第二部 女学生の夏休みは大変の巻

贈り物は楽しい

岩倉姫宮対策


 七月になりました。

 文子様もお引っ越しも済み、この家に慣れたようです。

 この家は、正式には『帝室王女御用邸』と呼ばれるようになりました。


 そうそう、次の勅令が出されたのですよ。


 『帝室一族』の女性の特権として、降嫁後、何らかの理由で夫から離縁、または夫が亡くなった場合、『帝室一族』に籍をもどす。

 この話、誰がひねり出したのでしょう……


 万一ですが、私が親王殿下から離縁される、または未亡人となっても、『王女』として帝室の一族待遇に戻る……ではないようです。

 正確には『帝室一族』に籍をもどす、ですからね……直系ではない帝室一族の女、『女王』……


 さらに、女王殿下として、再婚、降嫁しても、出戻りになったとしても、再び『女王』……ですか……

 かなり無理をしていますが、どうやら誰かが押し通したようなのです。


 さらにです、『召人』と『宣旨』という位が出来ました。

 公的な愛人の位らしいのです。

 文子様が『宣旨』、洋子様が『召人』らしいのです。


 岩倉姫宮雪乃王女付宣旨文子、岩倉姫宮雪乃王女付召人洋子、となるようです。

 『宣旨』はいわば家宰、『召人』は家政婦長という役回りですかね。


 まったく、開いた口が閉まらない……

 もう、いいわ!聖女として、どしどし貢献してあげるわ!


「慶子様……この法制度の改正、ターゲットは私ですよね……」

 様子を見に来た慶子様に愚痴をこぼした私です。

「その通りね、ここまでするとは思わなかったけどね」

「私に何を望まれるのでしょうね……」

「勿論、帝国の繁栄よ、その為、どうあろうとも雪乃さんを逃がさない、ということね」


 ……


「ハッキリしているのは、万に一つ、雪乃さんが未亡人になっても、この帝国に縛り付けるという宣言ね」

「気の毒だけど諦めなさいな」


 そして皇帝陛下からのお手紙など差し出されたのです。


 ……湛水直播栽培(たんすいちょくはんさいばい)の紹介、あれを農務省に渡し、実施を命じたところ、確かに人手はかなり削減可能なのが判明、寒冷地への提案書について、見解をただしたところ、全面的に同意といっていた……


 ……提案者をぜひに農務省へと、次官が来て要望してきたがなんとか断った……

 ……悪いが、なにがなんでも貴女を王国や共和国に流出させるわけにはいかない、聖女は神が帝国に遣わされた福音……

 ……悪辣な手段ではあるが、ご了承願いたい……


 再度、云いましょう!


 もう、いいわ!聖女として、どしどし貢献してあげるわ!


「慶子様、陛下に返書を書きますので、お渡し願えませんか?」

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