洋子様とは一蓮托生


 上泉お姉様は、急遽、実家からお使いが来て、夕刻までにはお帰りに。

 皇帝陛下の使者がご実家に来られて、ハッキリと洋子様を、私への永年奉公人として、申し受けたいとのお言葉を伝えました。


 上泉家の内情について、使者が解決策、といっても支度金名目で借金分を提供、特に上泉男爵はすすんで隠居、で話しはまとまりました。

 

 そして、洋子様が撫子寮へ戻ったのが、金曜の夜……


「雪乃様……私の為に……意に沿わぬお見合いなど……」

「いいのです、それにお見合いと云うより、顔合わせということらしくて、どのみち、どちらかの皇子の妻にならなければならないようなの……」


「できますれば、私は雪乃様のお決めになった方に身を任せたいと思います、お妾として、共に慰め合う仲が私の望みとなりました」

「上泉お姉様……」

「洋子とお呼び下さい!」

「では洋子お姉様」

「洋子です!」


「では……洋子様で勘弁して下さい、年上の方を呼び捨てには出来ません」

「ねぇ、洋子様、先ほどのお言葉なら、これからは同じ方を旦那様にするのです、たしか正妻と妾は懇ろになるのが決まりと伺いました、そんな仲となるのです」

「これからは二人、一蓮托生ではありませんか、死ぬまで仲良くしなくてはなりませんし、仲良くしましょうね」


 で、私は洋子様と口づけを交わしたのです。


「校内では、S仲間で通しましょうね♪」

「雪乃様、それは無理でしょう、月曜には雪乃様の養女の件が発表されるそうです、お使いの方がおっしゃっておられました」


「それに私たち、寮を出るそうですよ、なんでも目の前の憲兵分署の横に、小さいお家を賜るとか……」

「そうそう、内密のお手紙を皇后様より賜ったのですが、雪乃様は聖女であるから、心してお仕えせよとありました」

「聖女とはどのようなものなのですか?」


 で、聖女の力を見せたのです。

 といっても、お菓子を取り出したのですけどね。

   

 皇后様からはお手紙以外に、皇家の紋章入りの万年筆も賜ったそうです。


 さて土曜日、私は朝からそわそわ、落ち着きません。

 とうとう裁縫の時間で、針で指を刺してしまって……

 で、授業が終わると、早々に寮に帰ります。


 と、慶子様がおられました。

 側には皇后様の女官さんと思われる方が二人おられます。


「早いのね♪準備を始めましょうね♪」


 顔合わせは正礼装とのこと、アフタヌーンドレスでもローブ・ド・モンタンです。

 解析を起動しますと、


 胸元を閉じ、丈が長く、裾を引く長さ。

 袖は手首まであるのが特徴。

 これに帽子を被り、手袋と扇子を持つ。


 でも私、まだ十三になったばかり……

 でも、子供用の物が用意されています。

 ちゃんと一式、何でも慶子様の着ていた物とか……


「本当に綺麗ね、お人形さんみたい!」

 慶子様が感心していますが、お付きの女官さんも、

「本当に可愛らしい事、皇子様方もお喜びでしょうね」


 女官さんは知らないのでしょうね……

 本当は私、お断りしたいということを……

 皇帝陛下と皇后様にはめられた訳ですからね……


 少しばかり渋い顔をしたのを見た慶子様が、

「雪乃さんはまだ分からないようですね」

 なんて取り繕っておられます。

 仕方無いですね……


「私、楽しみですわ♪皇子様ってどのような方でしょうね♪」


 女官さんが、

「皇太子殿下は十八歳、男前でスポーツ万能、女の子にモテモテなのですよ♪」

 私の中で、皇太子殿下は対象外となりました。


「親王殿下は?」

「十五歳、物静な方ですね」

 えっ、それだけ?


 仕方無いので『解析』を発動……

 なになに、中学校の四年、体操は不得意、数学が大好き、女友達は皆無……ほう……皆無でも経験あり……

 十五歳で経験ですか……仕方無いですかね……皇帝の子息が童貞ではね……

 ふむふむ、お相手は……おや、娼館にお兄様が連れて行った?

 容姿はというと、可も無く不可も無く……温厚な性格ね……

  

 この親王殿下、興味が湧きました。

  

 だってね、皇太子殿下を解析すると、女が好きで娼館に入り浸り……

 ただ頭脳明晰、勇敢……この方、英雄なのでしょうね……

 弟思いではありますね……


 でも!皇帝としては申し分無しですが、夫にするのは……駄目駄目!論外です。

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