる夢」
驚いた。
「実際、その日事故はあったみたいだし、それと混合してるんじゃない?」
「ううん、違うの。事故の話は、次の日学校で聞いたから。どうやって助けてくれたのかは覚えてないけど、、、拓海が、拓海がとても辛い思いをして助けてくれたんだ」
彼女は自分でも何を言っているか分からないという表情で、でも少し申し訳なさそうな顔をしていた。
「そっか、夢でよかったね。僕はそんな辛い思いはしてないよ」
彼女は少し涙ぐんでいた。
そっと彼女を抱きしめる。
今度は僕が励ます番だ。
「ありがとう、拓海。なんかごめんね、変なこと言っちゃって。でも、夢だけど、、、助けてくれてありがとうね。」
その感謝の言葉に、僕が励まされてしまった。
「全然!まあとりあえずあれだな、改めまして!ふつつかものですが、高校でもよろしくお願いします!」
「もー、その台詞真似しないでよ!」
彼女は涙をぬぐって、笑顔を見せた。
僕の家の屋根が見えてきた、帰り道、もうちょっと長くてもいいのにな。
1月10日 @KAIJIN2004
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