皇帝陛下のご機嫌な日々


 ある日、皇帝はご機嫌だった。

 皇后が、

「陛下、なにか良いことでも?」

「皇后か、実はな、雪乃嬢から、このような返事が来たのだ」


 皇后に例の手紙を嬉しそうに見せた皇帝。


「あら、『お父様』ですか、なら私は『お母様』となりますね♪」

「皇后は嬉しいのか?」

「私には娘が出来ませんでしたでしょう?陛下の側室の方にも、娘は一人も出来なかった、というより側室の方には子供さえも授からなかった」

「授かったのは私だけ、それも息子だけ……」


 皇帝の側室は一人だけ、割と皇帝は淡白で、皇后と側室を愛し、その他の女に手を付けなかったようです。

 二人の息子が生まれた以上、これ以上は後継の問題があるので、控えた、というのが本音なのですけどね。


 二人は心の底では、猫かわいがりする娘がいたら……と思ったりしていたのです。

 従って白川宮慶子を我が娘のように可愛がったりしたのです。


 その白川宮慶子が妹のように可愛がったのが雪乃……

 とにかく、雪乃は不思議に人を魅了する少女で、誰もがとても可愛がるのです。


 あのとても気むずかしい皇太后が、雪乃の前にすると、可愛いお婆さんになってしまい、冷血な皇后も、雪乃ばかりは構いたがる。

 なるほど、神の遣わした少女、その少女が、ぱっとしない下の息子を好いてくれている。

 下の息子の行く末が心配だった皇后としては、ますます雪乃が可愛くて可愛くて、雪乃の前では慈母のようになっている。


 そんな雪乃が、皇帝に『お父様』と……そして、『父への贈り物』を……

 

「皇后よ、これは雪乃が贈り物としてくれたものだ、二人で飲んでみるか?」

「いいですね♪帝国の将来のためにも、乾杯しましょう♪」


 二人はプレゼントされた贈り物で祝杯を挙げた。

「でも、羨ましいですわ、『父の日』があるなら『母の日』があると思うけど……私も雪乃さんからプレゼントが欲しいわね……」


「そう言えば慶子も貰ったと云っていたぞ、何でもスプーンに角砂糖をのせ、それに振りかけて飲むリキュールは、とても甘くて甘美な味がしたといっていた」

「もう、慶子まで!」


「しかし皇后も貰ったのであろう、女には大変嬉しい物だったと、聞いているぞ」

「そういえばいただいたわね♪」


「この雪乃さんの手紙に、お茶に誘いたいとありますね、私が代理に出てあげます♪」

「それは……皇后よ、ずるくはないか?」

「どうでしょうね」

 クスクス笑う皇后様、二人は仲良く、美酒を傾けていました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る