お国のために頑張りますね
帝国第一高女も、夏休み前の最後の火曜日です。
一学期の私の成績は全て『甲』です。
甲・乙・丙・丁の甲ですよ!
洋子様も、落第を意味する『丁』は一つもありません!
まぁ、とにかく安心ですね。
華族高等女学校の文子様も、『丁』は一つもありませんでした。
明日は七月二十日、明日からはお休みなのです。
洋子様は明日から七月二十七日まで海浜キャンプです。
「洋子様、水着は用意されているのですか?」
「学校指定のものを用意してます」
指定の水着って、七分袖で膝までのワンピース、色は黒で分厚く、絶対に透けて見えないようになっています。
いわゆる『シマウマ』とよばれた大正初期の水着のシマなしですね。
生地は木綿、お安くなっています、でも、華族高女はウールの高級品なのですよ。
水泳授業は近くの川辺にある遊泳所に出向くのですが、どこの世界にも馬鹿な男どもがいるようで、女学生には評判が悪いのですね。
指定の水着、私から見ると露出も皆無、何が良いのか……まぁ、体型は分かるので、スケベな視線に晒されるのが、我慢ならないという事のようです。
『指定水着』ですが、黒一色はいいのですが、生地がごわごわして……
これ以上は云いませんが、大事な所が……
評判の悪い水泳授業ですが、それでも皆さん、海浜キャンプは楽しみにしているのですね。
なぜかというと、帝室のプライベートビーチが貸し出されるのです、従って不埒な野郎は出てこない。
皆でテントを張り、昼間は水泳、夕刻からはキャンプを楽しむ、というわけです。
洋子様の海浜キャンプにあわせて、『帝室王女御用邸』も七月二十七日まで閉鎖となりました。
この間、文子様もご実家で過ごすことになったのです。
「雪乃様はどうされるのですか?」
「皇后様に夏の離宮に招待されているの、断れないわ」
「大変ですね」
「そうなのよ、慶子様にお聞きしたのですが、夜会が結構催されるとか……」
「実は夜会は免除してもらえそうなのですが、なぜか王国の国王様がやってこられて、皇帝陛下と会談なされるそうなのです」
「当然、皇后様もお持てなしの女主人として、ご一緒なされるのですが……」
「今回は王国の王女様も、始めて同行されるようなのです」
「では雪乃様がお相手を?」
「王女様は私と同じ位の年なので……」
まったく、なんで私が、お相手を務めなければならないのよ!
「お国のために頑張ってください!」
気安く洋子様は云ってくれました。
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