第33話「偉い人たちの事情(帝国)」
帝都。
皇城中央部───地下宝物庫にて、
「アーティファクトだとぉぉぉぉぉぉおおおおお⁈」
響き渡る、帝国が第一王子の怒号。その声の先では、掴み上げられているのは、宝物庫の中にあふれる闇だまりのような黒装束の少女。
「ぐ……が、は──はい。間違、い、ありま───せん。殿下……」
「……言い訳ならまだしも───デマを吹聴するとは、俺を甘く見ているのか⁈ えぇおい‼ リズネットぉっぉおおおお」
ギリギリギリ……!
さらに圧力が込められていくと、線の細い儚げな印象を与えるリズネットの首は今にも千切れそうだ。
「も、申し訳も───……」
「馬鹿が! あれだけ大口をたたいておきながら失敗しただと! 何が確実だ! 何が暗殺者ギルドの手練れだ! ふざけるなよ、このくそアマがぁ!」
苦しむ少女の顔をすら楽しむようにして、被虐的な表情を浮かべた王太子は宝物庫の奥に安置されている『魔王の心臓』にリズネットを押し付けようとする。
「ひ! ひぃ!」
「くくく……! リズネットぉぉお……。なぁぜ、俺がこの部屋に呼んだかわかるか? えぇ! わかるかと聞いているんだ!」
「わ、わかりません! ど、どうかお許しを───」
禍々しいオーラを溢れされる呪具───魔王の心臓が少女の髪に絡みつくように瘴気を放つ。
「ははっ! 決まっているだろう! 人の命を吸う最恐の呪具だ! 誰が好き好んでこの部屋に近寄るものかよ! だから密会には好都合なんだよ───」
そして、
「お前のような浅はかで使えないクズを食わせるのに適しているからだよぉぉお!」
「ひぃぃぃいい!」
ほんの少し肌が触れただけで、魔王の心臓は久しぶりの餌が来たとばかりに喜び、装飾を鼓動のごとく跳ねさせた。
その瞬間リズネットの肌から生気が奪われていき、見る見るうちに彼女を───……。
ブンッ‼
「かは……かはぁあ!」
「ふんっ。これくらいにしておいてやる──さっさと、事の顛末を言え……つぶさにな‼」
激しく
「は、はい! さ、作戦は直前までは成功しておりました──……スパイの手を借り、手練れを送り込んだまでは問題なく遂行しておりましたが、ターゲットのカーラ姫は……その、ア、アーティファクトを装備しており……。我が手練れの技を悉く跳ね返したと聞きます……」
──な、なんだとぉ⁈
王太子の目が吊り上がる。こんな不愉快なことはないとばかりに!
「非力な姫が単独で攻撃を跳ね返したというのか⁈ ばかな、あり得んッ!」
死んでもよい駒を送り込んだのだ。生還を考えない任務ゆえ、ひとたびターゲットの眼前に立ちさえすれば殺せる───それだけの攻撃手段を与えた。
なのに───……。
「そ、即死抵抗です……。他にも複数の効果をもつアーティファクトであったらしく、」
「ッ?! バ、バカな⁈ 即死抵抗だとぉぉお??」
「は、はい……信じられないことですが───事実です」
あぁ、そうだろうさ───……だから、暗殺者どもは全滅したのだ。
だが、ことはそれだけでは済まない。
「……我々の知りえないアーティファクトが王国ごときに⁈」
リズネットがもたらした情報に第一王子は頭を抱える羽目になる。……なぜなら、アーティファクト級の装備の動向は、国家の安全にかかわる情報だ。
即死抵抗の効果をみてもわかるように、使いどころさえ適切なら、国勢すら変えうるのがアーティファクトというもの。ゆえに、帝国にせよ、王国にせよ、アーティファクトの所有者や安置されている場所を完全に把握しているのが常識だ……。
しかし、その情報網から漏れたものがあるという。……由々しき事態である。
「まずいな……。それ一つということはあるまい───」
「……はい」
───クソッ‼
このままでは、国家の安全に関わるばかりか、次なる刺客を送り込んでもカーラの排除は上手くいかないだろう。他にどんなアーティファクトが隠れているか分かったものではない。
「ええい、忌々しいッ! ただでさえ、俺の足元がぐらついている時期に───……。王国め、いつの間にそんな品を手に入れていたというのかッ‼」
このままではまずいと王太子は焦りの表情を浮かべ爪を噛む。
「まずい、まずいぞ……。カーラなど、どうでもよいが、生意気な腹違いの弟とあの女が婚姻するのはまずい……それだけはまずい!」
ガジガジ、ガジガジ……!
「くそっ! くそ、くそ‼ カーラめぇ‼ 一体どこでどうやってアーティファクトを──」
「で、殿下……。そのことに関してお耳に入れたいことが、」
「──じ、実は……露店にて、」
…………禍々しい呪具『魔王の心臓』の安置された宝物庫の最奥にて、
まさか一人の呪具師の動向が話されているなど思いもよらないだろう。
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