呪具師ゲイルの独立
第32話「偉い人たちの事情(王国)」
第二章開始です!
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─── 本編です ───
王城───カーラ姫の居室にて……。
直立不動の姿勢のまま、分厚い報告を手にした護衛騎士ビビアンが、一定のトーンを崩さないまま、一気に報告書を読み上げた。うっすらと浮いた汗を見るに、かなりの長時間この姿勢で報告を続けているのだろう──護衛騎士とはいえ、たいした忍耐力の持ち主である。
「───以上が今回の暗殺未遂事件の顛末です」
「へ? え? ゴメン……全然聞いてなかった」
ずるぅ! 報告書を挟んだクリップボードを手にしたビビアンが盛大にずっこける。
「いたたた……。アンタ、このクソ姫ぇ! 30分もずっと喋らしといてそれはないでしょ!」
「いや、だって長いんだもん」
ぶっすーとふくれっ面のカーラ姫。
「いや、お前がその顔するのおかしいからね? 私が怒る場面だからね、そこ」
「なによー。ダラダラ冗長なんだもん、もっと簡潔にまとめてよー……っていうか、クソ姫??」
ギロリっ!
「……言ってません」
シレー。
「いやいや、言ったよね? 『アンタ、このクソ姫ぇ』っていったよね? つーか、私に向かって『アンタ』? 一応、私、姫んなだけど? ドゥユーアンダスタン?」
「はいはい、さーせん。さーーーせん。……なんでそーいうとこだけ聞いてるかね、このクソ姫は」ボソっ
「いや、だから超聞こえてるから……! っていうか、口の利き方ぁぁあ!」
「さっき聞いてないっていたくせに」
「くせに? アンタちょいちょい口悪いわね!?」
チッ
「今、舌打ちしたよね!」
「あーもう、うっせぇな‼ そいうネチネチしたとこやめーや‼」
「ネチネチとかじゃなくてぇ! あーもう、話終わんないから、簡潔に一言でぇ!」
あーはいはい!
「暗殺者の正体は帝国の雇われ者です。以上終わり」
「短ッ! いや、もっと前後の情報ちょうだいよ!」
「おめぇが一言でまとめろいうたんやろが───……ったく。端的に言えば、帝国の後継者争いに巻き込まれたんですよ。暗殺者を雇った帝国の第一王子が、アンタを亡き者にして戦争の火種を作ろうとしているんですって───以上!」
「オメェとか、アンタとか、ちょいちょい無礼だからね! アンタぁぁあ‼…………って、私、巻き込まれただけ⁈」
「そーいうてるやん……」
さすがに呆れ顔のビビアン。このお姫様は情報部の分析結果のところ辺は完全に寝ていたのか聞いちゃいなかったらしい……。30分も話したのにッ───‼
「ちょ、ちょ⁈ ど、どういこと⁈ てっきり、帝国の名をかたる連中の仕業かと思っていたのに───……まさか、本当に帝国の仕業だったなんて」
「えぇ、暗殺者どもに吐かせましたので、まず間違いありません」
吐かせたって……。
「え? ど、どうやって?」
「
ニコォ。
「いや、いまルビおかしかったよね? つーか楽しそうに笑わないでよ、マジ怖いんですけど」
「さいですかー」
いや、さいですかってアンタ───。
「……それよりも。どうやら、帝国の上層部はかなりガタついているようですね。皇帝が病に臥せていると聞きますが、後継者争いが本格化しているようです」
「それよりも───ってアンタね? アタシ、王女なんだけど? 一応、アンタの上司なんだけど? YOUは理解してますか⁈」
「さいですかー」
だ・か・ら!
「あぁもう! 話が進まないから今回は見逃すけどね!」
「はは(笑)」
「口の利き方ぁぁあ! あぁ、もうーーー‼ で、帝国の後継者争いと私がどう関係あるの??」
カーラは帝国の関係者でもなんでもない。
あえて言うとすれば、将来の政略結婚の相手として、帝国の第二王子という箸にも棒にもつかない男が、あてがわれているというだけで───……あ。
「ま、まさか……」
ようやく画展がいったという様子のカーラにビビアンが頭を押さえて嘆く。
「えぇ、おそらくそうでしょうね。……姫と婚姻することで、王国の力を味方にした第二王子が帝国の勢力を増すことを嫌った勢力───……つまり、第一王子の仕業とみてよいでしょう。……第一王子としてはカーラ姫と第二王子の結婚など、自分の足元を揺らす政略以外の何ものでもないでしょうし──手口がばれて帝国と王国の関係が悪化したとしても、第一王子としては何の痛手もない。……むしろ望むところなのでしょう」
帝国の王位継承争いの巻き添え。カーラとしてはこれほど迷惑なことはない。
だが、
「……しかし、現状として帝国側は二つの手段を取ってくるでしょう。まず、正室の子にして第二王子派が、今回の件を重く見て───関係改善のための親善訪問。そして、側室の子である第一王子派による、次なる刺客……」
げ。
「ま、まだ来るの⁈」
「そりゃーそうでしょう。王が姫と帝国の第二王子との婚約を正式に破棄でもしない限り、第一王子にとって姫は邪魔者以外何ものでもありませんからね」
「ふ、ふざけんじゃないわよ! そんなら婚約破棄よ、破棄ぃぃい! 『私、カーラ姫は第二王子と婚約破棄しますッ』」
ドヤァ……。
「何どや顔してんですか? バカですか?……王が決めたことです。国同士の約束事を、そんな流行のネタみたいにポコポコ破棄できるわけがないでしょうが───」
暗殺者が情報を吐いたとはいえ、直接的な証拠は何もない。帝国が知らぬ存ぜぬを通せば、王国とて強くは出れないのだ。せいぜい「遺憾の意」を示せる程度。
戦争でもする気があればまた別な話ではあるが、現在戦争をする余裕も準備も王国にはない。
「……いま、バカって言った?」
「ですが、ご安心ください───」
「え? いや。は、はぁ……??」
安心?
安心できるわけがないでしょうが‼…………っていうか、さっきバカって言ったよね?
「まぁ、私が思うに───姫への危害は当分ありえないでしょう。なぜなら、」
─────あとがき─────
お読みいただきありがとうございます!
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久しぶりの投稿です!
コミカライズは絶賛、9巻まで発売中ぅぅううう!
200万部突破したよッ!
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